HOME > 雑 誌 > medicina > バックナンバー一覧 > 53巻10号(2016年9月号) 特集の理解を深めるための23題
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特集の理解を深めるための23題


問題1

高齢者の病歴聴取について誤っているものはどれか.
A
服薬歴について聴取する.
B
入浴と排泄について必ず聴取する.
C
治療に関する家族の意向を聴取する.
D
病歴聴取を通じて患者の判断能力を推定する.
E
救急医療では医学的情報に限定して聴取する.

問題2

手の変形性関節症の所見はどれか.2つ選べ.
A
Osler(オスラー)結節
B
Busacca(ブサッカ)結節
C
Bouchard(ブシャール)結節
D
Heberden(ヘバーデン)結節
E
Janeway(ジェーンウェイ)病変

問題3

誤嚥性肺炎における喀痰グラム染色の病原体所見はどれか.
A
グラム陽性双球菌
B
グラム陰性双球菌
C
大型サイズでハローを有するグラム陰性桿菌
D
多種類の細菌
E
グラム陰性球桿菌

問題4

次の文章のなかで正しいものはどれか.2つ選べ.
A
超高齢者では降圧時に臓器還流障害に注意しなければならない.
B
すべての超高齢者において“the lower the better”を目指すべきである.
C
超高齢者では家庭血圧測定が困難である場合があるので,診察室血圧を重視するべきである.
D
超高齢者における降圧治療では,緩徐で段階的な降圧が重要である.
E
日本人では,高血圧合併症として虚血性心疾患の頻度が高い.

問題5

次の文章のなかで正しいものを選べ.
A
CHADS2 スコアの因子のなかで,最も高い血栓症発症リスクは糖尿病である.
B
高齢心房細動患者では,常にワルファリンよりも直接作用型経口抗凝固薬のほうが血栓症予防に適している.
C
わが国では高齢心房細動患者においても約80%の患者で抗凝固治療が施行されている.
D
高齢心房細動患者ではガイドラインに沿った抗凝固治療を行うことは出血リスクを増やして予後を悪化させる.
E
左心耳閉鎖デバイスなどの非薬物的抗血栓治療は,抗凝固薬の内服継続が困難な高齢心房細動患者において効果が期待されている.

問題6

次の文章のなかで誤っているものを選べ.
A
急性心筋梗塞の診療に関するガイドラインはいくつかの研究をもとに作成されているが,75歳以上の患者を多数含む研究は乏しく,特に80歳以上の患者のみを対象とした研究はほとんどない.
B
高齢患者では,身体的フレイル・歩行速度と心血管死亡が関連すると推測されている.
C
高齢患者の治療に当たっては,個々の患者の多様性を十分に把握し,治療法を決定すべきである.
D
活動性出血を認める急性心筋梗塞の患者は,積極的に緊急PCIを施行すべきである.
E
高齢患者の急性心筋梗塞であっても,血行再建術が有用な症例がある.

問題7

収縮不全を有する高齢者心不全治療において導入を検討すべき薬剤はどれか.1つ選べ.
A
β遮断薬
B
アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬
C
アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)
D
抗アルドステロン薬
E
上記すべての薬剤が候補

問題8

次のうち,スクリーニング検査の代替アウトカムはどれか.
A
感度
B
対象集団に発生する有害事象
C
対象集団の予後
D
対象集団でのcost-effectiveness
E
対象集団の生活の質

問題9

COPDについて正しいものはどれか.1つ選べ.
A
COPDならば肺気腫が存在する.
B
スパイロメトリーでFEV1/FVCが70%未満であればCOPDと診断する.
C
UPLIFT試験の1次エンドポイントは死亡率の減少である.
D
NICE studyでは,本邦のCOPDの有病率は約100万人と推定されている.
E
COPDは徐々に生じる労作時の呼吸困難や慢性の咳嗽,喀痰を特徴とするが,これらの症状に乏しいこともある.

問題10

肺がんについて正しいものはどれか.2つ選べ.
A
毎年10万人以上が肺がんと診断されている.
B
がん死亡原因の2位である.
C
75歳以上では殺細胞性抗がん剤の適応はない.
D
EGFRチロシンキナーゼ阻害薬であるゲフィチニブやエルロチニブは,EGFR 遺伝子変異陽性の高齢者肺がんに対しても若年と同様に有効である.
E
免疫チェックポイント阻害薬であるニボルマブは,製薬会社が薬価を決めて販売をしている.

問題11

次の文章のなかで正しいものはどれか.2つ選べ.
A
がん検診の有効性は,検診発見がんのQOLを指標として評価できる.
B
有効性の科学的根拠があっても,必ずしもがん検診を推奨すべきではない.
C
高齢者では胃がん検診および大腸がん検診でのがん発見率が高いことから,検診を推奨すべきである.
D
高齢者の胃がん検診で重篤な合併症が多いのは,主にバリウムによる胃X線検査である.
E
がん検診の不利益の発生源として偽陽性が重要である.

問題12

次の文章のなかで誤っているものはどれか.
A
人工的水分・栄養補給法(AHN)とは,経口による自然な摂取以外で水分や栄養を補給する方法の総称である.
B
経口摂取量が減っている高齢者を診療する場合,医学的観点と倫理的観点の両面からAHNの適応を判断する.
C
AHNのうち,中心静脈栄養が最も優れた栄養投与経路である.
D
PEG造設数は年々減少している.
E
末期の認知症患者に対するPEGは終末期の延命治療ではないかとの指摘がある.

問題13

C型慢性肝炎の治療について正しいものはどれか.1つ選べ.
A
現在の第一選択薬はインターフェロン(IFN)を含む抗ウイルス治療である.
B
直接型抗ウイルス薬(DAA)は高齢になるほど著効率が低下する.
C
DAAを投与する際には全例Y93 遺伝子変異を測定する必要がある.
D
ソホスブビルは重度腎障害例では使用が禁忌となっている.
E
オムビタスビル/パリタプレビルはアンジオテンシンⅡ受容体括抗薬との併用が禁忌である.

問題14

高齢者の感染症における特徴について誤っているものはどれか.
A
無症候性細菌尿が多い.
B
感染症に罹患しても発熱のない患者が多い.
C
感染症が原因で意識障害をきたすことが多い.
D
膿尿,細菌尿があれば尿路感染と診断してよい.
E
心内膜炎を診断する際に経胸壁心エコーの感度は若年者と比較して低い.

問題15

85歳男性が「昨日から風邪をひいている」と訴えて外来を受診した.発熱は39℃台だが,咳,鼻汁,咽頭痛はない.この患者への対応として不適切なものはどれか.2つ選べ.
A
風邪という患者の自己診断を信用して,診察はせずに解熱鎮痛薬(NSAIDs)と総合感冒薬(抗ヒスタミン薬を含む)を処方して帰宅させる.
B
ウイルス性上気道炎と診断し,培養は何も採取せずに経口第3世代セファロスポリンを処方する.
C
敗血症の可能性がないか,血圧,脈拍,呼吸数,意識状態,SpO2などのバイタルサインを確認する.
D
敗血症の可能性を考え,血液検査を行う.
E
海外渡航歴の有無を確認する.

問題16

次のうち,ST合剤で予防できない疾患(病原体)はどれか.1つ選べ.
A
ニューモシスチス肺炎(Pneumocystis jirovecii
B
リステリア髄膜炎(Listeria monocytogenes
C
レプトスピラ症(Leptospira interrogans
D
トキソプラズマ症(Toxoplasma gondii
E
ノカルジア症(Nocardia asteroides complex)

問題17

肺炎球菌ワクチンの種類とそのワクチンでカバーされる国内の成人の侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)由来肺炎球菌の莢膜血清型の割合で,正しい組み合わせはどれか.
A
PPSV23-26.5%
B
PPSV23-46.5%
C
PPSV23-66.5%
D
PCV13-26%
E
PCV13-66%
※PPSV23:23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン,PCV13:13価肺炎球菌結合型ワクチン

問題18

次のDPP-4阻害薬のうち,中等度以上の腎機能障害を有する症例でも,減量を要することなく投与可能な薬剤はどれか.2つ選べ.
A
リナグリプチン
B
サキサグリプチン
C
トレラグリプチン
D
シタグリプチン
E
テネリグリプチン

問題19

高齢者糖尿病について誤っているものはどれか.1つ選べ.
A
成年と同じ診断基準を用いる.
B
90歳以上では血糖管理は不要である.
C
空腹時血糖より食後高血糖が多い.
D
認知症は重症低血糖で増加する.
E
慢性高血糖では遂行機能の低下が多い.

問題20

高齢者におけるメトホルミン使用として正しいものはどれか.1つ選べ.
A
後期高齢者での使用は禁忌である.
B
重度腎機能障害(eGFR<30mL/分/1.73m2)例でも使用可能である.
C
体調不良の場合でも減量すれば使用の継続が可能である.
D
腎機能は血清クレアチニンを用いて評価する.
E
サルコペニア,心血管疾患,死亡の減少をもたらすという報告がある.

問題21

次のうち,Friedのフレイルの基準に含まれない項目はどれか.
A
体重減少
B
主観的疲労感
C
日常生活活動量の減少
D
身体能力(歩行速度)の減弱
E
認知機能の低下

問題22

Choosing Wisely について正しいものはどれか.2つ選べ.
A
専門領域ごとに最もエビデンスの高い検査や治療法を決定することが主な目的である.
B
米国でのモデルを参考に,日本を含む世界各国でそれぞれキャンペーンが広まりつつある.
C
医療費の抑制を目的にObama-care政策の1つとして始まった概念である.
D
各専門学会からの推奨リストは,医師と患者が対話する際に最良の選択をするために活用することを提唱している.
E
老年医学領域においてはエビデンスが少ないので,高齢者医療に対してはChoosing Wisely の概念はあまり有益でない.

問題23

75歳男性.5年前の脳梗塞後遺症で,左片麻痺と軽度の構語障害があり,車椅子の生活であるが,妻の介護を受けて生活しており,認知機能は保たれている.半年前に誤嚥性肺炎で入院加療され退院した.退院後も食事中によくむせて微熱が出るが,なんとか経口摂取ができている.そのほか高血圧,糖尿病で内服加療されている.本日,定期受診のため来院した.これまでAdvance Care Planning(ACP,先を見据えた終末期ケア意思共有)は実践されていなかったので,医師は「○○さんは,これまで人生の最後の時間をどのように過ごすかについて考えたことがありますか」と切り出した.その後のACPの進め方について適切なものはどれか.1つ選べ.
A
医師は事前指示書を作成しなければならないことを説明し,心肺停止時の対処についてdo not attempt resuscitation(DNAR)か,フルcardiopulmonary resuscitation(CPR)かの選択をさせ,その日のうちに事前指示書を作った.
B
患者本人について最もわかってくれている人は誰なのか,誰と終末期ケアについて話をしたいかを聞く.
C
ACPの話し合いを進めていくと,患者が「私は絶対に施設には行きたくない.家族にはよくよくそのように言っている」と言った.医師は,患者の意見を尊重して家族に対して施設に入らせないようにと忠告した.
D
患者は「なるようにしかならないし,未来のことなんか考えたくない」と言ったので,本人には話をせずに家族とだけ話を始めた.
E
ACPの話し合いも進み,最後に事前指示書も作成した.医師は「本人と家族に事前指示書は大事なものだから,鍵のかかった金庫に入れておくように」と忠告した.

(解答は本誌掲載)