HOME雑 誌medicina誌面サンプル 44巻3号(2007年3月号) > 連載●できる医師のプレゼンテーション-臨床能力を倍増するために
●できる医師のプレゼンテーション-臨床能力を倍増するために

最終回テーマ

レクチャー/学会などでのプレゼンテーション
―スライドのコツ

川島篤志(市立堺病院・総合内科)


少人数の研修医を対象とした小さな部屋でのレクチャーで……
研修医A:あー,結構疲れたけど……お願いしていたレクチャーなので,頑張って出よう!
(昼食後でもあり,少しずつ睡魔に襲われて……コクリコクリと。そのときに研修医Aの隣に座っている研修医Bに質問が当てられて……)
研修医B:それは○○だと思います。
指導医:Aも知ってたよね。
研修医A:は,はい!(よし,頑張って起きてよう。内容もオレたち向きだし……)
(しかし,またカンファレンスが進行し,最後の方でウトウトしていたところ・・・・・)
指導医:……これを知ってれば,「デキル」研修医と思われるよ。
研修医A:(「デキル」という言葉に反応して……)えっ。何々?
指導医:寝てた子には,教えてあげなーい。
研修医A:えっ,起きてましたよ。先輩,教えてくださいよ!(と和やかな雰囲気で次回のレクチャーに続く)

ちょっとした講演会で……
聴衆A:あー,スライドも字が小さくて見にくいし,眠くなってきちゃったなぁ……。でも,このことは後で質問しよっと。
それにしても,なかなか終わらないなぁ。
演者:(予定を10分超過して)……以上で終わります。
座長:ご質問ありませんか?
(聴衆Aがマイクに向かっているときに,既に別の質問者が……)
聴衆B:すみません。3つ,質問があります。
(延々と質疑応答を繰り返して時間が経過し,終了)
聴衆A:(マイクのところで並んでいたので)あの,次の質問を……。
座長:あーっと,すみません。時間が押していますので,ここで終わりにさせていただきます。座長の不手際で申し訳ありません。
聴衆A:(えっ,質問はひとりだけ……)

 前回までは,主として臨床場面での症例に関する話でした。しかし,ほとんどの医師が臨床の現場以外の人前で,何らかの話をする機会に遭遇します。この話を上手にできるかどうかが,意外と日々の診療のしやすさにかかわってくるものです。そこで,最終回の今回は,医師として人前でプレゼンテーションするときの話です。

 相手は研修医やベテランの医師・看護師・コメディカル・患者さんといった単一のグループやその混在のグループが対象であったり,院内で知った顔が多い場合や院外で面識がない場合であったり,規模として小さなカンファレンス室で少人数で行うものから,大きな講堂で大勢に話す場合であったり,さまざまです。しかし多くの場合,トレーニングする機会も残念ながらなく,不出来であっても指導されることもなく,医師としての立場ばかりが大きくなってしまうことが多いのではないかと思います。

■準備のコツ

まず何らかのレクチャーをすることを想定して話を進めていきます。

 今までのプレゼンテーションと同様に,準備が大切です。おもしろくないレクチャーだったら,誰も聞きたくはないはずですから,どんな聴衆なのか,を意識することが大切になってくることがわかります。最近は医学教育の言葉も耳にすることが多くなってきたかもしれません。「学習者中心」という言葉がありますが,求められているのは聴衆がどう判断したか,という結果です。自分がおもしろい/役に立つと思う内容を話していても,聴衆が同じように感じるとは限らないということを認識することが重要です。事前に聴衆がどんなことを望んでいるのかを確認できれば準備しやすいですし,逆にかなり幅のあるグループの聴衆が参加する会では,会の趣旨に合わせることを目標とし,全員のニードに合わせることは難しいと開き直るのもひとつです。製薬会社関連の勉強会であっても,製薬会社が喜ぶ話をするのではなくて,聴衆に利益がある話をすることが演者には求められます。

 内容に関して,考慮する内容としては,下記のバランスを考えるといいかもしれません。
・最先端の医療? 現場中心の医療?
・基礎研究主体? 臨床現場主体?
・自分の興味のある/得意な分野のレベル? 聴衆の求めているレベル?

 例えば,診療所の一般医の先生方が集まるような講演で,最先端の基礎研究を主体とした専門的なレベルの話をしても,翌日からの診療に役立てることができるかというと,難しいことは明白です。

 ときどき,臨床現場で「何回話をしてもわかってくれない……」と嘆くことがありますが,その前に,自分の教えている内容が難しすぎないのか,自分が求めているものが高すぎないのか,を再確認することも必要です。

 次に,学会発表の話です。。。

(つづきは本誌をご覧ください)


川島篤志
1997年筑波大学卒。京都大学医学部附属病院,市立舞鶴市民病院にて研修。2001年より米国Johns Hopkins大学 公衆衛生大学院に入学し,MPH取得。2002年秋より現職。院内での総合内科の充実を目指すとともに,全国規模で,研修病院としての「経験の共有」,総合内科/総合診療/家庭医療/プライマリ・ケアの「横のつながり」を意識しながら,この分野を発展させていきたいと強く感じている。
本連載へのお問い合わせはkawashima-a@city.sakai.osaka.jpまで。