●手を見て気づく内科疾患 | ||
第2回テーマ ミー線,重篤な病態からの経過日数 松村正巳(金沢大学医学部付属病院 リウマチ・膠原病内科)
病歴:22歳のときにネフローゼ症候群を発症し,プレドニゾロン40 mg/日の内服で寛解した.その後,2回ネフローゼ症候群の再発を認めている.今回もプレドニゾロンを7.5 mg/日に減量したところ,下肢浮腫が出現し,尿蛋白18 g/日,血清総蛋白4.4 g/dl,血清アルブミン2.3 g/dlであった.プレドニゾロン40 mg/日に増量し寛解した. 身体所見:約130日後の爪の所見を示す.両第1指の爪に半月と平行して走る1本の白色の線を認める.溝は触れない(図1).これはMee’s lines(ミー線)という. ミー線は砒素中毒において,爪に横方向に走る1本の白色線として1919年に報告されました1).その後,Hodgkinリンパ腫,うっ血性心不全,らい病,マラリア,一酸化炭素中毒,乾癬,その他の全身性疾患で報告されています1, 2).爪の成長は10日で約1 mmですので,爪の生え際から,ミー線までの距離は,重篤な疾患の発症から何日経過したかを知る手がかりになります. 一方,Muehrcke’s lines(ミュルケ線)は,爪の横方向に走る2本の白色線として認めます3).最初に記載されたのは1956年です1).ミュルケ線は低アルブミン血症(血清アルブミン2.0 g/dl以下)に特異的2)とされていますが,特異的ではないという意見もあります3).また,爪床の血流の異常が原因と解釈されており,爪の成長によって移動しません2). この患者では低アルブミン血症を認めましたが,それがミー線として残ったようです.その後,爪の成長につれて先端へ移動し消失しました. 身体診察は頭の先からつま先まで系統立てて行うように教育されていますが,手から診察することをお勧めします.情報が多いことに加え,特に初診の患者において,心理的な距離感,間合いをはかりながら診察してゆくことを可能とします.欧米の方々は挨拶のときに握手をしますね. (つづきは本誌をご覧ください) 文献
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