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今月の主題

「理解のための24題」


問題01

次のうち,肺血栓塞栓症について正しいものはどれか.2つ選べ.

A:癌,肥満は肺塞栓症発症の危険因子である.
B:黄色人種と白人の発症頻度には差がない.
C:周術期肺塞栓症に対する理学的予防の効果は明らかでない.
D:外科入院患者に比べ,精神科入院患者における肺塞栓症発症はきわめて少ない.
E:肺塞栓症の診断数は最近10年に限っても増加している.


問題02

急性肺血栓塞栓症と関連の深い静脈を2つ選べ.

A:ヒラメ筋静脈
B:大腿静脈
C:小伏在静脈
D:腓腹筋静脈
E:内腸骨静脈


問題03

次の静脈血栓塞栓症の危険因子のなかで強度が弱いのはどれか.1つ選べ.

A:肥満
B:多発外傷
C:股関節骨折
D:麻痺を伴う脳卒中
E:静脈血栓塞栓症の既往


問題04

以下の状態でアンチトロンビン活性が低下していれば,先天性アンチトロンビン異常症が疑われるものはどれか.1つ選べ.

A:肝障害
B:播種性血管内凝固(DIC)
C:敗血症
D:ワルファリン投与例
E:L-アスパラギナーゼ投与例


問題05

急性肺塞栓症の病態生理について,誤っているものを2つ選べ.

A:肺動脈の30~50%以上が急激に閉塞すると肺循環の破綻が起きる
B:生理的に代償可能な肺動脈圧は平均肺動脈圧40 mmHgまでである
C:下肢深部静脈血栓を認めないことも多い.
D:体血圧90 mmHg以下は予後不良である.
E:下肢深部静脈血栓は体表面からは観察できないので造影CTが必要である.


問題06

エコノミークラス症候群について,誤っているものはどれか,1つ選べ.

A:航空機旅行だけでなく,電車や船,車などの旅行でも起きることがある.
B:航空機旅行に伴うものの報告が多く,これには航空機客室内の環境が関与していると考えられている.
C:高齢者ほど多く,また旅行が長時間になるほどリスクが高くなる.
D:旅行直後の発症が多いが,旅行後2週間以上経過してから発症することもある.
E:予防には足の運動,水分摂取のほか,弾性ストッキング,低分子ヘパリンの注射,アスピリンの内服が勧められている.


問題07

急性肺血栓塞栓症の診断に関して,誤っているものはどれか.1つ選べ.

A:診断されない場合の死亡率は約30%と高い.
B:呼吸困難や胸痛があるときには,徐脈を認めやすい.
C:心電図の急性右室負荷所見は,発症早期の記録ほどみられやすい.
D:血行動態に影響する病態では,右室拡大を認める.
E:Wellsスコアは臨床所見から,本症の診断確率を評価する指標である.


問題08

次の検査所見の組み合わせのうち,急性肺血栓塞栓症として最も典型的なものはどれか.1つ選べ.

A:Dダイマー 0.5 mg/ml,PaO2 90 Torr,PaCO2 40 Torr,pH 7.40
B:Dダイマー 0.5 mg/ml,PaO2 50 Torr,PaCO2 50 Torr,pH 7.30
C:Dダイマー 2.5 mg/ml,PaO2 90 Torr,PaCO2 40 Torr,pH 7.40
D:Dダイマー 2.5 mg/ml,PaO2 50 Torr,PaCO2 30 Torr,pH 7.60
E:Dダイマー 2.5 mg/ml,PaO2 50 Torr,PaCO2 50 Torr,pH 7.20


問題09

急性肺血栓塞栓症の心電図所見として一般にみられないものはどれか.1つ選べ.

A:SⅠQIIITIIIパターン
B:房室ブロック
C:右側胸部誘導陰性T波
D:時計方向回転
E:ST部分上昇


問題10

次のうち,急性肺塞栓症でみられるエコー所見で正しいのはどれか.2つ選べ.

A:心エコーにおける右心負荷像
B:下肢静脈エコーでの呼吸性変動
C:もやもやエコー像
D:良好なミルキング反応
E:プローブでの下肢静脈非圧縮所見


問題11

急性血栓塞栓症診断におけるCTの利点といえないものは次のうちどれか.1つ選べ.

A:区域性血栓そのものを描出・同定できる.
B:近位部深部静脈血栓症も同時に診断できる.
C:ほかの急性胸部疾患も鑑別可能である.
D:微小塞栓を同定できる.
E:右心負荷を判定できる.


問題12

46歳の男性.6時間前からの胸痛を主訴に来院.血圧112/70 mmHg,心拍数90回/分.胸部造影CT検査にて急性肺血栓塞栓症と診断された.臨床的な重症度判定のために追加すべき検査はどれか.2つ選べ.

A:Dダイマー
B:ループスアンチコアグラント
C:肺血流シンチグラフィ
D:心エコー
E:心筋トロポニン


問題13

急性肺血栓塞栓症における抗凝固療法について誤っているものはどれか.1つ選べ.

A:禁忌例を除き急性期のヘパリン投与は全例でされるべきである.
B:アンチトロンビンが不足している症例ではヘパリンの抗凝固作用が得られにくい.
C:出血などの合併症に際しヘパリンの効果を中和するには,プロタミン硫酸塩の投与が効果的である.
D:明らかな血栓性素因を有さない特発性症例では,6カ月以上の抗凝固療法がガイドラインで推奨されている.
E:慢性期の抗凝固療法においてワルファリンが使用できない場合,アスピリンは有効な代替治療薬である.


問題14

血栓溶解療法の適応はどれか.1つ選べ.

A:脳出血で入院した患者における広汎型肺塞栓症
B:血圧と心エコー図が正常の肺塞栓症
C:1カ月前に出血性胃潰瘍の既往があり低血圧が遷延する肺塞栓症
D:心エコー図で右室収縮期末径が25 mmの肺塞栓症
E:深部静脈血栓症で心エコー図が正常な例


問題15

肺血栓塞栓症のカテーテル治療につき誤っているものはどれか.1つ選べ.

A:rt-PAを用いて血栓溶解を行った.
B:ショック・インデックスが1以上のものにカテーテル治療を行った.
C:血栓破砕・吸引療法の治療効果は,外科的血栓摘除術に匹敵する.
D:本邦では,Greenfield deviceを用いて血栓吸引療法を行う.
E:一般的合併症として,末梢塞栓がみられる.


問題16

次のうち誤っているものはどれか.2つ選べ.

A:急性肺血栓塞栓症の大部分は下肢の深部静脈でできた血栓によって発症する.
B:急性肺血栓塞栓症の初期治療においては,血栓に対する治療と呼吸循環管理が第一であり,再発予防については状態が安定してから考えるべきである.
C:急性肺血栓塞栓症において下大静脈フィルターを使用する場合,原則として永久フィルターを使用すべきである.
D:急性肺血栓塞栓症では,特に発症早期に病態が悪化することが多い.
E:下大静脈フィルターは再発予防に有効である反面,合併症を起こす可能性もあるため,その適応については個々の症例で十分検討する必要がある.


問題17

肺塞栓除去術について正しいものを1つ選べ.

A:末梢性の肺血栓塞栓症が適応である.
B:脳血管障害例では禁忌である.
C:発症後なるべく時間をおいてから塞栓除去術を行ったほうが手術成績は良い.
D:術後は下大静脈フィルターを挿入し,抗凝固療法は行わない.
E:急性肺血栓塞栓症によるショックが遷延する症例では術前にPCPS導入を考慮する.


問題18

次のうち,抗凝固療法を行ってはいけない症例はどれか.1つ選べ.

A:人工股関節全置換術後
B:肺炎を合併した進行癌
C:脊髄損傷慢性期
D:骨盤骨折急性期
E:胃癌術後


問題19

下記の下肢深部静脈血栓症に対する理学的予防法のなかで,最も効果の少ないものはどれか.1つ選べ.

A:力強い足関節背底屈運動
B:力強い下腿のマッサージ
C:15 cmの下肢挙上
D:力強い足趾のグーパー運動
E:深呼吸


問題20

抗凝固薬に関する記載のなかで誤りはどれか.1つ選べ.

A:ワルファリンは,血液凝固第II,VII,IX,X因子の合成を阻害する.
B:未分画ヘパリンは,トロンビンとXa因子を1:2で阻害する.
C:エノキサパリンは,未分画ヘパリンよりヘパリン誘発性血小板減少症を起こしにくい.
D:フォンダパリヌクスは,アンチトロンビンを介して間接的にXa因子を阻害する.
E:リバロキサバンは,直接的にXa因子を阻害する.


問題21

静脈血栓塞栓症のリスクとして最も頻度の高い疾患を1つ選べ.

A:慢性閉塞性肺疾患(COPD)
B:抗凝固薬を投与していない,下肢の麻痺を伴う脳梗塞後
C:抗凝固薬を投与していない,胃癌の開腹手術の術後
D:抗凝固薬を投与していない,人工膝関節置換術の術後
E:抗凝固薬を投与していない,帝王切開術の術後


問題22

わが国の慢性肺血栓塞栓症について正しいのはどれか?

A:性差は認められない.
B:約半数で血液凝固異常を認める.
C:BMPRIIの遺伝子異常を認めるものがある.
D:肺血管抵抗と血栓による肺血管閉塞率の相関は不良である.
E:肺細小動脈に病変はみられない.


問題23

慢性肺血栓塞栓症の診断と治療方針確定に最も必要性の低い検査はどれか.一つ選べ.

A:心エコー・ドップラ
B:下肢静脈エコー
C:肺血流シンチグラム
D:造影胸部大血管CT
E:肺動脈造影・右心カテーテル検査


問題24

慢性肺血栓塞栓症に対して通常施行されない治療法はどれか.1つ選べ.

A:酸素補充療法
B:血栓摘除
C:抗凝固療法
D:血管拡張療法
E:右心不全治療


(解答は本誌掲載)