HOME雑 誌medicina誌面サンプル 46巻6号(2009年6月号) > 連載●手を見て気づく内科疾患
●手を見て気づく内科疾患

第6回テーマ

ゴットロン徴候,皮膚筋炎診断の鍵

松村正巳(金沢大学医学部付属病院 リウマチ・膠原病内科)


図1 遠位指節間関節,近位指節間関節,中手指節関節の背側に角化傾向の強い紅斑,ゴットロン徴候を認める
図2 爪上皮出血点,爪上皮の延長を認める
患者:73歳,男性
病歴:3カ月前から顔,手にかゆみを伴った皮疹が出現した.1カ月前からは,階段の上り下りが困難になってきた.近医を受診したところ,血清CK(クレアチンキナーゼ)が2,000 IU/lと高いことを指摘され,紹介受診となった.
身体所見:手の遠位指節間関節,近位指節間関節,中手指節関節の背側に角化傾向の強い紅斑,ゴットロン徴候(Gottron’s sign)を認める(図1).かゆみを伴う.爪上皮出血点(Nail fold bleeding:NFB),爪上皮の延長も認める(図2).三角筋,腸腰筋,大腿四頭筋の筋力が両側性に低下(4/5)している.

診断:胃癌を伴った皮膚筋炎

 皮膚筋炎の皮膚所見は多彩です.ゴットロン徴候,眼瞼の紫紅色の浮腫性紅斑であるヘリオトロープ疹(Heliotrope rash)は有名です.皮膚筋炎では爪囲紅斑,爪郭の毛細血管拡張,爪上皮出血点も頻繁に観察されます.皮膚筋炎は悪性腫瘍の合併率が15%と高いので注意が必要です.卵巣癌,乳癌,悪性黒色腫,大腸癌,非Hodgkinリンパ腫が多いとされています1)

 皮膚,爪は全身状態,内臓疾患をときに反映します.手は最も観察しやすい場所です.

(画像は本誌をご覧ください)

文献
1)Dalakas MC:Polymyositis, dermatomyositis, and inclusion body myositis. Fauci AS, et al(eds):Harrison’s Principles of Internal Medicine 17th ed, pp 2696-2703, McGraw Hill, New York, 2008.