HOME雑 誌medicina誌面サンプル 45巻7号(2008年7月号) > 今月の主題「理解のための23題」

今月の主題

「理解のための23題」


問題01

後期高齢者の入院診療を行ううえで,K100正しいといえない項目はどれか.

A:ADL,認知能の評価とその変化を評価することが重要である.
B:入院早期より,退院後に向けた評価と準備を行う.
C:後期高齢者では,侵襲的処置は適応外なので,なるべく早くDNR(do not resuscitate)の了解をとる.
D:老年症候群(せん妄,転倒,低栄養など)のリスク評価を行い,予防的処置がとれるものはとる.
E:安全に支障ある場合は拘束もやむを得ないが,その必要性を頻回に見直す.


問題02

高血圧,糖尿病に対して内服治療を行っている67歳,女性.一昨日に水様下痢が1日3行程度あった.腹痛・発熱はなかったが,食欲低下あり,経口摂取が減っていた.本日昼頃より突然,呂律が回らなくなり,すぐに眠り込んでしまうようになったため,心配した家族に連れられ,受診.受診時JCS10/分,体温36.7℃,血圧143/81mmHg,脈拍88/分,呼吸数20/分,瞳孔正円同大,対抗反射迅速,眼球運動正常,顔面左右差なし,舌挺出正常,四肢Barre´徴候陰性,Babinski両側陰性.最初に行うべきものとして正しいのはどれか.1つ選べ.

A:脳MRI
B:腰椎穿刺
C:血糖測定
D:頭部CT
E:インスリン投与


問題03

非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)で,COX‐2の選択性が最も強い薬物をどれか,1つ選べ.

A:イブプロフェン
B:インドメタシン
C:セレコキシブ
D:ジクロフェナク
E:アスピリン


問題04

加齢による認知機能低下との区別において,認知症の診断で,最も重要な特徴はどれか.1つ選べ.

A:記憶障害
B:年齢
C:抑うつ症状
D:日常生活への支障
E:脳MRIでの異常所見


問題05

以下のうち,正しいものはどれか.1つ選べ.

A:自分が痛みを伴う末期状態(死期が1カ月以内)になった場合,「心肺蘇生措置はやめたほうがよい,やめるべきである」と考える人は多い.
B:国民の多くが,自分が意思決定できなくなった状況では担当医に方針を決めてほしいと思っている.
C:高齢者のICU治療は,医療コスト上無駄であるエビデンスが十分ある.
D:寝たきり老人の重症肺炎に挿管・人工換気の適応はない.
E:リビングウィルが普及すれば,高齢者ICU治療は削減できることが期待できる.


問題06

誤嚥性肺炎の予防で,通常,どの患者にも適応したほうがよい予防策はどれか.

A:30゜頭部の挙上
B:H2ブロッカーやプロトンポンプインヒビターの使用を控える.
C:経管栄養でなく,胃瘻(percutaneous endoscopic gastrostomy:PEG)に変える.
D:抗菌薬で予防する.


問題07

後期高齢者(75歳以上),超高齢者(80歳以上)の血圧治療について,正しいものはどれか.

A:拡張期血圧だけ90mmHg未満にならないよう注意すればよい.
B:若年者と同様に,外来血圧で140/90mmHg未満を降圧目標とする.
C:後期高齢者の降圧療法で利尿薬の使用はなるべく避ける.
D:超高齢者の高血圧治療は,脳卒中の発症を抑制することが期待できる.
E:超高齢者の降圧療法で利尿薬の使用はなるべく避ける.


問題08

83歳,女性.15年来の2型糖尿病.近医でグリベンクラミド10mgを処方されているが,間食がやめられず,最新のHbA1c8.3%とコントロール不良.この2日間,感冒症状のため食事量が通常の半分以下であったが,SU薬は通常通り服用.元気がなく臥床がちとなったため,家族に伴われて来院.簡易血糖測定器での血糖値40mg/dl,50%ブドウ糖注20ml静注5分後の血糖値150mg/dl.しっかりと受け答えができるようになった.正しいものはどれか.2つ選べ.

A:ブドウ糖液静注で症状が改善したので,帰宅可とした.
B:現時点でインスリン導入に関して考慮する必要はない.
C:5%ブドウ糖液250mlを2時間で点滴し,帰宅可と指示した.
D:低血糖が遷延する可能性があることを説明し,入院とした.
E:本人と家族にシックデイ時の対応を指示した.


問題09

骨粗鬆症の治療にあたっての目的や薬物治療開始の基準として,K100ブラックイエローマゼンタシアンDIC231誤っているものを1つ選べ.

A:わが国では骨折危険因子として,①低骨密度,②既存骨折,③年齢に関するエビデンスが確立している.
B:薬物治療開始基準として骨密度を用いる場合は,腰椎,または大腿骨BMDを用いる.
C:脆弱性骨折のない場合は,骨密度(BMD)が平均骨密度(yong adult mean:YAM)70%未満を薬物治療開始基準とする.
D:脆弱性既存骨折が存在する場合の薬物治療開始基準は,男女とも年齢については50歳以上を対象とする.


問題10

75歳,女性.20年以上関節リウマチの治療を近医で受けている.自宅で一人暮らしをしていたが,ガラスが割れる音がしたので隣家の人が様子を見に行った.患者が左前腕を怪我しており,かなりの出血をしていた.病院に連れて行こうとしたが,本人が拒否して動こうとしないため,救急車で当院来院となった.その隣人からの情報によると,患者は両膝障害のため,日常生活に支障をきたすようになり,在宅介護の手続きを申請しているところであった.夫とは3年前に死別し,2人の娘は結婚後離れて暮らしている.診察をしたところ,左手根部にガラスの破片で傷つけたと思われる5cmほどの傷があり,縫合を必要とした.患者の態度が固くてなかなか会話に応じない.まずは,確認したい患者の症状はどれか.1つ選べ.

A:気分の日内変動
B:記銘力の低下
C:ADLの低下
D:意欲の低下
E:自殺念慮


問題11

以下の疾患のなかで,視力障害よりも視野障害が主訴となる疾患はどれか.1つ選べ.

A:老視
B:白内障
C:緑内障
D:加齢黄斑変性
E:糖尿病網膜症


問題12

せん妄が認知症と最も大きくK100ブラックイエローマゼンタシアンDIC231異なる点はどれか.1つ選べ.

A:抑うつ症状
B:記憶障害,失見当識などの認知障害
C:幻覚,錯乱などの精神症状
D:急性発症,症状の短期間変動
E:不眠などの睡眠障害


問題13

後期高齢者の嚥下障害に対する診断・治療について,K100ブラックイエローマゼンタシアンDIC231誤っているものを選べ.

A:誤嚥性肺炎の予防として,口腔ケアは有効である.
B:誤嚥性肺炎を繰り返す患者には,嚥下評価に先立ちまず胃瘻を造設し,積極的な栄養管理を行う.
C:嚥下障害の評価に用いる嚥下造影は単に障害の評価だけでなく,摂食条件の設定にも有用である.
D:胃瘻造設後も経口摂取の可能性があり,本人の希望もある場合は,摂食・嚥下リハビリテーションの適応がある.
E:胃瘻を造設した後も,誤嚥性肺炎の可能性を考慮して,注入時の体位や注入物の形状など適宜工夫する必要がある.


問題14

下記の尿失禁の種類のなかで,尿の排出障害が原因と思われるものを1つ選べ.

A:腹圧性尿失禁
B:全尿失禁
C:切迫性尿失禁
D:機能性尿失禁
E:溢流性尿失禁


問題15

高齢者の便秘の治療で正しいものはどれか.1つ選べ.

A:高齢者では一次性便秘が多いので,年齢も考慮して原因検索は制限する.
B:生活指導は困難なので,薬物療法を優先する.
C:習慣性ができるので,浣腸の使用は禁忌である.
D:状況に応じては刺激性下剤を薬物療法の第一選択薬としてもよい.
E:食物繊維の増量は生理的なので,高齢者でも全員に行う.


問題16

精神生理性不眠を治療するうえで有効な方法はどれか.1つ選べ.

A:光線療法で強い光を朝浴びる.
B:決まった時間に眠くなくてもベッドに行くようにする.
C:眠くなったときにだけベッドに行くように指導する.
D:昼寝で睡眠時間を補うように指導する.
E:寝床に入って眠れなくても最低1時間は寝床に居続けるように指導する.


問題17

後期高齢者医療制度でK100ブラックイエローマゼンタシアンDIC231誤っているのはどれか.1つ選べ.

A:後期高齢者医療制度は,75歳以上の高齢者が対象となる.
B:後期高齢者医療制度では,登録した診療所以外の医療機関も受診することができる.
C:後期高齢者医療制度は,すべての被保険者が保険料を支払うことになる.
D:後期高齢者診療料では医薬品も包括支払いの対象となる.
E:後期高齢者医療制度では終末期における患者の相談支援に対しても診療報酬が設定された.


問題18

後期高齢者において,低栄養を評価する指標として,K100ブラックイエローマゼンタシアンDIC231適切ではないものはどれか.1つ選べ.

A:血清アルブミン濃度
B:血清レチノール結合蛋白質濃度
C:血清γ‐グロブリン濃度
D:血清トランスフェリン濃度
E:血清プレアルブミン濃度


問題19

以下の記述でK100ブラックイエローマゼンタシアンDIC231誤っているものはどれか.1つ選べ.

A:高齢女性の性の問題は,医師に相談されることは少ない.
B:後期高齢女性の性交痛にエストロゲンは無効である.
C:骨盤底筋群のゆるみは性機能障害の原因となる.
D:高齢女性が性行為から離れる大きな理由は,性的関心の低下である.


問題20

高齢者と自動車運転に関して,正しい記述は以下のどれか.1つ選べ.

A:改正道交法により,認知症のみが運転免許の制限を受けるようになった.
B:医師の判断により,一定の疾患をもつ患者の免許が直接的に制限可能となった.
C:認知症高齢者の多くは,免許更新を断念している.
D:医師は認知症と診断した場合,免許センターに通報しなければならない.
E:認知症患者は,健常高齢者と比較して交通事故を起こす確率が高い.


問題21

次の歩行補助具のうち,最も免荷の機能が高いものはどれか.1つ選べ.

A:一本杖
B:松葉杖
C:シルバーカー
D:プラットホームクラッチ
E:ロフストランドクラッチ


問題22

補聴器の適合に関して,正しいものはどれか.2つ選べ.

A:難聴を訴える高齢者には,補聴器の適合をまず考える.
B:補聴器の適応の判断は聴力だけでなく,本人の意思を考慮して行う.
C:多くの場合,難聴があっても補聴器を装用することで健聴者と同程度の聞こえが得られる.
D:補聴器を装用している難聴者と会話する場合は,ゆっくり,はっきり話すように注意する.
E:補聴器を使用しているにもかかわらず言葉の聞き取りが悪い場合は,ボリュームを上げるとよい.


問題23

88歳,女性.非代償性心不全と誤嚥性肺炎で入院した.回復したときに,「もうお迎えも近いと思うので,準備をしておきたいのですが.どうせあと何年も生きられないんでしょう? また起こったら,あんまり苦しい治療は受けずにそのまま逝かせてほしいんですけど,そのようにお願いできますか?」と尋ねられた.このようなときにどのように答えるのがよいか,妥当と思われるものを1つ選べ.

A:「そんな弱気でどうするんです.縁起でもない.まだまだお元気で長生きできますよ」と安心させて励ます.
B:「何年生きられるかなんて,誰にもわかりませんよ.私だって明日交通事故で死ぬかもしれないし」と,余命告知の難しさを説明する.
C:高齢者うつ病のスクリーニングをし,精神科に紹介する.
D:近親者を呼び,予後の説明をしておく.
E:座ってじっくり話を聴き,本人の望む最期の迎え方をカルテに記載しておくとともに,Living Willや医療代理人の話をし,事前指示書を渡す.


(解答は本誌掲載)