HOME雑 誌medicina誌面サンプル 45巻7号(2008年7月号) > 連載●研修医のためのリスクマネジメント鉄則集
●研修医のためのリスクマネジメント鉄則集

第7回テーマ

リスクマネジメントのABCD
その5 C=Communicate(何でも言いあい話し合う)

田中まゆみ(聖路加国際病院・一般内科)


 今回のテーマは,「リスクマネジメントのABCD」の「C:Communicate(よく話し合う)」である.「患者の声に耳を傾ける」ことが医療事故や訴訟を防ぐことになる.また,職員間で何でも聞き合えるオープンな組織をつくることも大切である.

リスクマネジメントのABCD
A=Anticipate………(予見する)
B=Behave…………(態度を慎む)
C=Communicate …(何でも言いあい話し合う)
D=Document………(記録する)


■事故防止・訴訟防止のためのふだんの心がけ(1)――医師個人として

【1】共感しながら患者の話を聴こう

 診療室での会話の8割は医者が話しているという.この割合を逆転させれば,患者の不満だけではなく誤診や事故もずいぶん減るのではないだろうか.

 診断は患者がもってくる.どれだけ話を引き出すことができるかで検査前確率も決まる.共感しながら,相槌をうちながら,熱心に聴く(傾聴).よく話を聴いてもらったと思えば,患者も医者に協力し治療の効果も上がるし,副作用なども知らせてくれるので事故も起こりにくくなる.

 患者が症状をどのようにとらえ,何を心配して受診しているのか(「解釈モデル」),他の医療機関で受けた検査や受けた説明(「受診歴」),そのどこに納得していないのか.どんな検査や治療を希望して受診したのか(「受診動機」).ドクターショッピングをする患者を批判する前に,なぜそうせざるをえなかったか患者の言い分も聴くべきである.前医が標準的検査や治療をしていなければ転医もやむをえないし,正しい検査や治療でも説明不足のためだけで納得していないのであれば,もう一度説明して誤解を解き元の医療機関に戻すのが患者にとって最善かもしれない.

(つづきは本誌をご覧ください)

注1) Kahn, MW:Etiquette‐Based Medicine N Engl J Med 358:1988‐1989, 2008