特集の理解を深めるための28題
問題1
市中肺炎で頻度の高い起炎微生物はどれか.2つ選べ.
- A
- 肺炎球菌
- B
- マイコプラズマ
- C
- 黄色ブドウ球菌
- D
- 緑膿菌
- E
- アシネトバクター
問題2
誤嚥性肺炎について正しいのはどれか.
- A
- 症状として明らかなむせは必発である.
- B
- 診断は世界的な定義によって行われる.
- C
- 初期治療の選択肢としてescalation治療が推奨される.
- D
- 予防としては速やかに胃瘻造設を行う必要がある.
- E
- 誤嚥性肺炎の存在自体は肺炎の予後と関連しない.
問題3
人工呼吸器関連肺炎(VAP)について正しい組み合わせを選べ.
(1)VAPの診断には,気管支鏡検査を用いた気管支肺胞洗浄液の定量培養が必須である.
(2)臨床的にVAPが疑われてもCRPやプロカルシトニンが上昇していなければVAPと診断されない.
(3)挿管から5日以上経過した後に発生する晩期VAPでは,耐性菌が問題となることが多い.
(4)仰臥位より半座位のほうがVAPは起こりにくい.
(5)VAPに対して抗菌薬を開始する際には,施設における薬剤感受性データを参考にする.
- A
- (1)(2)(3)
- B
- (1)(2)(5)
- C
- (1)(4)(5)
- D
- (2)(3)(4)
- E
- (3)(4)(5)
問題4
膠原病で免疫抑制剤と全身ステロイド剤を半年間併用して外来治療している57歳の女性が発熱と呼吸困難感をきたした.ST合剤の予防的内服はしていなかった.胸部X線写真では両側びまん性陰影が出現していた.この場合,特に鑑別に入れるべき病原体は下記のいずれか.2つ選べ.
- A
- サイトメガロウイルス
- B
- インフルエンザ菌
- C
- 黄色ブドウ球菌
- D
- ニューモシスチス
- E
- マイコプラズマ
問題5
78歳男性.
ADLが悪く,認知症があり施設入所中であった.2日前より呼吸が荒くなり,膿性の喀痰が増加したため,セフカペンピビキシルを内服し,2~3 L/分の酸素投与を行っていた.本日SpO2が90%を下回るようになったため酸素投与下で救急搬送となった.救急部搬入後にバイタル,身体所見,動脈血ガス分析,胸部単純X線が直ちに行われた.
バイタル:体温36.3℃(腋窩温),脈拍90/分(整),血圧103/40 mmHg,呼吸数24回/分,GCS E3V2M5.
身体所見:胸部聴診上,右上肺野でcoarse cracklesを聴取.頸静脈怒張や下腿浮腫なし.
胸部単純X線:右上肺野に浸潤陰影を認める.心拡大は認めず,肋骨横隔膜角は鋭であった.
動脈血ガス分析所見(酸素6 L投与下):pH 7.36,PaO2 82 Torr,PaCO2 31 Torr,空腹時血糖82 mg/dL,乳酸3.4 mmol/L,Na 148 mEq/L,K 3.3 mEq/L,Hb 9.2 g/dL
この時点において直ちに行わないものはどれか.1つ選べ.
- A
- 血液培養2セット採取
- B
- 血液検査(血算・生化学)
- C
- 単純CT
- D
- 抗菌薬投与
- E
- 急速輸液負荷
問題6
呼吸器感染症の診断法として,免疫クロマトグラフィー法が利用できないのはどれか.1つ選べ.
- A
- アデノウイルス
- B
- ライノウイルス
- C
- マイコプラズマ
- D
- 肺炎球菌
- E
- A群溶血性連鎖球菌
問題7
以下のうち,誤っているものはどれか.1つ選べ.
- A
- ESBLは,クラスA型のペニシリナーゼがセファロスポリン系薬やモノバクタム系薬をも分解する能力を獲得した酵素である.
- B
- ESBLは,セファマイシン系薬も効率よく分解する.
- C
- メタロ-β-ラクタマーゼは,カルバペネム系薬を加水分解することができる.
- D
- メタロ-β-ラクタマーゼは,クラブラン酸やスルバクタムなどのβ-ラクタマーゼ阻害薬によって阻害されない.
- E
- 国内で優位に検出されるメタロ-β-ラクタマーゼは,IMP-6である.
問題8
肺炎の原因菌診断について迅速診断ができないものを2つを選べ.
- A
- 培養法
- B
- グラム染色
- C
- 細菌叢解析法
- D
- 尿中抗原の検出
- E
- 質量分析法(MALDI-TOF MS)
問題9
主として気道を防御する能力を測る嚥下機能評価法はどれか.
- A
- 二段階嚥下誘発試験
- B
- 反復唾液嚥下テスト
- C
- 改訂水飲みテスト
- D
- フードテスト
- E
- 嚥下造影検査
問題10
髄膜炎以外のブレイクポイントで注射用ペニシリンに耐性を示す肺炎球菌の頻度はどれか.1つ選べ.
- A
- <10%
- B
- 20~30%
- C
- 50~60%
- D
- 80~90%
- E
- >90%
問題11
肺炎ならびに鑑別疾患の検査・診断に関して正しいのはどれか.
- A
- グラム染色は細菌感染症の迅速診断として有効であり,原因菌を特定できる.
- B
- 肺炎球菌尿中抗原検査は,鼻咽頭に本菌を保菌しているときには,結果の解釈が困難である.
- C
- レジオネラ尿中抗原検査が陰性であれば,レジオネラ肺炎は否定できる.
- D
- リボテストマイコプラズマとプライムチェックマイコプラズマはMycoplasma pneumoniae の遺伝子を検出する検査である.
- E
- 抗酸菌染色検査(Ziehl-Neelsen染色)で陽性であれば肺結核の診断が確定する.
問題12
抗菌薬の適正使用について正しいのはどれか.
- A
- 咳,鼻汁,微熱のある30代の患者に対して積極的に抗菌薬を処方する.
- B
- Antimicrobial stewardship(AS)とは抗菌薬の使用制限をすることである.
- C
- 日本では広く外来の抗菌薬処方に対するAS活動が行われている.
- D
- 臨床感染症専門医がしっかりとASを主導する体制が整っている施設が多い.
- E
- 感染対策とASは相互に連携しあうことで,より高い効果を発揮する.
問題13
院内肺炎において,薬剤耐性菌が原因菌であると考えにくい所見はどれか.1つ選べ.
- A
- グラム染色貪食像陽性
- B
- 喀痰定量培養<104 CFU/mL
- C
- 喀痰定量培養>108 CFU/mL
- D
- 混合培養陽性
- E
- 血液培養陽性
問題14
66歳男性.
現病歴:5日前から発熱,咳,膿性痰が出現し,呼吸困難も出現してきたため,救急外来を受診.
既往歴:高血圧.
体温39.0℃,血圧88/50 mmHg,脈拍120/分,呼吸数32/分,SpO2 86%(room air).右前胸部でcoarse cracklesを聴取.胸部X線写真で右中下肺野にconsolidationを認めた.良質な喀痰が採取でき,グラム染色したところ,大量のグラム陽性双球菌と白血球による貪食像が確認された.
以下のうち,適切な初期治療はどれか.1つ選べ.
- A
- アジスロマイシン
- B
- アンピシリン
- C
- レボフロキサシン
- D
- ピペラシリン/タゾバクタム
- E
- メロペネム
問題15
次のうち正しいものはどれか.
- A
- セフォタキシムは抗緑膿菌活性を有する.
- B
- セフトリアキソンは腎排泄の抗菌薬である.
- C
- セフタジジムは1回1 gを24時間毎に使用する.
- D
- セフトリアキソン投与に関連して胆泥を形成することがある.
- E
- セフェピムはAmpC型β-ラクタマーゼ産生菌感染症に無効である.
問題16
肺結核に対する保険適用を取得しているものはどれか.1つ選べ.
- A
- シプロフロキサシン
- B
- レボフロキサシン
- C
- モキシフロキサシン
- D
- ガレノキサシン
- E
- シタフロキサシン
問題17
カルバペネム薬について正しい記載はどれか.
- A
- ペニシリンに対する感受性にかかわらず肺炎球菌に対するイミペネムのMIC50値は一定である.
- B
- 易痙攣性のある患者に対してはメロペネムよりイミペネムを選択する.
- C
- インフルエンザ菌性肺炎に対しメロペネムよりイミペネムを選択する.
- D
- 最高喀痰中濃度が得られるのは投与後2~4時間である.
- E
- CCrが26~50 mL/minの患者ではメロペネムの投与量を半分に減量する.
問題18
19歳男性.
1週間前から乾性咳嗽と発熱が続くため受診した.周囲に同様の症状の友人がいた.既往歴,家族歴は特記なし.
血圧122/72 mmHg,脈拍80/分,SpO2 95%(room air).胸部聴診では肺野にラ音は聴取されなかった.舌の乾燥など軽度の脱水所見が認められた.血液検査では,白血球数6,700/μL,CRP 10.2 mg/dLであった.胸部X線写真では,右肺上葉に気道散布影とすりガラス影が認められた.
初期治療に用いるべき抗菌薬はどれか.
- A
- アジスロマイシン徐放製剤(AZM-SR)
- B
- アモキシシリン(AMPC)
- C
- スルバクタム・アンピシリン(SBT/ABPC)
- D
- セフトリアキソン(CTRX)
- E
- レボフロキサシン(LVFX)
問題19
肺炎診療におけるステロイドの適応について,正しいものを選べ.
- A
- 重症市中肺炎では,ステロイド投与によって生存率が改善する可能性がある.
- B
- 軽症市中肺炎では,ステロイド少量持続投与が有効である.
- C
- ARDSを合併した院内肺炎では,ステロイド・パルス療法の適応がある.
- D
- 重症の人工呼吸器関連肺炎では,ステロイド・パルス療法の適応がある.
- E
- 宿主免疫・原因菌の種類にかかわらず,より早期にステロイド治療を開始する.
問題20
次の選択肢のなかで誤っているのはどれか.1つ選べ.
- A
- トロンボモジュリンは播種性血管内凝固症候群に対する治療薬である.
- B
- トロンボモジュリンは重症肺炎に積極的に使用すべきである.
- C
- スタチンは脂質異常症の治療薬の1つであるHMG-CoA還元酵素阻害薬であるが,抗炎症作用があると近年肺炎の重症化抑制効果が注目されている.
- D
- 重症肺炎に対するスタチン投与の有効性は明らかではない.
- E
- シベレスタットナトリウムは好中球エラスターゼ阻害薬であり,全身性炎症反応症候群(SIRS)に伴う急性肺障害に対する治療薬である.
問題21
誤嚥性肺炎で入院中の高齢者への対応として正しいものを2つ選べ.
- A
- 経口摂取を開始するまで義歯を装着しない.
- B
- 絶食中は,歯みがきは不要である.
- C
- 含嗽できない患者では歯みがき後の吸引が大切である.
- D
- 保湿にスプレーやマスクの装着は有効である.
- E
- 経口摂取の再開に嚥下造影検査は必須である.
問題22
72歳男性.
11月にワクチン接種を希望して来院した.1年前に季節性インフルエンザワクチン,4年前にPPSV23(ニューモバックス®NR)を接種しているが,これまで強い副反応は出ていない.対応として正しいのはどれか.1つ選べ.
- A
- インフルエンザワクチンとPCV7(プレベナー®7)を接種
- B
- インフルエンザワクチンとPCV13(プレベナー®13)を接種
- C
- インフルエンザワクチンとPPSV23(ニューモバックス®NR)を接種
- D
- PCV13(プレベナー®13)とPPSV23(ニューモバックス®NR)を接種
- E
- 接種可能なワクチンはないため接種しない.
問題23
インフルエンザ関連肺炎について正しいものはどれか.1つ選べ.
- A
- 細菌感染を伴わないウイルス性肺炎が最も多い.
- B
- インフルエンザ関連細菌性肺炎では,肺炎球菌性肺炎が多い.
- C
- 早期に抗インフルエンザ薬を投与すれば肺炎は発症しない.
- D
- インフルエンザの診断時は肺炎予防のために必ず抗菌薬を投与する.
- E
- 妊婦はインフルエンザ肺炎に罹りにくい.
問題24
成人市中肺炎の原因ウイルスとして頻度の高くないものを1つ選べ.
- A
- ライノウイルス(HRV)
- B
- メタニューモウイルス(hMPV)
- C
- RSウイルス(RSV)
- D
- インフルエンザウイルス(A, B)
- E
- 単純ヘルペスウイルス(HSV)
問題25
新興呼吸器感染症について正しいものはどれか.1つ選べ.
- A
- 中東呼吸器症候群(MERS)を診断した医師は,1週間以内に最寄りの保健所へ届出なければならない.
- B
- MERSは,感染症法上の指定感染症である.
- C
- MERSコロナウイルスは,エンベロープを有しエタノールに感受性がある.
- D
- MERSは,世界保健機関により「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)」に指定されている.
- E
- MERSコロナウイルスは,バイオセーフティレベル2(BSL2)の実験施設で取り扱うことができる.
問題26
アスペルギルス肺病変について正しいものはどれか.1つ選べ.
- A
- 結核後遺症の患者にしばしば合併するのは侵襲性肺アスペルギルス症である.
- B
- 慢性肺アスペルギルス症では喀痰からの培養陽性が確定診断となる.
- C
- アレルギー性気管支肺アスペルギルス症の治療は抗真菌薬投与である.
- D
- 慢性肺アスペルギルス症の診療では喀血のコントロールが最も重要である.
- E
- 侵襲性肺アスペルギルス症ではほかの病型と比較してアスペルギルス沈降抗体検査が有用である.
問題27
62歳女性.
3カ月続く,咳嗽と喀痰で来院.胸部X線を撮像したところ,右上肺野に粒状影を認めた.喀痰の抗酸菌検査は3回提出し,塗抹は3回とも陰性であり,TB-PCRも陰性であった.
最も行うべきでないマネジメントは次のうちどれか.
- A
- 鎮咳薬の投与
- B
- 去痰薬の投与
- C
- クラリスロマイシンの少量投与
- D
- M. avium-PCR/M. intracellular-PCRの提出
- E
- 抗MAC抗体の提出
問題28
成人の季節性インフルエンザにおいて入院の原因として最も少ないものはどれか.
- A
- 脳症合併
- B
- 二次性細菌性肺炎
- C
- 社会的背景(独居など)
- D
- ウイルス細菌混合性肺炎
- E
- 全身状態不良(脱水,ショックなど)
(解答は本誌掲載) |