HOME雑 誌medicina誌面サンプル 45巻7号(2008年7月号) > 連載●患者が当院(ウチ)を選ぶ理由 内科診察室の患者-医師関係
●患者が当院(ウチ)を選ぶ理由 内科診察室の患者-医師関係

第7回テーマ

患者との距離の取り方

灰本 元(灰本クリニック)


 患者との心理的距離の測り方や取り方は患者-医師関係をつくるためのコツの一つである.近ければ巻き込まれ,遠ければ互いに気持ちが届かない.今回は多忙な外来でも簡単にできる距離の測り方や取り方について考えてみたい.

 私は患者が退室する直前に次回の予約を決めるが,その“次の来院のさせ方”で患者との心理的距離を測ったり調整できる.この重要性が意外に知られてないし,私も教育された記憶がない.当直の研修医は「悪化したり,不安があったら明日また来てくださいね」と言葉をかけるように教育されているが,研修医を卒業するともっと高次元の“次の来院のさせ方”が求められる.

■退出時の雰囲気

 退室時の雰囲気はその日の患者-医師関係の総決算と考えてよいが,その状況に応じて,私は“次の来院のさせ方”にいくつも選択肢を用意している.症例を挙げてみよう.

 58歳,男性のKさん.高血圧と糖尿病で通院歴3年,ほぼ月1回来院.血圧もHbA1Cもよくコントロールされていた.仕事をタフにこなし,いつも私とは軽妙な会話がはずむ.2カ月前からめまいが毎朝起こるようになった.CTやMRIは異常なし.耳鼻科でメリスロン®を処方されたが無効.専務へ昇進した直後から発症していたので,心身症が疑われ,抗不安薬や抗うつ薬が必要かもしれないと前回来院時に伝えてあった.家庭血圧値やHbA1Cの話題が終わった後の会話.

灰本 ところで,最近,めまい,いかがですか?

患者 うーん,この前より悪くなってますね.毎朝,くらくらして仕事に行く気がそがれるんですよ.

灰本 まあ,がんばりすぎですよ.ここらで,しばらく仕事休んでみますか?

患者 やめてくださいよ,とてもそんな状況じゃないですよ,先生もよくわかってるくせに.

灰本 はっはっはっ.朝っぱらからふわふわすればねー,そりゃーやる気出ないよね.(少し間をおいて)ところで,寝られてますか?

患者 いやー,それがちょっと.最近,朝4時頃には目が覚めてしまって…….

(つづきは本誌をご覧ください)