HOME雑 誌medicina誌面サンプル 44巻8号(2007年8月号) > 今月の主題「理解のための30題」

今月の主題

「理解のための30題」


問題01

日本人の動脈硬化性疾患の動向に関する誤った記述はどれか.2つ選べ.

A:ライフスタイルの欧米化にもかかわらず,近年日本人の年齢調整虚血性心疾患死亡率は増加していない.
B:欧米に比べると,日本人の虚血性心疾患罹患率はまだ低率である.
C:脳出血死亡率は激減したが,まだ脳梗塞死亡率より高い.
D:日本人の脳卒中罹患率は心筋梗塞罹患率の数倍高い.
E:脳梗塞の原因としてアテローム血栓性はまだきわめて少ない.


問題02

日本におけるメタボリックシンドロームに関する記述で誤っているのはどれか.1つ選べ.

A:内臓脂肪蓄積が診断基準に必須である.
B:BMIが診断基準に入っている.
C:アディポサイトカインの分泌異常が発症に関与している.
D:ライフスタイルの改善が薬剤治療より優先される.
E:動脈硬化性疾患の包括的な予防を目的としている.


問題03

高脂血症・動脈硬化について誤っているものはどれか.1つ選べ.

A:HDLの構造蛋白であるApoA-Ⅰは抗酸化作用がある.
B:LDLは小さいほど動脈壁に取り込まれにくい.
C:低HDL-Cの原因として高TG血症がある.
D:動脈硬化巣の形成にMCP-1,M-CSF,インターロイキンといったサイトカインが関与する.
E:レムナントはTG-richリポ蛋白の代謝過程で出現する.


問題04

動脈硬化症の病態に関する記述について正しい記述を2つ選べ.

A:心筋梗塞は血管の狭窄度が大きいほど発症の危険性は高い.
B:血管壁において炎症は酸化ストレスを誘導する.
C:LDLは変性を受けなくても動脈硬化を形成することができる.
D:HDLにはLDLの酸化を阻害する作用がある.
E:マクロファージはLDLを取り込む受容体を発現している.


問題05

主要な冠動脈疾患危険因子に含まれていないものはどれか.1つ選べ.

A:高LDLコレステロール血症
B:喫煙
C:肥満
D:糖尿病
E:冠動脈疾患の家族歴


問題06

心血管イベントのリスクと関連しないものはどれか.

A:高LDL血症
B:頸動脈壁の肥厚
C:アルブミン尿
D:脈波伝播速度の低下
E:冠動脈石灰化


問題07

正しいものの組み合わせを選べ.

(1)動脈硬化性疾患は全身性疾患と考えることが重要である.
(2)急性冠症候群の死亡の多くは入院後に発生している.
(3)尿中微量アルブミンは高血圧においては臓器障害のマーカーとならない.
(4)一過性脳虚血は症状が軽微であれば,脳梗塞に至る危険は少ない.
(5)普段から,イベント発症を想定した診療体制,患者教育,病診連携の確認を行うことが重要である.

A:(1),(2)
B:(1),(5)
C:(2),(3)
D:(3),(4)
E:(4),(5)


問題08

高齢者の動脈硬化の特徴について正しいのはどれか.1つ選べ.

A:血清コレステロール,空腹時血糖値は動脈硬化度を反映する有用なマーカーである.
B:脈波伝播速度は加齢とともに増加する.
C:虚血性心疾患の疑いがある高齢者では,冠動脈造影は行うべきでない.
D:高齢者では食事指導を行っても効果が期待できないので,すぐに薬物治療を行うべきである.
E:高齢者ではできるだけ早く治療効果を得る必要があるので,常用最大量から投薬を開始する.


問題09

動脈生理機能検査法の記載で正しいのはどれか.

A:内皮機能検査では動脈カニュレーションを実施する必要がある.
B:内皮機能検査は阻血反応での血圧変化を評価する.
C:脈波速度は心臓-頸動脈間の脈波速度測定が一般的である.
D:脈波速度は動脈の弾性を評価する検査法である.
E:脈波速度は動脈硬化性心血管疾患発症予測指標としては有用でない.


問題10

頸動脈エコー検査で誤っているものはどれか.2つ選べ.

A:IMTの肥厚は初期の粥状硬化を反映する.
B:IMTは必ず経時的に肥厚してゆく.
C:頸動脈エコー検査は経時的な粥状硬化の進展を容易に評価できるすぐれた検査である.
D:7.5MHzのリニアプローベの分解能は0.1mmである.
E:IMTの肥厚は冠動脈疾患とも関連がある.


問題11

冠動脈の造影マルチスライスCTの適応となるのはどれか,2つ選べ.

A:友人が急性心筋梗塞で急死し,冠動脈検診を希望して来院した無症状の52歳男性
B:冠動脈起始異常が疑われる42歳男性
C:急性胸痛のため来院し,心電図ST上昇を示す55歳男性
D:労作時狭心痛のため負荷心筋血流SPECTを行ったが,運動負荷が不十分で虚血のはっきりしない60歳女性
E:冠動脈バイパス術後1年の無症状の65歳男性


問題12

血管MRIと動脈硬化について誤っているものはどれか.1つ選べ.

A:MRIは放射線被曝なしに動脈硬化性プラークを描出できる.
B:MRIも必ず造影剤の投与を必要とする.
C:辺縁不整のプラークを「複雑プラーク」と呼ぶ.
D:動脈硬化性疾患は全身性の疾患である.
E:不安定プラークを有する例をvulnerable patientと呼ぶようになった.


問題13

レムナントリポ蛋白に関する記述で誤っているのはどれか.2つ選べ.

A:レムナントリポ蛋白はトリグリセリドリッチリポ蛋白の1つである.
B:血中レムナントリポ蛋白値の増加するWHO分類による高脂血症タイプを4型高脂血症という.
C:血中レムナントリポ蛋白値は食後に増加する.
D:インスリン抵抗性の状態では血中レムナントリポ蛋白値は増加する.
E:アポB48はVLDLレムナントを構成するアポ蛋白である.


問題14

small dense LDLについて正しいのはどれか.

(1)LDL粒子中のコレステロール含有量が多い.
(2)酸化されやすい.
(3)血中の滞在時間が長い.
(4)小型のVLDL2から生成される.
(5)血清トリグリセリド値が高いとLDLは大型化する.

A:(1),(2)
B:(1),(5)
C:(2),(3)
D:(3),(4)
E:(4),(5)


問題15

血管障害マーカーとしての高感度CRP(hs-CRP)について正しいものはどれか.2つ選べ.

A:スタチンはhs-CRPを上昇させる.
B:CRPは血管内皮細胞に直接作用する.
C:CRPは動脈硬化組織で産生される.
D:日常診療でhs-CRPをルーチンに測定すべきである.
E:血管障害のマーカーとしては,hs-CRPよりIL-6のほうが有用である.


問題16

動脈硬化の危険因子について,正しいものを2つ選べ.

A:糖尿病は,他に危険因子がなくても高リスクとして扱う.
B:高血圧は,他に危険因子がなくても高リスクとして扱う.
C:喫煙者は,他に危険因子がなくても高リスクとして扱う.
D:脳血管障害既往患者は,他に危険因子がなくても高リスクとして扱う.
E:メタボリックシンドロームは,他に危険因子がなくても高リスクとして扱う.


問題17

動脈硬化予防のための生活習慣の改善を目的とした患者指導で誤っているものはどれか.1つ選べ.

A:食事療法には患者自身による毎日の体重測定,ならびに管理栄養士の診療協力が不可欠である.
B:運動療法の主たる目的は,インスリン抵抗性を改善するため,という認識が重要である.
C:禁煙指導においては,禁煙補助具を上手に利用し,スリップへの対応法を十分に説明する.
D:飲酒は百害あって一利なしであり,直ちに止めさせる.
E:生活習慣の改善は本人が納得して初めて可能となるものであり,強制的に達成することは困難である.


問題18

以下のうち正しいものを1つ選べ.

A:心筋梗塞を惹起する冠動脈血栓は血小板のみからなる.
B:心筋梗塞を惹起する冠動脈血栓はフィブリンのみからなる.
C:ワルファリンは心筋梗塞予防には役立たない.
D:アスピリンは出血性合併症を惹起しない.
E:生体内の血栓はすべて血小板と凝固系の混合血栓である.


問題19

末梢動脈硬化病変に対する記述で正しいのはどれか.1つ選べ.

A:動脈硬化疾患で長期予後を規定するのは冠動脈疾患である.
B:頸動脈狭窄症に対する血行再建の有用性は示されていない.
C:頸動脈ステント術は,頸動脈高位分岐,冠動脈疾患などの高危険群では禁忌である.
D:腎動脈狭窄症は線維筋性異型性が動脈硬化性より多い.
E:腎動脈狭窄は高血圧,腎機能障害に関与する.


問題20

高コレステロール血症の治療法について以下のうち誤っているものはどれか.

(1)HMG-CoA還元酵素阻害薬は肝LDL受容体の発現量を増加させる.
(2)食事療法で総カロリーの制限は必要ない.
(3)コレステロールの摂取制限は必要ない.
(4)禁煙指導は必要ない.
(5)HMG-CoA還元酵素阻害薬を使用中の患者では横紋筋融解症の発現に注意を払う必要がある.

A:(1),(2),(3)
B:(1),(2),(5)
C:(1),(4),(5)
D:(2),(3),(4)
E:(3),(4),(5)


問題21

小腸コレステロールトランスポーター阻害薬(エゼチミブ)によるコレステロール吸収阻害で標的蛋白となるのはどれか.1つ選べ.

A:ACAT-2
B:MTP
C:NPC1L1
D:CETP
E:HMG-CoA還元酵素


問題22

家族性高コレステロール血症(FH)について,誤っているのはどれか.1つ選べ.

A:LDL受容体遺伝子の異常によるものである.
B:幼少期より動脈硬化が進行することがある.
C:ホモ接合体に対しては,スタチンはほとんど無効である.
D:薬剤に対する反応性が悪いヘテロ接合体に対して,LDLアフェレーシス治療を行うことがある.
E:HDLコレステロールが著明に高値を示す.


問題23

次のうち誤っているのはどれか.1つ選べ.

A:冠動脈疾患の一次予防,二次予防におけるLDL-C低下治療の効果は確立している.
B:脂質低下療法において,薬物療法が重要で,食事療法・運動療法は必要ない.
C:冠動脈イベント抑制効果は治療前LDL-C値にかかわらず,治療後の到達LDL-C値と相関する.
D:本邦では,動脈硬化性疾患予防ガイドラインが5年ぶりに改訂された.
E:脂質低下療法では,個人のリスクを正しく評価し,リスクを層別化したうえで治療を行っていく必要がある.


問題24

メタボリックシンドロームに伴う高血圧で正しいものはどれか.

(1)高血圧の成因として,体液量の増加や高インスリン血症などが考えられる.
(2)耐糖能異常や高脂血症があるため利尿薬の使用は禁忌である.
(3)長時間作用型Ca拮抗薬は交感神経活動を亢進させ耐糖能を悪化させる.
(4)ARBにはACE阻害薬のようなNO産生亢進作用が少ないため,耐糖能改善作用が少ない.
(5)α遮断薬は高脂血症改善作用がある.

A:(1),(2)
B:(1),(5)
C:(2),(3)
D:(3),(4)
E:(4),(5)


問題25

メタボリックシンドロームを有する糖尿病の初期治療薬の説明文として正しいものはどれか.

A:ビグアナイド薬の副作用で最も起こりやすいのは低血糖である.
B:空腹時血糖値が110mg/dlを超える場合はインスリン導入が望ましい.
C:速攻型インスリン分泌促進薬よりスルフォニル尿素薬が推奨される.
D:チアゾリジン誘導体は浮腫や心不全のある患者には用いるべきではない.
E:αグルコシダーゼ阻害薬は空腹時血糖値を改善する効果がある.


問題26

ホルモン補充療法(HRT)のうち心血管イベントの抑制効果が認められているのはどれか.

A:エストロゲン単独投与
B:エストロゲンとプロゲスチンの併用
C:選択的エストロゲン受容体モジュレーター(selective estrogen receptor modulator:SERM)の投与
D:ABCすべて
E:ABCどれでもない


問題27

動脈硬化関連遺伝子とその解析に関する記述で誤っているものはどれか.1つ選べ.

A:一般的な高コレステロール血症や高血圧は,複合遺伝形質である.
B:冠動脈疾患の家族歴も,他の主要な危険因子とは独立した危険因子である.
C:冠動脈疾患を有する兄弟姉妹例を集めた,罹患同胞対解析が行われている.
D:遺伝子解析の結果,5-リポキシゲナーゼ系の抑制と動脈硬化との関連が示唆されている.
E:日本人での解析の結果,リンフォトキシンα-ガレクチン2系の重要性が示唆されている.


問題28

動脈硬化の危険因子のなかで,メタボリックシンドロームの項目でないのはどれか.

A:高血圧
B:肥満
C:高コレステロール血症
D:高中性脂肪血症
E:耐糖能異常


問題29

小腸でのコレステロール・植物ステロール吸収機構についての記述で誤っているものはどれか.2つ選べ.

A:ABCG5,ABCG8は小腸のみに発現し,植物ステロールの排泄に重要な役割を果たしている.
B:ABCG5,ABCG8の異常は,シトステロール血症を引き起こす.
C:シトステロール血症では,早発性動脈硬化がみられることが多い.
D:小腸でのコレステロール吸収は主に受動拡散による.
E:エゼチミブは,コレステロール吸収率を低下させる.


問題30

次のうちで正しいものはどれか.

A:現在行われている血管再生治療とは,動脈硬化病変の退縮をもたらすものである.
B:重症下肢虚血および虚血性心疾患に対する骨髄単核球細胞移植は,血管再生治療として一定の有用性と安全性があるものとする報告が多い.
C:血管再生治療により悪性腫瘍が悪化する危険があることから,5年以内に悪性腫瘍の既往がある患者はすべて適応外とすべきである.
D:血管再生治療によって糖尿病性網膜症や動脈硬化病変の悪化が生じる懸念があり,術前・術後とも慎重な管理が要求される.
E:血管再生治療の主たるメカニズムは移植細胞の血管への分化にあるため,血管内皮前駆細胞がほとんど含まれない末梢血単核球では治療効果が期待できない.


(解答は本誌掲載)