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特集の理解を深めるための27題


問題1

腹痛患者を診察するにあたって誤っているものを1つ選べ.

A
「内臓痛」と「体性痛」のうち,筋性防御や反跳痛といった腹膜刺激症状を呈するのは「体性痛」である.
B
関連痛は障害のある臓器と同じレベルの脊髄に入力している皮膚デルマトーム領域に痛みを感じることが多い.
C
心窩部や腹部中心部の強い痛みは,単純な腸疝痛によるもの,急性虫垂炎や小腸閉塞の初期症状によるもの,急性膵炎や腸間膜動脈血栓症の発症によるものの可能性がある.また,腹腔外の病態による痛みで引き起こることは稀である.
D
ショックを伴う腹部中心部の激しい痛みは消化管疾患のみでなく,血管系の疾患や,女性では子宮外妊娠も考えるべきである.
E
下腹部痛と腹壁の硬直は年齢や性別を考慮し鑑別を挙げるべきである.

問題2

介護施設に入所中の80歳女性.今朝から食欲がなく腹痛を主訴に内科外来を受診した.認知症があり本人からの病歴聴取が十分にできない.緊急度・重症度を評価するために必要な情報として誤っているものを2つ選べ.

A
頻呼吸がある.
B
来院時は痛みの訴えがない.
C
詳細不明であったが腹部に手術痕がある.
D
施設職員からの「いつもとは様子がぜんぜん違う」という情報.
E
何を質問しても本人が「大丈夫」と答える.

問題3

以下の選択肢のうち,腹痛におけるレッド・フラッグサインを考慮して適切な判断ではないものを一つ選べ.

A
腹痛患者が夜間に下痢で覚醒するので,器質的疾患を疑った.
B
腹水患者の腹痛に腹膜刺激徴候がなかったので,機能性疾患を疑った.
C
腹痛患者の呼気に便臭があったので,器質的疾患を疑った.
D
腹痛患者の採血で血糖値が350 mg/dLであったので,器質的疾患を疑った.
E
確定診断がついていない腹痛患者に鎮痛薬を投与して完全に改善しなかったので,器質的疾患を疑った.

問題4

73歳男性.1カ月前からの上腹部痛と両下腿浮腫を主訴に来院した.患者の腹部を真横から見た写真と下腿の写真を示す(図1).浮腫は圧痕性でslow pitting edemaであった.これらの写真から予想される診断は何か.

写真は本誌をご覧ください

図1 患者の腹部・下腿の写真

A
肝硬変
B
尿閉
C
急性胃拡張
D
脾腫
E
肝囊胞

問題5

次の記述の中で正しい記述はどれか.

A
腹痛の鑑別疾患は部位別に考えればほぼ網羅できる.
B
軽度のバイタルサインの変化は問題にせずに十分な病歴聴取を行うことが重要である.
C
一般的な血液検査・尿検査は,病歴聴取や身体診察から得られた鑑別診断のための情報に対して,証拠固めとして用いられる.
D
検査結果は陽性の場合のみ診断に有用な情報となる.
E
一般的な血液検査はカットオフ値を超えた場合に確定診断に結びつく.

問題6

超音波検査を専門にしない臨床医が,一定のトレーニングを受けたうえで経腹超音波検査を行う場合,除外診断に有効とされている疾患を2つ選べ.

A
急性胆嚢炎
B
急性虫垂炎
C
腹部大動脈瘤
D
腹腔内出血
E
卵巣腫瘍茎捻転

問題7

単純CT検査で本来の吸収値に比して高くなることが,基本的にはないのはどれか.

A
腹部大動脈瘤における陳旧性壁在血栓
B
慢性腎不全患者の下部消化管内容物
C
新鮮な腹腔内出血
D
偽腔血栓閉鎖型の急性大動脈解離における血栓化偽腔
E
上腸間膜動脈(SMA)塞栓症における塞栓

問題8

上腸間膜動脈塞栓症のリスクはどれか.すべて選べ.

A
心房細動
B
貧血
C
人工弁置換
D
塞栓症(肺塞栓,脳塞栓など)の既往
E
血液透析患者

問題9

以下の疾患のなかで重篤な免疫不全状態と定義されるのはどれか.2つ選べ.

A
HIV/AIDS(CD4<200/mm3
B
ステロイド20 mgで治療中のリウマチ性多発筋痛症
C
臓器移植後60日以内の急性骨髄性白血病
D
R-CHOP療法終了後のびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫
E
5-ASA製剤を使用中のCrohn病

問題10

24歳女性,3時間前に比較的急速に出現した下腹部痛が改善しないため救急車でERを受診.妊娠の可能性は否定している.もともと月経不順であり最終月経は7週間前.意識清明,血圧90/70 mmHg,脈拍100回/分,SpO2:97%,呼吸数20回/分.末梢冷感あり顔色は不良.この患者のマネジメントにおいて適切なものを2つ選べ.

A
妊娠関連の腹痛であればCTなど放射線検査は実施できない.
B
多くの医療従事者に囲まれたなかでも,妊娠や性交渉について必要な問診をとる.
C
必要性を説明のうえ,尿中hCG定性検査を実施する.
D
妊婦であれば胎児治療を優先するために点滴や投薬は制限される.
E
出血性ショックとしての治療が必要である.

問題11

疾患と診断のための検査方法の組み合わせで誤っているのはどれか?

A
尿路結石─低線量腹部単純CT
B
腎外傷─腹部造影CT
C
急性尿閉─腹部超音波検査
D
間質性膀胱炎─骨盤部MRI検査
E
急性陰囊症─陰囊ドプラ超音波検査

問題12

22歳の女性.嘔吐と腹痛とを主訴に来院した.数日前から風邪を引いていて食欲が低下している.口渇が強く水分を多量に摂取している.半年前に受けた健康診断では異常は認めなかった.意識は清明.血圧114/78 mmHg,脈拍120/分,呼吸数28/分,体温37.2℃.身体所見上,口腔粘膜は乾燥.呼吸音は清.心音に異常なし.臍から下腹部に圧痛あり.尿検査にて蛋白(-),糖(3+),ケトン体(3+).
まず考えられる疾患はどれか.

A
胃腸炎
B
1型糖尿病
C
2型糖尿病
D
副腎クリーゼ
E
アルコール性ケトアシドーシス

問題13

気管支喘息の既往がある45歳男性.2週間前から心窩部痛と水様便を認めるようになった.腹痛は改善せず,繰り返しながら耐え難い痛みとなったため救急外来を受診した.造影CTを行ったところ結腸の軽度の浮腫と少量の腹水のみで,経過観察目的の入院となった.その際,気管支喘息発作も生じていたため,ステロイド(プレドニゾロン30 mg)を内服したところ,喘息発作だけでなく腹痛も軽快した.
この患者の診断にあたり,必須となる所見は以下のうちどれか.2つ選べ.

A
腹痛,下痢の症状
B
気管支喘息の既往歴
C
CTでの腹水貯留
D
ステロイドへの反応性
E
消化管内視鏡での生検

問題14

急性冠症候群の疼痛を発症する場所で,誤りはどれか.一つ選べ.

A
咽頭
B
下顎
C
右腕
D
背部
E
臍周囲

問題15

以下のうち画像診断が最も不向きな疾患はどれか.一つ選べ.

A
穿孔性急性虫垂炎
B
急性膵炎
C
骨盤腹膜炎(pelvic inflammatory disease:PID)
D
下部消化管穿孔
E
卵巣嚢腫茎捻転

問題16

救急外来における腹痛診療において正しいものはどれか.

A
痛み止めは,腹痛診療の妨げになるため使用するべきではない.
B
アセトアミノフェンの点滴は繰り返し使用することが推奨されている.
C
経静脈的な鎮痛薬投与後は,症状やバイタルサインの推移をこまめに確認すべきである.
D
バイタルサインや患者の訴えよりも画像所見に重きをおくべきである.
E
アセトアミノフェンの点滴投与量は,5 mg/kgである.

問題17

急性胆嚢炎の所見として正しくないものはどれか.

A
心窩部痛
B
発熱
C
嘔吐
D
血清ビリルビン上昇
E
血清アミラーゼ上昇

問題18

心窩部痛のアプローチとして誤っているものはどれか.一つ選べ.

A
まずは緊急性があるか否か判断する.
B
問診と身体所見をしっかりとる.
C
患者をみたらすぐに採血とCT検査をオーダーする.
D
超音波検査も診断に結びつく有用なツールである.
E
痛みの部位,性状,随伴症状によって鑑別疾患が絞られる.

問題19

左上腹部痛に関する記述で正しいものを2つ選べ.

A
造影CTによる評価が第一選択である.
B
脾臓の疾患が原因である場合が圧倒的に多い.
C
まず心血管系疾患,呼吸器系疾患など緊急の対応を要するものであるかを判断する.
D
疼痛部位から胃の疾患は否定できる.
E
必ずバイタルサインを測定する.

問題20

70歳男性が左側腹部痛で受診され,腹部エコー検査で左水腎症を認めた.尿管結石疑いの患者の診療において注意すべき点として正しいものを一つ選べ.

A
高齢の場合,大血管疾患を鑑別するため腹部エコー検査で評価を行う.
B
基礎疾患として心房細動がある場合,塞栓症を鑑別に含め診察を行う.
C
男児の場合は精巣捻転も鑑別に含めて診察を行う.
D
複雑性尿路感染症の合併を鑑別するため,高熱,悪寒戦慄の病歴がないか聴取する.
E
すべて正しい.

問題21

腸閉塞に関する説明で適切なものはどれか.

A
腹部聴診で金属音を聴取できない場合,腸閉塞の可能性を除外してよい.
B
腸閉塞とヘルニアは関連性の薄い病態である.
C
大腸癌は腸閉塞の原因として最も多い.
D
腹部X線写真で腸管拡張像と鏡面像がない場合に腸閉塞を除外することはできない.
E
血液検査での乳酸値の上昇がなければ絞扼性イレウスの可能性を除外してよい.

問題22

急性虫垂炎で典型的でない所見はどれか.1つ選べ.

A
Blumberg sign
B
Rosenstein sign
C
Murphy sign
D
psoas sign
E
obturator sign

問題23

63歳女性.左側腹部痛と血便を主訴に来院した.3日前より便秘が続いていた.今朝突然左側腹部痛が出現し,その後血便を認めた.高血圧を指摘されているが治療はしていない.
意識は清明,体温36.9℃,脈拍96/分,整.血圧158/96 mmHg.眼瞼結膜貧血なし.左側腹部に圧痛は認めるが筋性防御はない.内視鏡写真を示す(図2).この疾患で誤っているのはどれか.

写真は本誌をご覧ください

図2 症例の内視鏡写真

A
女性に多い.
B
糖尿病が危険因子である.
C
浣腸の後に起こることがある.
D
副腎皮質ステロイドの注腸が効く.
E
再発することは稀である.

問題24

以下の中から正しいものを選べ.

A
性器出血があれば妊娠している可能性は低い.
B
採血でクラミジア頸管炎を診断できる.
C
PID(骨盤内炎症性疾患)は不妊症の原因となる.
D
下腹部痛では打診痛より反跳痛のほうが有用である.
E
PIDでは半数以上で発熱を伴うことが多い.

問題25

糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)に関して正しいものはどれか.2つ選べ.

A
DKA患者において腹痛は半数程度で認める.
B
DKA患者において腹痛があり膵酵素上昇を認めた場合は膵炎と診断する.
C
DKA患者における腹痛は血清浸透圧と相関する.
D
DKA患者における腹痛はアシドーシスと相関する.
E
DKA患者における腹痛は血糖上昇と相関する.

問題26

機能性ディスペプシアとして誤っているものはどれか.

A
機能性ディスペプシアの原因は,胃の神経線維やCajal介在細胞の減少,炎症細胞浸潤である.
B
細菌やウイルスによる感染性腸炎後に発症することもある.
C
機能性ディスペプシアの診断において,上部消化管内視鏡検査とH. pylori 陽性ならば除菌療法を行うことが必要である.
D
機能性ディスペプシアの治療薬には,プロトンポンプ阻害薬が用いられることが多い.
E
アコチアミドを処方するときは,上部消化管内視鏡検査を行う必要はない.

問題27

53歳女性.半年前から,排便回数が週に2~3回に減少し,腹痛を伴った便意が出るようになってきた.その際の便は,硬便のことが多い.一般採血検査では,Hb 11.5 g/dLと正常下限であった以外は特記すべき異常はない.次に行うべき検査を2つ選べ.

A
上部消化管内視鏡検査
B
カプセル内視鏡検査
C
下部消化管内視鏡検査
D
腹部MRI検査
E
甲状腺機能検査

(解答は本誌掲載)