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今月の主題

「理解のための29題」


問題01

炎症性腸疾患の緩解維持療法として,誤っているものはどれか.

A:インフリキシマブ(infliximab)
B:アザチオプリン(azathiopurin)
C:成分栄養療法
D:副腎皮質ステロイド
E:5-アミノサリチル酸製剤


問題02

炎症性腸疾患の病態について,正しいものはどれか.1つ選べ.

A:喫煙者は潰瘍性大腸炎を発病しやすい.
B:NOD2は細菌細胞壁の認識に関与している.
C:Crohn病において抗結核療法は有効である.
D:潰瘍性大腸炎の炎症は,免疫学的にはCrohn病と共通のTh1タイプの反応である.
E:炎症性腸疾患の発病には,自然免疫と獲得免疫のそれぞれに異常がある必要がある.


問題03

過敏性腸症候群の病態として誤っているものを1つ選べ.

A:脳腸相関の異常がみられる.
B:ストレスによって症状の増悪がみられる.
C:患者の大腸における痛覚閾値は低下する.
D:細菌による感染性腸炎後に発症することが多い.
E:セロトニン制御は病態解明に重要である.


問題04

炎症性腸疾患(IBD)の発症リスクを上昇させる因子として,最も確実なものはどれか.1つ選べ.

A:不衛生な生活環境
B:近親者のIBD罹患
C:脂肪摂取
D:虫垂切除歴
E:喫煙


問題05

次のうち正しいものはどれか.2つ選べ.

A:潰瘍性大腸炎はCrohn病に比して中高年の発症も多く,下痢に伴う血便または粘血便で発症することが多い.
B:Crohn病の確定診断に内視鏡検査は必須である.
C:過敏性腸症候群は大腸内視鏡検査で異常を認めなければ診断可能である.
D:過敏性腸症候群は日本における有病率は10~20%と報告され,消化器症状で外来受診する患者の約3割を占めると言われている.
E:アメーバ赤痢の確定診断は血性抗体測定である.


問題06

Crohn病に特徴的でない所見はどれか.1つ選べ.

A:難治性痔瘻
B:縦走潰瘍
C:敷石像
D:上部消化管と下部消化管の両者に認められる不整形潰瘍またはアフタ
E:乾酪性類上皮肉芽腫


問題07

カンピロバクター腸炎と潰瘍性大腸炎の比較で誤っているものを1つ選べ.

A:発症はどちらも急激である.
B:カンピロバクター腸炎は血便があっても下痢が主体であり,潰瘍性大腸炎と異なる.
C:カンピロバクター腸炎は発熱があっても1~2日で解熱するが,潰瘍性大腸炎で発熱がある場合は治療をしなければ持続する.
D:カンピロバクター腸炎の病変は非連続であるが,潰瘍性大腸炎は連続性である.
E:回盲弁上の大きな潰瘍はカンピロバクター腸炎の特徴である.


問題08

次のうち正しいものはどれか.1つ選べ.

A:過敏性腸症候群は器質性疾患の除外診断で診断する.
B:機能性腸障害の診断に心理テストは有用である.
C:便形状はBristol便形状スケールで判定する.
D:Rome IIIには過敏性腸症候群の乳幼児の診断基準がある.
E:呑気症は機能性腹部膨満に含まれる.


問題09

Crohn病の画像所見として典型的でないのはどれか.

A:アフタ
B:輪状潰瘍
C:縦走潰瘍
D:敷石像
E:瘻孔


問題10

消化管壁の知覚を評価する方法はどれか.1つ選べ.

A:超音波検査
B:腸音図検査
C:バロスタット法
D:内圧測定法
E:放射線非透過マーカー法


問題11

診療ガイドラインに関する記載で正しいものはどれか.1つ選べ.

A:ガイドラインは科学的根拠に基づいて作成され普遍的に正しい.
B:周到に作成された診療ガイドラインには当然従わなければならない.
C:ガイドラインは医師が用いるものであり,患者が目にすることは診療現場の混乱を招く.
D:医療訴訟の法的根拠としてガイドラインが有用である.
E:よいガイドラインがあっても,医師の臨床能力が欠けると健全な診療はできない.


問題12

ステロイドを継続的に服用する潰瘍性大腸炎患者に,しばしば合併し病状の重症化やステロイド抵抗性などの難治化に深く関係する感染症を1つ選べ.

A:赤痢アメーバ
B:カンピロバクター
C:サルモネラ
D:結核
E:サイトメガロウイルス


問題13

本邦におけるCrohn病に対する内科的治療法として誤っているものはどれか.1つ選べ.

A:緩解導入療法として成分栄養療法が行われる.
B:infliximab(インフリキシマブ)は緩解導入療法のみならず,緩解維持療法としても有効である.
C:インフリキシマブの投与に際しては,結核菌感染を否定することが必要である.
D:6-メルカプトプリン(6MP)とアザチオプリン(AZA)の投与量は欧米に比べ少量でもコントロール可能となることが多い.
E:6MP/AZAは主として緩解導入療法として使用される.


問題14

炎症性腸疾患の皮膚,関節,肛門病変について誤っているものはどれか.2つ選べ.

A:結節性紅斑は下腿に圧痛,自発痛を伴う拇指頭大から鶏卵大の皮下硬結性紅斑である.
B:壊疽性膿皮症は皮膚に有痛性穿掘性潰瘍を多発する原因不明の慢性再発性疾患であり,炎症性腸疾患のみに認められる.
C:強直性脊椎炎とは40歳以下の患者に多く認められ,主として仙腸関節に炎症が生じる疾患であり,血液学的にリウマトイド因子が陽性で,HLA-B27は陰性である.
D:炎症性腸疾患に伴う関節炎症状にスルファサラジンが有効であると考えられており,投与すべき薬剤の1つである.
E:Crohn病患者で長期間痔瘻を有する場合,痔瘻癌を合併する例がある.


問題15

潰瘍性大腸炎,Crohn病で緊急手術を考慮すべき病態はどれか.2つ選べ.

A:潰瘍性大腸炎,ステロイド依存例
B:潰瘍性大腸炎,low grade dysplasia合併例
C:潰瘍性大腸炎,プレドニゾロン強力静注療法7日で改善しない重症例
D:Crohn病,3日間連続の輸血後も持続する大量出血例
E:Crohn病,少量の腸液排出を伴う腸管皮膚瘻合併例


問題16

60歳の女性.1年前より,1週間に1回しか便通がなくなり,兎糞状の便を毎回排泄するようになった.排便の度に力まないと出ず,残便感が強い.腹痛と腹部不快感はほとんどない.血液生化学検査,尿検査,便潜血反応,腹部X線検査,腹部超音波検査,大腸内視鏡検査はすべて正常である.正しい診断はどれか.1つ選べ.

A:過敏性腸症候群
B:機能性腹部膨満
C:機能性ディスペプシア
D:非特異機能性腸障害
E:機能性便秘


問題17

次のなかで過敏性腸症候群(IBS)について正しいものはどれか.2つ選べ.

A:大腸のみの機能的疾患である.
B:患者の腸管を生検しても異常が全くない.
C:腸管に器質的異常を伴わない.
D:患者が救急外来を受診することはない.
E:大腸炎後に生ずる場合もある.


問題18

良好な医師-患者関係の構築のために必要な医師の態度として誤っているのはどれか.1つ選べ.

A:開放型の質問をする.
B:病気に対する情報を与える.
C:生活態度を指示する.
D:共感的に話を聴く.
E:患者の質問の意図を尋ねる.


問題19

潰瘍性大腸炎合併大腸癌について誤っているのはどれか.1つ選べ.

A:罹病期間が長いほど癌発生率が高くなる.
B:炎症範囲が広い方が癌発生率が高い.
C:一般大腸癌より,びまん浸潤型の頻度が高い.
D:前癌病変としてdysplasiaが重要と考えられている.
E:外科手術の相対的適応とされている.


問題20

次の中で正しいものを1つ選べ.

A:回腸嚢炎の治療においてまず試みられるべき第一選択薬はメサラジンである.
B:潰瘍性大腸炎患者と家族性大腸腺腫症患者の間で回腸嚢炎の発症率に差はない.
C:原発性硬化性胆管炎は大腸全摘術後に改善することが多い.
D:直腸粘膜抜去を伴う回腸肛門吻合術後においても,遺残直腸粘膜を背景とした癌化が起こりうる.
E:回腸肛門(管)吻合術後の妊娠例においては,帝王切開による分娩が推奨される.


問題21

インフリキシマブ投与中に患者が胸内苦悶を訴え始めた.まず行うべきことはどれか.1つ選べ.

A:抗ヒスタミン薬を投与する.
B:アセトアミノフェンを投与する.
C:抗ヒスタミン薬とアセトアミノフェンの2剤を投与する.
D:ハイドロコーチゾンを静脈内投与する.
E:インフリキシマブ投与を中断する.


問題22

炎症性腸疾患(IBD)について正しいものはどれか.1つ選べ.

A:食事制限はすべてのIBD症例に必要であり,低脂肪・低残渣食の徹底を行う.
B:IBDでは必ず禁酒を指導する.
C:服薬指導はステロイドと免疫調節剤の指導をきちんと行えば十分である.
D:禁煙はすべてのCrohn病症例の経過を改善することが期待できる.
E:潰瘍性大腸炎では,すべての成人症例に喫煙を勧める.


問題23

男性不妊の原因となりうる薬剤はどれか.1つ選べ.

A:サラゾスルファピリジン(SASP)
B:メサラジン(5-ASA)
C:プレドニゾロン(PSL)
D:シクロスポリン(CyA)
E:アザチオプリン(AZA)


問題24

臨床における2次情報の利用法として誤っているのはどれか.1つ選べ.

A:EBMによる診療は個人の経験と科学的根拠を統合するものである.
B:EBMの実践のためには原著論文を常に参照しなければならない.
C:診療ガイドラインやシステマティック・レビューは2次情報である.
D:Mindsは,インターネットを通して診療ガイドラインをはじめとする質の高い医療情報を無料で提供している.
E:企業資金によるシステマティック・レビューや診療ガイドラインは,介入の有効性や推奨にバイアスが生じている可能性がある.


問題25

小腸潰瘍について正しいものはどれか.1つ選べ.

A:Crohn病では腸間膜対側に縦走潰瘍をみる.
B:非特異性多発性小腸潰瘍症では瘢痕萎縮帯を伴う輪状潰瘍をみる.
C:腸型Behçet病では腸間膜付着側対側に打ち抜き潰瘍をみる.
D:NSAIDs潰瘍は胃・十二指腸よりも回盲部に好発する.
E:エルシニア腸炎ではPeyer板対側にびらんを形成する.


問題26

炎症性腸疾患に対する新規治療製剤について,正しいものを1つ選べ.

A:抗TNF-α抗体インフリキシマブ(infliximab)は完全ヒト型モノクローナル抗体製剤である.
B:新規抗TNF-α抗体adalimumabでは投与時反応の発生が課題である.
C:α4インテグリン阻害薬は活性化リンパ球の浸潤抑制を目指す薬剤である.
D:ヒト型抗TNF-α抗体certolizumabはIgG4型抗体で補体活性化傷害効果を生じる.
E:MNL-02はα4β7インテグリンを阻害し,そのリガンドはVCAM-1である.


問題27

過敏性腸症候群(IBS)と腸内細菌との関連で正しいものはどれか.1つ選べ.

A:IBSの腸内細菌叢の変化として,ビフィズス菌の増加を認める.
B:感染後IBSでは,神経内分泌細胞には変化を認めない.
C:感染後IBSは,特定の細菌感染との関連が示唆されている.
D:プロバイオティクスには抗菌作用,抗炎症作用がある.
E:プロバイオティクスのIBSへの効果は確立されている.


問題28

重症潰瘍性大腸炎をステロイド強力静注療法で治療中に肺炎を合併した.病因菌として最も可能性の低いものはどれか.1つ選べ.

A:ノカルジア
B:マイコプラズマ
C:MRSA
D:ニューモシスチス
E:アスペルギルス


問題29

27歳の男性.便秘と腹痛を主訴に来院.半年前に職場の対人関係に負担を感じ休職し,その頃から便秘傾向を認め,腹痛と腹部膨満感が出現し徐々に増悪してきた.腹痛は排便で改善する.下部消化管内視鏡では異常を認めない.この患者でみられるのはどれか.

A:黒色便
B:灰白色便
C:粘血便
D:脂肪便
E:兎糞様便


(解答は本誌掲載)