HOME雑 誌medicina誌面サンプル 45巻4号(2008年4月号) > 今月の主題「理解のための25題」

今月の主題

「理解のための25題」


問題01

次の文章で正しいものを2つ選びなさい.

A:急性冠症候群(ACS)の胸痛は,前胸部痛が多いが,心窩部痛のこともある.
B:狭心症は,問診のみでは診断を誤ることが多い.
C:Stanford A型の急性大動脈解離(AAD)では,血圧の左右差が重要な診断の手がかりになるが,その頻度はかなり高く,約60%の例に認められる.
D:急性肺塞栓症(PE)では,胸痛,呼吸困難,血痰が主な症状であるが,失神することもある.
E:冠攣縮性狭心症は,睡眠中や早朝安静時に発生し,労作で誘発されることはない.


問題02

次の選択肢のうち,正しいものはどれか,2つ選べ.

A:脈の欠落を自覚するタイプの動悸は,早急な治療を必要とする.
B:めまいを訴える患者のアプローチとして重要なのは,中枢性疾患と心原性疾患の除外である.
C:失神の原因で最も多いものは,心原性失神である.
D:動悸の約16%は原因不明である.
E:若年者の失神は,全例で頭部CTの適応である.


問題03

呼吸困難に関する記載のうち,正しいものはどれか.2つ選べ.

A:心疾患があり,軽度の運動制限を要し,安静時には愁訴はないが,普通の日常生活で疲労,動悸,息切れ,狭心痛などを起こすことがある状態は,New York Heart Association(NYHA)分類第3度である.
B:急性心筋梗塞の患者で肺水腫を伴い,肺野の50%以上で湿性ラ音聴取する重症心不全は,Killip分類第3度である.
C:会話,着物の着脱にも息切れがし,息切れのため外出できないのは,Hugh-Jones分類で第4度である.
D:起座呼吸,ピンク色の泡沫痰を認め,第一に左心不全を疑った.
E:肺血栓塞栓症患者に特徴的な心音は,第I音の亢進である.


問題04

次のうち正しいものはどれか.2つ選べ.

A:収縮期雑音が頸動脈に放散すれば大動脈弁由来の可能性が高い.
B:肥大型閉塞性心筋症は頸動脈の触診で診断できる.
C:循環器専門医が聴診し,心雑音なしと判定すれば有意な弁膜症はない.
D:診察前確率を病歴から上昇させないと,感度・特異度の高い診察陽性所見は役に立たない.


問題05

心電図について,誤っているものはどれか.1つ選べ.

A:心筋梗塞では,発症直後は心電図でも診断困難なことが多い.
B:胸痛がないときの心電図で異常がなくても,不安定狭心症は否定できない.
C:急性心膜炎では,心電図でST上昇とともに鏡面像のST低下を認める.
D:肺塞栓症の心電図異常は,軽度かつ非特異的である.
E:激烈な胸痛にもかかわらず,ST上昇を認めないときは大動脈解離を疑う.


問題06

正しいのはどれか.1つ選べ.

A:急性の洞不全の原因として,心サルコイドーシスは第一に鑑別すべき疾患である.
B:Brugada症候群では,運動時に失神を生じやすい.
C:左脚ブロック+下方軸型の持続性心室頻拍が認められる場合,ARVC,心サルコイドーシスを考慮する.
D:肥大型心筋症ではV1~V3誘導で主としてT波陰転が生じやすい.
E:ε波はQT延長症候群でよく認められるQRS直後の微細なnotch様の波形である.


問題07

以下の記述のうち,誤りはどれか.1つ選べ.

A:心原性失神は生命予後不良である.
B:洞房伝導能の低下は洞不全症候群の一因である.
C:夜間・睡眠中のWenckebach型第II度房室ブロックは,ペースメーカの適応である.
D:心電図上幅の広いR波が規則的に続く場合は心室頻拍を疑う.
E:QT延長を伴った多形性心室頻拍はtorsades de pointesと呼ばれる.


問題08

救急患者の胸部X線写真について以下のうち,誤っているものを1つ選べ.

A:胸部X線写真で異常を認めない急性の呼吸困難患者は,急性肺血栓塞栓症を疑う.
B:胸部X線写真で右側のみに浸潤影を認めたので,心不全は否定的である.
C:胸部X線写真で縦隔拡大を認めたので,鑑別のためCTを施行する.
D:胸部X線写真で心陰影の著明な拡大を認めたが肺血管影は正常だったので,心嚢液貯留を疑って心エコーを施行する.
E:胸痛患者は胸部X線写真を撮って,気胸の有無を確認する.


問題09

経胸壁心エコー所見として,心嚢液貯留が認められないのはどれか.1つ選べ.

A:急性心筋梗塞
B:急性大動脈解離
C:急性肺動脈血栓塞栓症
D:急性心筋炎
E:収縮性心外膜炎


問題10

ST上昇型心筋梗塞で二峰性の遊出動態を示すマーカーはどれか.1つ選べ.

A:H-FABP(heart-type fatty acid-binding protein,心臓型脂肪酸結合蛋白)
B:HANP(human atrial natriuretic peptide,ヒト心房性ナトリウム利尿ぺプチド)
C:トロポニンT
D:CPK(クレアチンホスホキナーゼ)
E:CKMB(クレアチンキナーゼMB)


問題11

12誘導心電図と胸部X線に明らかな異常がないときに,ほぼ否定できるのはどの疾患か.2つ選べ.

A:心筋梗塞
B:不安定狭心症
C:肺塞栓症
D:大動脈解離
E:緊張性気胸


問題12

非ST上昇型急性心筋梗塞に適当でない治療はどれか.1つ選べ.

A:経皮的冠動脈形成術(stentを含む)
B:アスピリン
C:ヘパリン
D:チエノピリジン誘導体
E:組織プラスミノーゲン・アクチベータ


問題13

大規模臨床試験において生命予後を改善させることが証明されている薬剤はどれか.3つ選べ.

A:アスピリン
B:スタチン
C:ACE阻害薬
D:カルシウム拮抗薬
E:硝酸薬


問題14

冠動脈疾患症例に対する二次予防について,誤っているものはどれか.1つ選べ.

A:冠動脈疾患症例に対する二次予防としての降圧薬はARBを第一選択とする.
B:わが国における降圧療法は2004年の日本高血圧学会ガイドラインに基づいて管理する.
C:冠動脈イベント抑制効果は治療前LDL-C値にかかわらず,治療後の到達LDL-C値と相関する.
D:冠動脈疾患症例に対する脂質低下療法としては,わが国では動脈硬化性疾患予防ガイドラインに基づき,LDL-C:100mg/dl未満を目標に管理する.
E:冠動脈疾患症例の二次予防において,薬物療法が重要であるが,さらに食事療法,運動療法を含めた生活習慣の改善が望まれる.


問題15

心肺停止の患者に心電図モニターを装着すると心室細動であった.AEDによるショック実施後の処置について,適切なものを1つ選べ.

A:すぐにAEDで波形解析を行い,心室細動が継続していたので,再度ショックを実施した.
B:心肺蘇生法を1サイクル実施し,波形解析を行った.
C:心肺蘇生法を2サイクル実施し,波形解析を行った.
D:心肺蘇生法を3サイクル実施し,波形解析を行った.
E:心肺蘇生法を5サイクル実施し,波形解析を行った.


問題16

器質的心疾患例における致死性心室性不整脈の再発予防として,病態早期に選択するものを2つ選べ.

A:カテーテルアブレーション
B:ACE阻害薬
C:植込み型除細動器
D:β遮断薬
E:Naチャネル遮断薬


問題17

59歳,男性.2年前から発作性心房細動を指摘されている.いつもは30分程度で自然に停止するが,今朝6時頃から動悸が出現し,自然停止しないため,朝9時に受診した.心電図は平均心拍数90/分の心房細動だった.心房細動を停止するために最も適切な薬物はどれか.1つ選べ.

A:ジゴキシン
B:ベラパミル
C:ジソピラミド
D:プロプラノロール
E:イソプロテレノール


問題18

数日前から持続する心房細動に対して正しいのはどれか.2つ選べ.

A:直ちに電気的除細動を行う.
B:I群抗不整脈薬の静注で除細動を試みる.
C:ワルファリンを投与する.
D:心エコーで心機能を検討する.
E:ホルター心電図で心拍応答を検討する.


問題19

CHADS2スコアに含まれていないのはどれか.

A:高血圧
B:高脂血症
C:糖尿病
D:心不全
E:脳梗塞の既往


問題20

急性心不全について,正しくないものを1つ選べ.

A:レニン・アンギオテンシン・アルドステロン系(RAAS)が亢進している.
B:まず静注カテコラミンを大量投与して,血行動態の改善を最優先すべきである.
C:Na利尿ペプチド製剤は血管拡張作用のみならず,腎保護効果も期待できる.
D:病態に虚血の関与が示唆されれば,可能な限り薬物療法単独よりも冠動脈インターベンションやバイパス術を優先する.
E:PDE-III阻害薬は副作用として催不整脈作用に注意が必要である.


問題21

血中BNP値を低下させる要因はどれか.1つ選べ.

A:腎機能障害
B:心肥大
C:肥満
D:加齢
E:心房細動


問題22

慢性心不全で正しいものはどれか.2つ選べ.

A:本邦では,軽症心不全でも1日塩分摂取量を5g以下にするよう勧告している.
B:過剰な塩分および水分制限は,栄養障害を惹起し,予後を悪化させることがある.
C:1日の体液バランスをゼロに抑えたい場合は,1日の飲水量を前日の「尿」と「便」の和に設定する.
D:低Na+血症を呈する患者では,低Na+を是正するため,塩分制限は必要ない.
E:腎機能障害を呈した場合は,予後が悪化することが知られている.


問題23

次のうち,アンジオテンシンIIの作用でないのは,どれか.1つ選べ.

A:心筋線維化
B:内皮機能障害
C:PAI-1低下
D:ナトリウム貯留
E:カリウム喪失


問題24

心不全におけるβ遮断薬治療について,誤っているものはどれか.1つ選べ.

A:循環動態が安定しているときに開始する.
B:拡張不全にも有効である.
C:低用量から開始する.
D:必ずしも第二選択薬ではない.
E:使用開始前に投与禁忌となる合併疾患がないか確認が必要である.


問題25

45歳,男性.拡張型心筋症と診断され,β遮断薬,ACE阻害薬,利尿薬を内服しているが,家の中の生活でも息切れが生じている.収縮期血圧は常に90mmHg台であった.心エコーでは左室駆出率29%で,BNPは300~500pg/mlで推移していた.心電図所見は洞調律,1度房室ブロック,左脚ブロックであった.ある日,意識消失発作を起こし,救急隊により心室細動が確認され,幸い除細動され後遺症はなかった.本症例に行うべき治療はどれか.1つ選べ.

A:植込み型除細動器の植込み
B:CRT-D植込み
C:β遮断薬の減量
D:β遮断薬の増量
E:アミオダロンの導入


(解答は本誌掲載)