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今月の主題

「理解のための28題」


問題1

初感染で慢性化率が0.5%未満の肝炎ウイルスはどれか.2つ選べ.

A:A型肝炎ウイルス(HAV)
B:B型肝炎ウイルス(HBV)
C:C型肝炎ウイルス(HCV)
D:D型肝炎ウイルス(HDV)
E:E型肝炎ウイルス(HEV)


問題2

ウイルス肝炎の肝機能検査として誤っているのはどれか.1つ選べ.

A:C型慢性肝炎で血小板数が8×104/mm3以下に低下していると,肝硬変に進行している可能性が高い.
B:肝癌症例では,一般的にAFPとPIVKA-IIの両者は相関が少ないが,小型肝癌の診断においては相関が強く,両者を同時測定する意味は弱い.
C:肝疾患におけるALPとγ-GTPは臨床的に似た意義をもっているが,両者の比較でアルコール性肝障害の鑑別が可能になる.
D:ASTとALTを同時に測定するのは,両者の絶対値のみではなく,AST/ALT比が臨床的に意味をもっているからである.
E:抗M2抗体が陽性を示す肝疾患では,まず原発性胆汁性肝硬変を考える.


問題3

肝炎ウイルスマーカーについて,正しいものはどれか.1つ選べ.

A:HCV抗体は中和抗体であり,ワクチン接種者でも陽性を示すことがある.
B:HEV抗体陰性の急性肝炎症例では,E型肝炎は除外できる.
C:HCV抗体陽性はHCVの感染状態であることを示す.
D:HBcrAgは,肝組織中のHBVのウイルス量を反映する.
E:IgG型HA抗体陽性,IgM型HA抗体陰性であれば,HAVの急性感染を意味する.


問題4

C型肝硬変に認められる超音波所見として,誤っているのはどれか.1つ選べ.

A:メッシュワークパターン
B:脾腎短絡路
C:肝実質エコーの粗雑化
D:尾状葉の腫大
E:左胃静脈の拡張


問題5

次のなかで正しいのはどれか.1つ選べ.

A:自己免疫性肝炎の肝生検組織診断は,新犬山分類で行う.
B:肝細胞癌の発生はC型慢性肝炎の線維化の進展に伴い増加する.
C:肝に肉芽腫をきたす疾患で代表的な疾患はC型慢性肝炎である.
D:わが国のアルコール性肝硬変の大多数は,アルコール性肝炎から進展・増悪する.
E:非アルコール性脂肪性肝炎の診断には,肝生検は不要である.


問題6

次のうち,誤っているものを2つ選べ.

A:劇症肝炎,急性肝炎重症型は重篤な急性肝炎である.
B:劇症肝炎の診断基準は症状発現後12週以内に肝性昏睡II度以上の脳症をきたし,プロトロンビン時間60%以下を示すものとされている.
C:近年,東京など都市部ではB型肝炎genotype Aによる急性肝炎患者が増加している.
D:本邦でのE型急性肝炎患者は中年の男性に多い傾向にある.
E:劇症肝炎ではウイルス性のなかではB型肝炎ウイルスによるものが最も多い.


問題7

慢性肝炎,肝硬変について,以下のうち,正しいものを1つ選べ.

A:慢性肝炎,肝硬変において,B型肝炎ウイルス感染によるものが最も多い.
B:B型肝炎ウイルスは成人初感染でキャリア化することはない.
C:アルコール性肝硬変よりも非アルコール性脂肪肝炎(NASH)による肝硬変の頻度のほうが高い.
D:肝硬変の死因として最も多いのは肝細胞癌である.
E:B型肝硬変の発癌率は,C型肝硬変の発癌率よりも高い.


問題8

A型肝炎に関する記述で誤っているものを1つ選べ.

A:発熱の頻度が,ほかの肝炎ウイルスに起因する急性肝炎よりも高い.
B:IgMの上昇をしばしば認める.
C:経口感染する.
D:慢性化する率が高い.
E:高齢者では,若年者に比して重症化の頻度が高い.


問題9

日本を含む非流行地域におけるE型急性肝炎の臨床像で正しいのはどれか.2つ選べ.

A:症例に性差はみられず,young adultに好発する.
B:肝炎重症化はHEV genotype 4の感染による症例で頻度が高い.
C:症例の大半は流行地で感染し,帰国後に発症した輸入感染症である.
D:感染経路としては,汚染された飲料水の摂取が重要である.
E:HEV感染診断には,病初期血清におけるHEV RNAの検出が有用である.


問題10

HBVキャリアの自然経過について,正しいのはどれか.1つ選べ.

A:HBVキャリアの多くは性的接触にて感染した.
B:若年で肝炎を発症するほうが予後がよい.
C:非活動性キャリアでは,肝発癌はない.
D:回復期ではHBVは完全に排除されている.
E:男性に比較し,女性の発癌率が高い.


問題11

B型慢性肝疾患の治療の適応と選択で,正しいのはどれか.1つ選べ.

A:治療の適応を決める際に最も重要な因子はHBe抗原の有無である.
B:HBV genotypeの測定は,治療法に関係しないため,有用ではない.
C:インターフェロン療法は,若年症例(35歳未満)では短期投与(4週間)が効果的である.
D:35歳未満の若年症例でも肝組織像が進行している症例(F3以上)では,エンテカビルの投与を考慮する.
E:35歳以上で初診時ALT値30 IU/l,HBe抗原陰性,HBV DNA 5 log copies/ml,血小板数15×104/μlであった症例では1年後の経過観察でよい.


問題12

32歳,女性,既婚,挙児希望あり.母親がB型肝硬変,肝細胞癌で他院に通院中.28歳時にB型慢性肝炎と診断され,近医で経過観察を受けていた.抗ウイルス療法を受けたことはない.2年前からAST,ALT値が上下動を繰り返し,1年前からはAST,ALT値が100 IU/l以上を持続している.HBe抗原は持続的に陽性である.改善傾向がないために本人が治療を希望し,当院を受診した.HBs抗原陽性,HBe抗原陽性,HBe抗体陰性,HBV DNA 5.8 log copies/ml,AST 150 IU/l,ALT 210 IU/l,T-Bil 1.0 mg/dl,PT活性95%,白血球数5,600/μl,Hb 12.0 mg/dl,血小板14.5×104/μl.
この患者の治療方法で第一選択と考えられるのはどれか.1つ選べ.

A:経過観察
B:強力ネオミノファーゲンC
C:インターフェロン療法
D:エンテカビル長期継続投与
E:ペグインターフェロン・リバビリン併用療法


問題13

55歳,男性.母親がB型肝炎キャリアであった.25年前にHBs抗原陽性であることを指摘された.年1回の健康診断ではAST/ALTは30~50 IU/l程度で医療機関の受診はしておらず,治療も受けたことはない.1カ月前の検診でAST 105 IU/l,ALT 110 IU/lと異常を指摘され受診した.来院時,AST 350 IU/l,ALT 305 IU/l,T-Bil 2.0 mg/dl,血小板10×104/mm3,HBe抗原陰性,HBe抗体陽性,HBV DNA 7.0 logコピー/mlであった.正しい治療を1つ選べ.

A:インターフェロン
B:エンテカビル
C:ラミブジン
D:ラミブジンとアデホビルの併用
E:アデホビル


問題14

肝炎病期の進展度をみるうえで指標とならない血液検査はどれか.1つ選べ.

A:アルブミン
B:ヒアルロン酸
C:肝酵素(AST,ALT)
D:血小板
E:γ-グロブリン


問題15

C型慢性肝炎の治療適応で正しいのはどれか.2つ選べ.

A:ALT正常値内の無症候性キャリアは治療適応ではない.
B:65歳以上の高齢者はインターフェロン(IFN)治療の適応ではない.
C:ガイドラインではウイルス量,genotype,治療歴などが考慮される.
D:genotype 2は難治性のため,IFN導入前の効果予測が重要である.
E:ISDR変異症例はIFN効果が期待できるため,積極的に治療導入すべきである.


問題16

C型慢性肝炎に対するPeg-IFN/RBV併用療法について,次のなかから正しいものを1つ選べ.

A:高齢者では,genotype 1型高ウイルス量であってもPeg-IFNは少量より開始する.
B:genotype 1型高ウイルス量症例では,Peg-IFN投与量の少ない症例で治療後再燃をきたしやすい.
C:genotype 1型高ウイルス量症例で,治療開始12週時にHCV-RNA陰性化を認めた場合の48週投与での著効率は40~50%である.
D:genotype 1型高ウイルス量で12週以降にウイルスが陰性化した症例では,72週投与が有効である.
E:genotype 1型高ウイルス量では,24週時にALTが正常化していてもウイルス陰性化が得られない場合は,治療中止とする.


問題17

C型慢性肝炎において,インターフェロン療法が施行できないときの治療法で正しいものどれか.2つ選べ.

A:リバビリン
B:ウルソデオキシコール酸
C:小柴胡湯
D:強力ネオミノファーゲンC
E:ウコン


問題18

C型慢性肝炎患者で高頻度にみられる肝外病変はどれか.1つ選べ.

A:結節性多発動脈炎
B:膜性腎症
C:本態性クリオグロブリン血症
D:関節リウマチ
E:Burkitt型悪性リンパ腫


問題19

亜急性の経過をとる劇症化切迫例で,低下しない検査項目はどれか.1つ選べ.

A:アルブミン
B:コリンエステラーゼ
C:BUN
D:血中グルタミン濃度
E:総コレステロール


問題20

肝硬変の治療について正しいのはどれか.1つ選べ.

A:肝硬変の原因として最も頻度が高い疾患はアルコール性肝硬変である.
B:B型肝炎ウイルス(HBV)による肝硬変では,代償期・非代償期のいずれも抗ウイルス療法の適応である.
C:肝性脳症を合併する肝硬変には高蛋白食が有用である.
D:腹水や浮腫が出現している肝硬変では,塩分摂取量は10 g/日程度とする.
E:就寝前エネルギー投与(late evening snack:LES)は非代償性肝硬変には行わない.


問題21

30歳,女性.職業は看護師.本日早朝,HBs抗原陽性,HBe抗原陽性,HCV抗体陰性の慢性肝炎患者を採血後に誤って注射針を自分の指に刺してしまった.この看護師はHBs抗原陰性,HBs抗体陰性であった.対応として適切なのはどれか.1つ選べ.

A:経過観察
B:B型肝炎ワクチンの投与
C:HBs抗体含有ヒト免疫グロブリンの投与
D:HBs抗体含有ヒト免疫グロブリンとB型肝炎ワクチンの投与
E:インターフェロンの投与


問題22

日本におけるB型急性肝炎について,誤っているものはどれか.2つ選べ.

A:genotype Aの感染の割合が増加している.
B:C型肝炎ウイルス(HCV)の重複感染が増えている.
C:ワクチン投与により予防できる.
D:成人感染では約30%が慢性化する.
E:ヒト免疫不全ウイルス(HIV)との重複感染では,慢性化しやすい.


問題23

B型肝炎ウイルス(HBV)検査について,正しいものはどれか.2つ選べ.

A:B型慢性肝炎では,HBe抗原が陰性化すると予後良好である.
B:HBs抗原が陰性でHBc抗体が高力価であれば,その血液は輸血に使用できる.
C:成人のHBV初感染は慢性化しない.
D:本邦におけるHBVキャリアは,ほとんどの場合,乳幼児期の感染による.
E:現在の日本における成人のB型急性肝炎は,ほとんどが性感染症である.


問題24

C型肝炎でインターフェロン療法の著効率を高める因子はどれか.1つ選べ.

A:インスリン抵抗性
B:女性
C:高齢
D:血清LDLコレステロール高値
E:脂肪肝


問題25

B型肝炎ウイルス(HBV)について,誤っているのはどれか.2つ選べ.

A:HBVに感染すると,すぐにHBs抗原が陽転化する.
B:HBs抗原が陰性化した患者ではHBVは完全に消失する.
C:HBs抗原を検出しない変異HBVが存在する.
D:リツキシマブ併用療法中のHBs抗原陰性例からB型肝炎が発症する.
E:HBc抗体陽性者は肝移植のドナーとして適切ではない.


問題26

B型慢性肝炎に対するステロイド離脱療法において,禁忌に該当しないのはどれか.1つ選べ.

A:黄疸の既往
B:HBe抗原持続陽性
C:肝硬変
D:AST>ALTの慢性肝炎
E:AFP(α-フェトプロテイン)高値


問題27

C型慢性肝炎の新しい治療薬はどれか.2つ選べ.

A:clevudine
B:nitazoxanide
C:telaprevir
D:tenofovir
E:turbada


問題28

B型肝炎肝硬変に対する肝移植においては,周術期におけるB型肝炎の制御が予後を規定する重要な因子である.以下のうち,B型肝炎の制御に直接関係のないものはどれか.1つ選べ.

A:アデフォビル
B:インターフェロン
C:エンテカビル
D:免疫グロブリン
E:リバビリン


(解答は本誌掲載)