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●研修おたく海を渡る

第27回テーマ

就職活動

白井敬祐


 フェローシップも最後の年になり,まわりでは就職活動が盛んになっています.腫瘍内科に関しては,フェローシップに入るときの厳しい極端な買い手市場とはうってかわって,完全な売り手市場です.USA Todayという全国紙にも,リタイアする60代の腫瘍内科医が多く,がん専門医は今後足りなくなるだろうという予想が載っていました.

 ではどうやって就職先を見つけるのでしょうか? 今研修している地域で探す場合は,地域のカンファレンスなどで開業医グループと顔見知りになりながら,新しい人を雇う予定があるか探りを入れます.探りを入れるといっても,単刀直入に「来年卒業するんだけど,新しい人をとる予定ある?」と聞くだけですが.あとは,製薬会社のプロパーさんはその手の情報をよく知っており,複数の州をまたいで担当しているような人からは他州の情報も手に入れることができます.

 遠く離れた州の情報は,指導医のネットワークを使ったり,ASCOと呼ばれる全米臨床腫瘍学会やさまざまなカンファレンスで,job searchをします.それ専用のコンピュータがずらっと学会会場に置いてあり,地域と条件を入力することで検索ができます.その情報を基にメールを送ったり,電話を入れたりして,お互いの条件を探るのです.

 New England Journal of MedicineやJAMAといった雑誌の最後に載っている求人広告欄(日本で発行されているものにはもちろんついていません)を使って,電話やメールをするという方法もあります.それ以外に,フェローシップが始まると時を待たずに1年目のうちからプロのリクルーターからの勧誘の手紙が送られてきます.どこでプラクティスしたいか,どんな条件がいいか登録すると,2年目の終わり頃からメールがぼちぼち送られてきます.

 気になるところがあれば,まずCV(curriculum vitae)と呼ばれる履歴書を送ります.向こうも興味があれば,面接に進みます.ちょっと電話で話しただけで,現地での面接になる場合もあれば,電話での数時間にわたる面接をしたあとに,現地へ向かう場合もあります.前述したように売り手市場です.旅費や滞在費はフェローシップ応募のときとは違い,向こう持ちです.クリニックやカバーする病院の見学も含めて,1~2日がかりのことが多いです.お互い一緒に働きたい,あるいは働いてもよいか見極めるのです.

 そこでは,主に診る患者の背景や,当直の回数,カバーのしかたなどを聞きます.アメリカとはいえ,向こうから切り出されない限りお金のことは1回目の面接は触れないほうがよいようです.そこでも,お互いのフィーリングが合えば,2回目の面接に進みます.2回目は家族のある場合は,家族含めて現地に向かいます.もちろん,費用は相手持ちです.住環境,教育環境を含めて紹介を受けます.住宅の案内は地元の不動産屋さんがしてくれることもあります.2回目になると,ホテルにwelcomeのギフトやメッセージが届いたり,かなりラブコールも激しくなってくることもあるそうです.その場で具体的なオファーがある場合もありますが,たいていは一度戻って,お互いゆっくり考える時間をもちます.

 向こうが気に入れば,オファーがリクルーターを介して,あるいは直接ボスから連絡が入ります.その後契約書が送られてくるのですが,契約書には,いろいろと細かな注釈がついています.

 ついつい長くなってしまいました.続きは次回,契約についてもう少し説明をしたいと思います.


白井敬祐
1997年京大卒.横須賀米海軍病院に始まり,麻生飯塚病院,札幌がんセンターと転々と研修をする.2002年ついに渡米に成功,ピッツバーグ大学でレジデンシー修了,2005年7月よりサウスカロライナ州チャールストンで血液/腫瘍内科のフェローシップを始める(Medical University of South Carolina Hematology/Oncology Fellow).米国内科認定医.