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特集の理解を深めるための29題


問題1

67歳男性.半年前からの労作時に限定する胸部症状を主訴に受診した.症状は安静で5分以内に改善し,最近の症状閾値低下もない.負荷心電図で最大負荷時症状の再現を伴う1.5 mmのST低下を認めた.STレベルの回復は速やかであり,左室駆出率は65%であった.冠動脈造影の結果,右冠動脈近位部に90%狭窄を認めた.安静時血圧146/78 mmHg,心拍数85/分.冠危険因子は高血圧と脂質異常症のみで,ほかに特記すべき既往はない.現在,内服している薬はない.
初期治療方針として誤っているのはどれか.1つ選べ.

A
アスピリン処方
B
経皮的冠動脈インターベンション(PCI)
C
HMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン)処方
D
短期作動型硝酸薬処方
E
β遮断薬処方

問題2

45歳男性.会社の健康診断で異常を指摘されて受診した.現在,特に症状はない.デスクワークが主な生活をしている.既往歴・家族歴に特記すべきことはない.喫煙歴はない.過度の飲酒歴はない.内服歴はない.血圧120/70 mmHg,BMI 28,腹囲90 cm.血液検査:TC 220 mg/dL,LDL-C 150 mg/dL,HDL-C 40 mg/dL,TG 150 mg/dL,HbA1c 5.0%.吹田スコアでは,10年間の冠動脈疾患発症リスク1.6%であった.
この患者に対して最も適切なマネジメントはどれか.

A
エゼチミブ(ゼチーア®)処方
B
高強度スタチン処方
C
中強度スタチン処方
D
ナイアシン処方
E
生活習慣指導

問題3

日本動脈硬化学会『動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版』で,急性冠症候群の場合に推奨しているLDL-C値はどれか.1つ選べ.

A
30 mg/dL未満
B
50 mg/dL未満
C
70 mg/dL未満
D
100 mg/dL未満
E
120 mg/dL未満

問題4

スタチン関連筋症について正しいのはどれか.1つ選べ.

A
スタチンによる発症リスクの差はない.
B
スタチン関連筋症の頻度は0.1%程度である.
C
多くの場合,治療にステロイドを用いる必要がある.
D
週1回内服療法がスタチンを再開する方法の1つである.
E
スタチン関連筋症を発症した場合,そのスタチンの再開は原則禁忌である.

問題5

次の非スタチン脂質異常治療薬のうち,単独または併用療法により心血管イベントを低下させることが大規模臨床試験によって確かめられたのはどれか.2つ選べ.

A
エゼチミブ
B
コレスチラミン
C
プロブコール
D
魚油
E
ω-3脂肪酸エチル

問題6

PCSK9阻害薬を使用することが適切でない患者はどれか.1つ選べ.

A
脂質異常症の患者で,ロスバスタチン5 mgを内服中にもかかわらずLDL-C値が150 mg/dLの患者に対する一次予防.
B
家族性高コレステロール血症の患者で,ロスバスタチン20 mgを内服中にもかかわらずLDL-C値が150 mg/dLの患者に対する一次予防.
C
冠動脈疾患の既往がある脂質異常症の患者で,筋肉痛のためロスバスタチンを2.5 mgまでしか内服できず,LDL-C値が120 mg/dL以上の患者に対する二次予防.
D
糖尿病と脂質異常症がある患者で,ピタバスタチン4 mg,エゼチミブ10 mgを内服中でHbA1cは6.8%だがLDL-C値は130 mg/dLの患者に対する一次予防.
E
冠動脈疾患と下肢閉塞性動脈硬化症の既往がある患者で,ピタバスタチン4 mgを内服中にもかかわらずLDL-C値が90 mg/dL以上の患者に対する二次予防.

問題7

血中の中性脂肪を低下させる効果が最も高いのはどれか.

A
スタチン
B
フィブラート系薬剤
C
ニコチン酸誘導体
D
多価不飽和脂肪酸(ω-3脂肪酸)
E
PCSK9阻害薬

問題8

85歳男性.安定狭心症に対し,左冠動脈前下行枝近位部に薬剤溶出性ステント(径3 mm,長さ23 mm)が留置された.血液検査:Hb 11.0 g/dL,白血球7,000/μL,Cr 1.5 mg/dL.出血の既往はない.ステント血栓症の既往や末梢動脈疾患の合併もない.
『欧州心臓病学会(ESC)ガイドライン(2017年改訂版)』の推奨に従うと,本症例において,最も推奨される抗血小板2剤併用療法(DAPT)の期間はどれか.

A
1カ月
B
3カ月
C
6カ月
D
12カ月
E
30カ月

問題9

抗凝固療法の適応となる患者においてPCIを施行する場合,「抗血小板薬2剤+抗凝固薬」の3剤併用療法が必要となるが,それについて正しいのはどれか.1つ選べ.

A
ステント血栓症を予防する目的で3剤併用療法はできるだけ長い期間継続するべきである.
B
3剤併用療法の継続期間に関しては,虚血リスクと出血リスクとを考慮したうえで個々の患者において個別に検討を行うべきである.
C
3剤併用療法を行う場合には,抗血小板薬としてはアスピリンに加えP2Y12阻害薬としてプラスグレルまたはチカグレロルを選択する.
D
3剤併用療法を行う場合には,抗凝固薬としてはNOACよりもワルファリンを選択するほうが出血性合併症の観点からは望ましい.

問題10

収縮不全型心不全(HFrEF)の治療で予後改善効果があり,投与すること自体が心不全治療における医療の質評価の観点からプロセス指標となりうる薬剤はどれか.2つ選べ.

A
ジギタリス
B
β遮断薬
C
ACE阻害薬
D
フロセミド
E
カルシウム拮抗薬

問題11

心収縮力が保たれた心不全(HFpEF)について正しいのはどれか.1つ選べ.

A
HFpEFは高齢男性に多い.
B
HFpEFはHFrEFに比べて非心血管死の割合が高い.
C
心不全患者におけるHFpEFの割合は約20%である.
D
HFpEFの定義とは拡張障害である.
E
HFpEFでは,β遮断薬,ACE阻害薬/ARBの予後改善効果が確立している.

問題12

有症状の閉塞性肥大型心筋症(HOCM)患者に対する治療法として誤っている治療法はどれか.1つ選べ.

A
ビソプロロール
B
ベラパミル
C
ジソピラミド
D
フロセミド
E
心筋切除術

問題13

利尿薬について正しいのはどれか.2つ選べ.

A
フロセミドは1回投与量を増量すればするだけ効果が期待できる.
B
利尿薬抵抗性となる機序は1つではない.
C
持続投与はボーラス投与に比べて死亡率を低下させる.
D
限外濾過による除水は心不全の死亡率を低下させる.
E
利尿薬抵抗性心不全に対する治療について単一の治療が優れているとするエビデンスは乏しい.

問題14

心不全に対するトルバプタンの利尿効果とその副作用について正しいのはどれか.1つ選べ.

A
腎血流を低下させる.
B
血圧低下を起こしやすい.
C
低Na血症が惹起されやすい.
D
レニン-アンジオテンシン系を亢進させる.
E
レスポンダーとノンレスポンダーが存在する.

問題15

心機能低下および腎機能低下のある陳旧性心筋梗塞症例に生じた持続性心室頻拍の再発予防において使用できる薬剤はどれか.1つ選べ.

A
ピルシカイニド
B
ソタロール
C
フレカイニド
D
アミオダロン
E
シベンゾリン

問題16

心房細動のリズムコントロールに関する組み合わせで適切でないのはどれか.1つ選べ.

A
甲状腺機能亢進症が正常化後も持続する心房細動→電気的除細動
B
レートコントロールで症状が改善しない発作性心房細動→抗不整脈薬
C
抗不整脈薬が無効または使えない発作性心房細動→カテーテルアブレーション
D
左房拡大を伴う長期持続性心房細動→レートコントロールのみ
E
脳梗塞リスクがあるが抗凝固療法ができない場合→カテーテルアブレーション

問題17

心房細動,NOACについて正しいのはどれか.2つ選べ.

A
日本人の高齢者において心房細動の有病率は男性のほうが高い.
B
心房細動患者において脳梗塞発症リスクとして男性であることが挙げられる.
C
Ccr 50 mL/分未満の心房細動症例にアピキサバン(エリキュース®)を投与する場合は低用量を選択する.
D
静脈系の全身性塞栓症に対してはNOACの適応はなく,基本的にヘパリンやワルファリンを選択する.
E
冠動脈疾患に対してもNOACの有用性が示されている.

問題18

心機能高度低下(EF 30%)で,非代償性心不全を呈している患者の頻脈性心房細動に対してレートコントロールを行う場合に避けるべき投薬または治療はどれか.1つ選べ.

A
β遮断薬
B
ジギタリス
C
アミオダロン
D
非ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬
E
電気的除細動

問題19

narrow QRS頻拍の発生予防に有効な薬剤はどれか.2つ選べ.

A
リドカイン
B
アデノシン三リン酸
C
ベラパミル
D
ピルシカイニド
E
イソプロテレノール

問題20

頻脈性不整脈について正しい組み合わせはどれか.2つ選べ.

A
房室解離─上室頻拍
B
aVRで陰性波─心室頻拍
C
上室頻拍-narrow QRS tachycardia
D
頻脈性不整脈のショック合併例─電気ショック
E
ソタロール─β遮断作用

問題21

68歳女性.心臓血管カテーテル検査目的のために入院.心房細動の既往をもち,脳塞栓予防のためにダビガトランを3年前から服用中である.ここ1年は脳梗塞や一過性脳虚血発作(TIA)を起こしていない.Ccr 80 mL/分.肝機能に異常はない.
周術期の抗凝固薬管理として正しいのはどれか.1つ選べ.

A
ダビガトランを休薬しない.
B
ダビガトランを4日間休薬し,手術当日までヘパリンブリッジする.
C
ダビガトランを24時間休薬し,手術当日までヘパリンブリッジする.
D
ダビガトランを4日間休薬し,ヘパリンブリッジしない.
E
ダビガトランを24時間休薬し,ヘパリンブリッジしない.

問題22

78歳男性.労作時息切れを自覚するようになり,精査の結果,重症大動脈弁狭窄症と診断され,生体弁による人工弁置換術を受けた.
術後の抗血栓療法について正しいのはどれか.1つ選べ.

A
アスピリン投与
B
アスピリンとクロピドグレル投与
C
NOAC(ダビガトラン,リバーロキサバン,アピキサバン,エドキサバン)投与
D
術後3カ月はワルファリン投与,その後はアスピリンのみ継続投与
E
ワルファリンとアスピリン投与

問題23

糖尿病と慢性腎不全の既往がある,ADLの自立した74歳男性.2018年X月に右股関節変形症に対し大腿骨頭置換術施行となり,合併症なく経過していたが,術後5日目から右下肢の浮腫を認め,術後7日目には突然発症の呼吸苦と頻脈を認めた.身体所見上は意識清明.血圧130/75 mmHg,心拍数115/分,呼吸数20/分,SpO2 96%(room air)であった.
経過から深部静脈血栓症(DVT),肺血栓塞栓症(PTE)が疑われ循環器内科コンサルトとなり,胸部~下肢造影CTを施行したところ,右肺動脈および右大腿静脈~膝窩静脈にかけての造影欠損を認めた.血液検査:Cr 1.21 mg/dL(eGFR 38 mL/分/1.73 m2)を認める以外は,トロポニン値,BNP値,血算,生化学所見,凝固所見含め異常所見はない.心電図:洞性頻脈を認め,心エコーでは収縮能良好であり,右心負荷所見を認めなかった.
治療するに当たってまずすべき対応はどれか.2つ選べ.

A
ワルファリンのローディングのみで対応する.
B
DOACの内服を開始する.
C
ヘパリン持続点滴を開始し,至適治療域にて管理する.
D
経皮的心肺補助装置(PCPS)の導入も考慮し,緊急で鼠径にシース留置する.
E
整形外科へ手術後の経過を確認する.

問題24

生来健康な40歳男性.2日前からの持続性胸痛で来院した.胸痛に労作性増悪は認めず,前傾姿勢で軽快した.血圧120/64 mmHg,脈拍84/分,呼吸数12/分,体温37.6℃.身体所見上,心膜摩擦音が聴取された.頸静脈怒張や奇脈は認められなかった.心電図:広範なST上昇が確認された.心筋逸脱酵素の上昇は認められなかった.経胸壁心エコー図検査:左室収縮駆出分画は正常で,明らかな壁運動異常や有意な弁膜症は認められなかったが,少量の心膜液が確認された.
この患者の診療方針として最も適切なのはどれか.

A
硝酸薬投与を開始する.
B
ステロイド投与を開始する.
C
アスピリンに加えコルヒチン投与を開始する.
D
緊急冠動脈造影検査を行う.
E
心嚢穿刺を試みる.

問題25

英国で行われ,新規発症の2型糖尿病患者を対象とし,血糖コントロールが細小血管合併症や心血管イベントを減らすことを示した研究はどれか.1つ選べ.

A
ACCORD
B
VADT
C
DCCT
D
UKPDS
E
SPREAD-DIMCAD

問題26

SGLT2阻害薬,GLP-1受容体作動薬,DPP-4阻害薬について正しいのはどれか.3つ選べ.

A
3剤とも単剤では低血糖をきたしにくい.
B
GLP-1受容体作動薬は体重減少作用を示す.
C
DPP-4阻害薬は主に腎臓の近位尿細管に作用し,糖の再吸収を阻害する.
D
DPP-4阻害薬は大血管障害の発症を有意に低下させる.
E
SGLT2阻害薬の大規模臨床試験では心血管疾患に対し主には二次予防効果が示された.

問題27

高血圧,慢性腎臓病で定期受診している82歳の独居女性.もともと治療抵抗性高血圧で降圧薬を3種類内服していたが,最近血圧の日内変動が大きく(外来血圧200/98 mmHg),ふらつき,転倒することが多くなっている.遠方に別居している家族は,最近,患者の短期記憶低下が進行していることを気にしている.
この患者の対策として適切なのはどれか.2つ選べ.

A
訪問看護や訪問薬剤指導による内服状況の確認と内服指導.
B
外来血圧が高いため降圧薬の増量.
C
ケアマネジャーに相談して生活状況や食事内容などの確認.
D
しばらく入院させて生活習慣の教育・指導.
E
他科・他院での処方薬の確認は関係ない.

問題28

80歳男性.現在,がんの末期でホスピス入所中である.血圧160/100 mmHgであり,降圧治療の目標を看護師に尋ねられた.その答えとして最も適切なのはどれか.

A
120/80 mmHg
B
150/90 mmHg
C
140/90 mmHg
D
130/80 mmHg
E
降圧目標は設定しない

問題29

アスピリンの心血管予防効果に関して正しいのはどれか.2つ選べ.

A
米国心臓病学会のガイドラインによれば,糖尿病患者は原則としてアスピリンによる一次予防の対象となる.
B
一般的に,心血管疾患の罹患率が低いほど一次予防効果は証明しにくくなる.
C
海外の研究ではアスピリンは,男性で心筋梗塞を減らし女性で脳卒中を減らすことが示されている.
D
日本人において,アスピリンによる消化管出血増加のエビデンスはない.
E
米国予防医療専門委員会(USPSTF)は,70歳以上の心血管リスクが高い患者にアスピリンによる一次予防を推奨している.

(解答は本誌掲載)