HOME雑 誌medicina誌面サンプル 46巻11号(2009年11月号) > 今月の主題「理解のための27題」

今月の主題

「理解のための27題」


問題01

わが国の脳卒中医療に関する動きのうち,2009年の段階で実現していないものはどれか.1つ選べ.

A:t-PA静注療法の承認
B:頸動脈ステント留置術の承認
C:脳卒中ケアユニット加算の設置
D:脳血管疾患等リハビリテーション料の設定
E:脳卒中対策基本法の成立


問題02

一過性脳虚血発作で正しい記載はどれか.1つ選べ.

A:脳に病変は生じない.
B:脳卒中への移行は少ない.
C:症状は通常1時間以上続く.
D:めまい発作は一過性脳虚血発作と診断される.
E:抗血小板薬投与の積極的な適応となる.


問題03

日本人の脳卒中の疫学で,誤りはどれか.2つ選べ.

A:降圧治療の普及により,脳出血の生命予後は改善した.
B:血圧140/90 mmHg未満の患者における降圧療法は脳卒中予防に無効である.
C:脳梗塞の発症率は女性のほうが男性より高い.
D:高コレステロール血症は脳梗塞の危険を増す.
E:喫煙により脳梗塞の発症率は上昇する.


問題04

脳梗塞急性期の脳循環動態に関して適切なものはどれか.1つ選べ.

A:血圧が自動調節下限を超えると脳組織はただちに乏血(oligemia)に陥り細胞死に至る.
B:虚血性ペナンブラはmembrane failureは起こっているがtransmission failureに至っていない領域であり,急性期治療のターゲットとなる.
C:虚血性ペナンブラはDWIで陽性でありながらPWIで脳血流低下を認めない領域である.
D:脳梗塞急性期にも脳血流自動調節能は維持されており,積極的な降圧療法が必要である.
E:脳梗塞急性期にはintracerebral steal phenomenonを認めることがあるので脳血管拡張薬の使用は注意する必要がある.


問題05

次の病歴から脳卒中を強く疑う患者はどれか.1つ選べ.

A:60歳女性.一過性に数秒間の失神発作を起こした.四肢の麻痺や構音障害など局所神経症状はない.
B:50歳男性.パチンコ中に突然倒れ,昏睡状態となった.血圧が70/40 mmHg.
C:55歳女性.数カ月前から両手足がしびれるようになり,最近,歩行も困難となった.
D:70歳女性.3日前から右手で箸がうまく持てなくなり,今朝からは右口角から涎が垂れるようになった.
E:35歳女性.昨日から右耳のあたりが痛く,今朝から右目が閉じにくくなり,食べ物が右側からこぼれるようになった.味覚もおかしい.


問題06

rt-PA静注療法の治療適応決定に重要な検査はどれか.2つ選べ.

A:頭部単純CT
B:FLAIR画像
C:拡散強調画像
D:灌流強調画像
E:脳血流SPECT


問題07

NASCET 70%以上の頸動脈狭窄の診断基準として,最も適切なものはどれか.1つ選べ.

A:収縮期最大血流200 cm/秒以上
B:収縮期最大血流300 cm/秒以上
C:拡張末期血流100 cm/秒以上
D:拡張末期血流150 cm/秒以上
E:平均血流200 cm/秒以上


問題08

以下の脳梗塞急性期の治療のうち,randomized controlled trialまたはメタ解析による十分な科学的根拠が示されているものはどれか.2つ選べ.

A:組織プラスミノゲンアクチベーターによる血栓溶解療法
B:ウロキナーゼによる血栓溶解療法
C:ヘパリンによる抗凝固療法
D:血液希釈療法
E:アスピリンによる抗血小板療法


問題09

70歳の男性.日頃から高血圧で診療所に通院中.患者の家族から,患者の「左上肢に急に力が入り難くなったので,これから診療所に連れていってよいか」との相談の電話があった.正しい対応はどれか.1つ選べ.

A:すぐに診療所に来てもらう.
B:しばらく様子を見て,改善しなければ診療所に来てもらう.
C:できるだけ早く往診する.
D:すぐに救急車を呼んでもらう.
E:すぐに整形外科を受診してもらう.


問題10

次のうち脳卒中の病院前救護において不適切な対応はどれか.1つ選べ.

A:脳卒中が疑われる患者を最も近くの救急病院へ搬送する.
B:倉敷病院前脳卒中スケール(KPSS)を脳卒中の重症度の判定に用いる.
C:問診では特に発症時間を正確に聴取する.
D:初期評価は意識と気道,呼吸,循環,神経症候の順に評価する.
E:脳卒中の疑いがあると判断した場合は,速やかに脳卒中治療が可能な医療機関に搬送する.


問題11

脳卒中発症後2時間で来院した患者に対する治療開始前のチェック項目として必須でないものはどれか.1つ選べ.

A:頭部単純CT
B:胸部X線
C:血液検査
D:経胸壁心エコー
E:NIHSSスコア


問題12

以下のうち,誤っているものを1つ選べ.

A:stroke unit(SU)とは,単に「脳卒中患者専用の病棟(病床)」のことである.
B:脳卒中の初期治療をSUで行えば,死亡率の低下,自宅復帰率の上昇,在院日数の短縮効果が得られる.
C:2006年度の診療報酬改定により「脳卒中ケアユニット入院医療管理料」が新設された.
D:日本脳卒中学会医療向上・社会保険委員会が提案する「rt-PA静注療法実施の施設基準」のなかに,「十分な人員及び設備(SCUもしくはそれに準ずる設備)を有すること」という項目が含まれている.
E:わが国において,stroke care unit(SCU),SUを有する急性期施設は増加しているが,地域格差の是正など脳卒中救急医療体制の整備が必要である.


問題13

発症3時間以内の脳梗塞にアルテプラーゼによるt-PA静注療法を行ってもよいのはどれか.1つ選べ.

A:3カ月以内の脳梗塞の既往
B:21日以内の消化管出血
C:血糖400 mg/dl以上
D:血小板100,000/mm3以下
E:75歳以上


問題14

脳梗塞再発予防療法の薬剤選択について正しいものはどれか.1つ選べ.

A:心原性脳塞栓症であるが80歳と高齢で出血合併症の危険性があると判断される場合にはアスピリンを第一選択とする.
B:MR磁化率強調画像にて微小出血が認められる症例には抗血小板薬は投与しない.
C:クロピドグレルもチクロピジンと同系統の抗血小板薬なので,投与開始時には肝機能障害を頻回に監視する必要がある.
D:シロスタゾールはアスピリンとの併用でも出血合併症は増加しない.
E:ワルファリン内服中は緑茶,煎茶の飲用は禁止させる.


問題15

脳血管障害を合併する高血圧の治療で正しいものを2つ選べ

A:一次予防の目標血圧は140/90 mmHg未満である.
B:経静脈t-PA血栓溶解療法前には血圧の高低にかかわらず,降圧治療は原則として行わない.
C:脳梗塞急性期には収縮期血圧>220 mmHgまたは拡張期血圧>120 mmHgでは降圧を考慮する.
D:脳出血急性期では収縮期血圧140 mmHgまで降圧する.
E:慢性期脳卒中再発予防の目標血圧は140/90 mmHg未満である.


問題16

脳卒中の脂質・糖代謝の管理で正しい記載はどれか.1つ選べ.

A:糖尿病患者に対する脳卒中発症防止には,強力な血糖コントロールが重要である.
B:インスリン抵抗改善薬ピオグリタゾンは,脳卒中発症防止に有効である.
C:脳卒中発症防止に対して,高コレステロール血症を合併した場合に,積極的LDLコレステロール低下療法が有効である.
D:冠動脈疾患歴のない虚血性脳血管障害の再発防止には,高用量のスタチンが有効である.
E:脳卒中急性期の積極的な血糖コントロールは,機能予後を改善させる.


問題17

頸動脈ステント留置術(CAS)の適応となるのはどれか.1つ選べ.

A:通常リスクの症候性頸動脈狭窄,狭窄率75%
B:通常リスクの無症候性頸動脈狭窄,狭窄率50%
C:通常リスクの症候性頸動脈狭窄,狭窄率30%
D:頸動脈内膜剥離術(CEA)高危険例の症候性頸動脈狭窄,狭窄率72%
E:頸動脈内膜剥離術(CEA)高危険例の無症候性頸動脈狭窄,狭窄率60%


問題18

頸部頸動脈狭窄症に対する内膜剥離術の適応を決定する時に必要な項目を2つ選べ.

A:術者の周術期合併症率
B:頸動脈のプラーク性状
C:狭窄率
D:大脳半球脳血流量
E:MRI上の梗塞巣の有無


問題19

急性期脳出血の治療について正しいものを2つ選べ.

A:血圧は120 mmHg以下に下げるべきである.
B:降圧目標は前値のおよそ80%とする.
C:降圧効果の強い塩酸ニカルジピンが第1選択薬である.
D:抗潰瘍薬の予防的投与が推奨される.
E:抗てんかん薬の予防的投与が推奨される.


問題20

脳卒中患者におけるリハビリについて誤りはどれか.1つ選べ.

A:利き手が使えず失語を伴う右片麻痺は一見重症にみえるが,実は半側空間無視を伴う左片麻痺のほうがリハ的には予後不良であることが多い.
B:片麻痺の患者では,健常側から車いすに移乗できるようなベッド配置に気をつける.
C:早期離床に関しては,ベッド上での頭位挙上よりも足を降ろして腰掛ける端座位が重要であり,端座位保持ができる患者の歩行獲得率は高い.
D:口腔ケアは嚥下障害のチェックも非常に重要であり,口角からの流涎,口腔内乾燥,声質の変化などは重要なサインである.
E:急性期病院の在院日数が短縮したため,在宅生活をサポートできるように主治医はなるべく早く身体障害手帳申請の診断書を作成すべきである


問題21

以下の記載で正しいのはどれか.1つ選べ.

A:脳卒中の遺伝要因の関与は,CADASILのNOTCH3遺伝子変異などの遺伝性脳卒中のみで認められる.
B:脳梗塞の遺伝的リスク多型をもつ人では,ほぼ確実に脳梗塞を発症する.
C:経口抗凝固薬のワルファリンでは,VKORC1CYP2C9の2つの遺伝子上の多型を調べることにより個人にあった必要量が推定できる.
D:今後,ゲノム研究が進み,すべての遺伝的リスクが発見されれば,脳卒中のメカニズムはすべて遺伝的要因だけで説明できる.
E:ヒトゲノム上の遺伝子多型は共通であるため,海外で行われているゲノム研究で見つかった遺伝子多型のリスクは,日本人にも必ず共通のリスクとして存在する.


問題22

無症候性脳血管障害について正しいものはどれか.1つ選べ.

A:症候を欠く血管性脳病変を示し,血管自体の病変は含めない.
B:脳梗塞患者に発見された,責任病巣以外の梗塞も含まれる.
C:MRIで認められた大脳深部白質にびまん性に広がる病変(T2高信号)を含める.
D:MRIのT2強調画像は無症候性脳出血の発見に有用である.
E:無症候性脳梗塞患者には速やかに抗血小板薬を投与する.


問題23

次のうち,脳動脈解離に特徴的な画像所見として誤っているものはどれか.1つ選べ.

A:pearl and string sign
B:retention of the contrast
C:intimal flap
D:多発性ビーズ状(数珠状)狭窄
E:hyperintense sign(MRI T1WI)


問題24

急性期脳梗塞に対してt-PAを用いた経静脈的血栓溶解療法を実施する場合に,本邦では発症から何時間以内に使用すべきか.1つ選べ.

A:3時間
B:4.5時間
C:6時間
D:8時間
E:12時間


問題25

脳梗塞急性期の脳保護療法として「行うように勧められる(グレードB)」治療はどれか.1つ選べ.

A:アルテプラーゼ
B:エダラボン
C:低脳温療法
D:骨髄幹細胞移植
E:G-CSF


問題26

脳梗塞急性期において,良好な脳神経機能の回復を促進するために,重要な事項はどれか.2つ選べ.

A:脳浮腫改善・炎症反応抑制のための,副腎皮質ステロイドの投与.
B:幹細胞の動員・神経保護を目的とした,G-CSF(グラン®)の投与.
C:感染症の予防.
D:早期からのリハビリテーションの開始.
E:速やかな降圧治療.


問題27

インフォームド・コンセントについて誤っているものを1つ選べ.

A:治療方針の説明がすなわちインフォームド・コンセントである.
B:インフォームド・コンセントは医療従事者の責務である.
C:当初,予定していた範囲を超える行為を行うときは,改めてインフォームド・コンセントが必要である.
D:患者が理解できていないようであれば,繰り返しわかりやすく説明する.
E:患者の病状が緊急の医療処置を必要とする場合には,インフォームド・コンセントが得られずに処置を行ってもやむを得ない.


(解答は本誌掲載)