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今月の主題

「理解のための20題」


問題1

57歳の男性.5年前に検診で尿糖陽性を指摘された.今年8月初めに急性上気道炎に罹患.8月9日より口渇,多飲,多尿,全身倦怠感が出現し近医受診.総合感冒薬が処方されたが,意識障害が出現し3日後に救急外来受診.
身体所見:身長170 cm,体重76 kg,血圧110/60 mmHg.
血液・血清生化学所見:尿ケトン体(3+),血糖 835 mg/dl,HbA1c(JDS値)6.5%,Amy 1,548 IU/l,動脈血 pH 7.205,尿中CPR 2 μg/日,ICA(-),GAD抗体(-),IA-2抗体(-),IAA(-).
 診断はどれか.1つ選べ.

A:2型糖尿病の急性増悪
B:劇症1型糖尿病
C:急性発症1型糖尿病
D:緩徐進行1型糖尿病
E:そのほかの糖尿病


問題2

血糖コントロールについて誤っているのはどれか.

A:1型糖尿病患者に対する厳格な血糖コントロールは糖尿病細小血管障害の進展を抑制する.
B:2型糖尿病患者に対する厳格な血糖コントロールは糖尿病細小血管障害の進展を抑制する.
C:1型糖尿病患者に対する早期からの血糖コントロールは糖尿病大血管障害の進展を抑制する.
D:2型糖尿病患者に対する早期からの血糖コントロールは糖尿病大血管障害の進展を抑制する.
E:1型糖尿病では2型糖尿病に比べてより厳格な血糖コントロールが必要である.


問題3

糖尿病実態調査において「糖尿病の可能性を否定できない」の判定に用いられる基準はどれか.正しいものを1つ選べ.

A:随時血糖200 mg/dl以上
B:空腹時血糖110 mg/dl以上
C:HbA1c(JDS値)5.6%以上
D:ブドウ糖負荷後2時間血糖140 mg/dl以上
E:HbA1c(JDS値)6.1%以上


問題4

次の文章のうち正しいものはどれか.1つ選べ.

A:OGTTによる糖尿病判定基準のうち糖尿病型:空腹時血糖値110 mg/dl以上,OGTT2時間値200 mg/dl以上,随時血糖値200 mg/dlのいずれかがあればよい.
B:WHOのIFG(impaired fasting glycemia)は日本糖尿病学会の境界型と同様である.
C:IGTのうちOGTT2時間値が170 mg/dl以上群は,正常,IFG, IGT-1(OGTT 2時間値140~169 mg/dl)群に比して糖尿病発症率が10倍以上高い.
D:2010年7月からHbA1c(JDS)≧6.1%を糖尿病型とすることが決められ,HbA1cのみで糖尿病を診断することができる.
E:糖尿病発症の寄与リスク比は高血糖が最も強いが,そのほか肥満,高TG血症,年齢,高血圧の順であり,これらの是正が予防につながる.


問題5

一般に糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)の初期治療で開始時の輸液とインスリン量の正しい組み合わせはどれか.1つ選べ.

A:輸液(生理食塩水100~200 ml/時間),インスリン(速効型インスリン0.1単位/kg静注)
B:輸液(1/2生理食塩水500~1,000 ml/時間),インスリン(速効型インスリン0.5単位/kg静注)
C:輸液(生理食塩水500~1,000 ml/時間),インスリン(速効型インスリン0.1単位/kg静注)
D:輸液(生理食塩水500~1,000 ml/時間),インスリン(速効型インスリン1.0単位/kg静注)
E:輸液(生理食塩水100~200 ml/時間),インスリン(速効型インスリン0.1単位/kg静注)


問題6

次の症状のうち低血糖性昏睡に伴う症状と考えにくいものはどれか.1つ選べ.

A:痙攣
B:低血圧
C:片麻痺
D:頻脈
E:振戦


問題7

糖尿病患者に合併しやすい感染症として誤っているのはどれか.1つ選べ.

A:皮膚・粘膜カンジダ症
B:尿路感染症
C:結核
D:手術部位感染(SSI)
E:急性肝炎


問題8

次のうち,糖尿病網膜症について誤っている記述はどれか.2つ選べ.

A:糖尿病網膜症は代謝異常が原因である.
B:糖尿病患者における眼科受診は視力低下を自覚してからでもよい.
C:糖尿病網膜症はわが国の後天的失明原因の第2位である.
D:糖尿病黄斑症の合併は増殖糖尿病網膜症でのみみられる.
E:血糖コントロールと糖尿病網膜症の進展にはある程度の正の相関がみられる.


問題9

糖尿病性腎症の評価に必須の検査を2つ選べ.

A:尿アルブミン
B:尿トランスフェリン
C:尿β2ミクログロブリン
D:血中尿素窒素
E:血中クレアチニン


問題10

糖尿病性神経障害の記載として間違っているのはどれか.1つ選べ.

A:血流障害も重要な成因の1つである.
B:アルドース還元酵素阻害薬が有用である.
C:両手のみに症状が出現することもある.
D:アキレス腱反射と振動覚閾値が重要である.
E:強い自覚症状には三環系抗うつ薬が有用である.


問題11

脳梗塞(アテローム血栓性)後の脳梗塞再発予防薬として正しいものはどれか.2つ選べ.

A:アスピリン50 mg/日
B:クロピドグレル75 mg/日
C:アスピリン100 mg/日+クロピドグレル75 mg/日
D:シロスタゾール200 mg/日
E:ワルファリン


問題12

閉塞性動脈硬化症のうち正しくない記述はどれか.1つ選べ.

A:約半数の患者が冠状動脈疾患を合併する.
B:糖尿病はオッズ比の高い危険因子である.
C:足関節上肢血圧比(ABI)の検査は必須である.
D:間歇性跛行肢の予後は不良である.
E:重症下肢虚血の治療の第1選択は血行再建である.


問題13

次のうち正しいものはどれか.1つ選べ.

A:これまでの2型糖尿病患者に対する大規模臨床試験では,HbA1cを下げれば下げるほど心血管リスクが低下することが示されている.
B:SU薬やインスリンを使用して強力にHbA1cを低下させると,心血管リスクの低減が数年以内に認められる.
C:動脈硬化が進行している2型糖尿病患者では,低血糖を起こさないことも心血管リスク低減のためには重要である.
D:動脈硬化が進行している2型糖尿病患者では,血糖コントロールが良好であれば,血圧や脂質のコントロールは緩やかにとどめておく.
E:インスリン抵抗性改善薬は,2型糖尿病患者の心血管リスク低減に有効ではない.


問題14

糖尿病患者の降圧治療で正しいのはどれか.2つ選べ.

A:降圧目標は130/85 mmHg未満である.
B:第一選択薬はACE阻害薬かARBである.
C:Ca拮抗薬は第二選択薬である.
D:利尿薬は第三選択薬である.
E:β遮断薬は低血糖をマスクしたり,遷延化させるので用いない.


問題15

SU薬とほかの経口糖尿病薬の併用療法において不適切な薬剤はどれか.1つ選べ.

A:DPP-4阻害薬
B:ビグアナイド薬
C:チアゾジリン薬
D:αグルコシダーゼ阻害薬
E:速効型インスリン分泌促進薬


問題16

BG薬について正しくないのはどれか.2つ選べ.

A:乳酸アシドーシスの頻度は,メトホルミンが最も低い.
B:単独投与では,低血糖を起こしにくい.
C:CTなど造影剤使用時には,前後2日間BG薬を中止する.
D:腎排泄ではないので,腎不全患者でも使用できる.
E:1型糖尿病で,インスリンとの併用により血糖降下作用を呈するので,併用が推奨される.


問題17

以下のうち正しいものを1つ選べ.

A:α-グルコシダーゼ阻害薬(α-GI)の副作用として最も頻度が高いものは低血糖である.
B:グリニド製剤は食前に内服しないとその効果が減弱してしまうので食事30分前の内服を徹底させる.
C:グリニド製剤はスルフォニル尿素(SU)薬の2次無効例からの切り替えに有効である.
D:α-GIで低血糖を起こした場合は,速やかにブドウ糖を摂取するように指導が必要である.
E:α-GIはいずれも小腸で吸収されない.


問題18

チアゾリジン誘導体に関して,誤った記述はどれか.2つ選べ.

A:チアゾリジン誘導体の代表的な副作用として,腹部膨満がある.
B:チアゾリジン誘導体の代表的な副作用として,乳酸アシドーシスがある.
C:チアゾリジン誘導体の代表的な副作用として,浮腫がある.
D:チアゾリジン誘導体の代表的な副作用として,体重増加がある.
E:チアゾリジン誘導体の代表的な副作用として,高齢女性の骨折がある.


問題19

GLP-1について誤っているものを1つ選べ.

A:インクレチンである.
B:上部小腸K細胞から分泌される.
C:インスリン分泌作用は血糖値に依存する.
D:DPP-4により分泌されてから数分以内に不活化される.
E:臨床応用するにあたり皮下注射製剤として開発された.


問題20

インスリン療法について誤っているものはどれか.1つ選べ.

A:今日使用できるインスリン製剤は大きく分けて5 種類に分類される.
B:責任インスリンとは血糖自己測定の値により調節して打つインスリンのことである.
C:インスリンは糖尿病治療において最も古い薬である.
D:食後の追加インスリン分泌に相当するのが超速効型・速効型インスリンである.
E:1型糖尿病はインスリン治療の絶対的適応である.


(解答は本誌掲載)