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今月の主題

「理解のための29題」


問題01

認知症に関する記述で,誤っているものはどれか。1つ選べ。

A:認知症は記憶障害のほか,複数の認知機能障害を呈する。
B:一過性の認知機能障害は認知症と考える。
C:内分泌機能異常症など,内科的疾患により認知症をきたすことがある。
D:日本の65歳以上の認知症高齢者の有病率は4~6%であり,増加傾向にある。
E:日本ではアルツハイマー病型認知症の頻度は脳血管性認知症を上回っている。


問題02

以下のうち,正しいのはどれか。2つ選べ。

A:加齢による物忘れは,徐々に悪化する。
B:うつ病は,いつとはなしに始まる。
C:せん妄では,意識レベルが低下している。
D:高齢者のうつ病では,抑うつ気分の出現が少ない。
E:認知症の人では,せん妄をきたしにくい。


問題03

mild cognitive impairment(MCI)に関する記述で正しいのはどれか。1つ選べ。

A:MCIは加齢による生理的な認知機能の低下を意味した概念である。
B:65歳以上の地域住民のおよそ5割がMCIに該当する。
C:MCIの診断には規定のテストバッテリーを用いる。
D:MCIにはアルツハイマー病の前駆例が多く含まれる。
E:MCIの原因疾患にうつ病は含まれない。


問題04

認知症患者との問診で,失語といえる症状はどれか。1つ選べ。

A:前回の診察で行った検査の説明が繰り返せない。
B:質問を受けるたびに,同伴した家族の顔を見る。
C:尋ねられた質問の意味が理解できていない。
D:話のつじつまを無理に合わせようとする。
E:診察に来るたびに,孫の自慢話を繰り返す。


問題05

認知症における精神症状に関する記述で誤っているのはどれか。2つ選べ。

A:アルツハイマー病では場合わせ・取り繕い的反応を認めることが多い。
B:小動物や虫などの鮮明で具体的な幻視はレビー小体型認知症に特徴的である。
C:脳血管性認知症では感情失禁を伴いやすい。
D:対話性幻聴を認めるときは,ピック病が疑われる。
E:考え不精はアルツハイマー病で認めやすい。


問題06

認知症に伴う神経症候について,正しいものはどれか。2つ選べ。

A:パーキンソン病発病後,3年以内に高度の認知症を示す患者はレビー小体型認知症と診断してよい。
B:大脳皮質基底核変性症には,進行性失語症や人格変化で始まる例がある。
C:アルツハイマー病の進行例には,把握反射や吸引反射が出現する。
D:多系統萎縮症は認知症を示さない。
E:パーキンソン病と異なり,レビー小体型認知症は123I-MIBG心筋シンチグラフィの異常が出現しにくい。


問題07

認知症を有する高齢者の尿失禁で正しいのはどれか。2つ選べ。

A:おむつで間に合わせる。
B:尿失禁に対して注意する。
C:飲水を控える。
D:定時にトイレ誘導する。
E:慣れたトイレにする。


問題08

認知症と症候の組み合わせで誤りはどれか。1つ選べ。

A:前頭側頭型認知症―人格障害
B:レビー小体型認知症―REM睡眠行動異常
C:正常圧水頭症―幻視
D:進行性核上性麻痺―下方注視麻痺
E:プリオン病―ミオクローヌス


問題09

アルツハイマー病の初期症状に特徴的のはどれか。2つ選べ。

A:人物の見当識障害
B:時間の見当識障害
C:尿失禁
D:語想起障害
E:錯語


問題10

アルツハイマー病の画像診断に関する記述で誤っているものはどれか。2つ選べ。

A:早期では,海馬傍回を中心とする内側側頭部の萎縮がみられる。
B:晩期では,中心溝周囲皮質の血流・代謝の低下が特徴的である。
C:早期では,帯状回後部から楔前部の血流・代謝の低下がみられる。
D:軽度認知障害の段階での頭頂葉皮質の血流・代謝の低下は,アルツハイマー病への早い移行を示唆する。
E:高齢発症例は,若年発症例に比べ頭頂葉皮質の血流・代謝の低下が目立つ。


問題11

アルツハイマー病を積極的に診断するのに役立つ検査法はどれか。2つ選べ。

A:髄液中14-3-3蛋白の上昇所見
B:髄液中α-シヌクレインの低下所見
C:髄液中アポリポ蛋白Eの低下所見
D:髄液中アミロイドβ蛋白1-42の低下所見
E:髄液中リン酸化タウ蛋白の上昇所見


問題12

抗コリン作用を介して薬物性認知症様症状をきたすものはどれか。2つ選べ。

A:抗てんかん薬
B:トリヘキシフェニジル
C:β遮断薬
D:消化性潰瘍薬
E:抗炎症薬


問題13

次の記述のうち正しいものはどれか。1つ選べ。

A:アルツハイマー病の治療ガイドラインはわが国には存在しない。
B:アルツハイマー病の治療ガイドラインに沿った治療は,患者や家族の日常生活を改善する。
C:アルツハイマー病の治療ガイドラインは重症度による差がない。
D:患者の置かれた環境にはあまり配慮しなくてよい。
E:行動・心理症状に対しては神経遮断薬を第一選択にする。


問題14

アルツハイマー型認知症(痴呆)の治療について正しいのはどれか。1つ選べ。

A:アセチルコリンエステラーゼ阻害薬はアルツハイマー型認知症(痴呆)の進行抑制に有効ではない。
B:回想療法などの非薬物療法には症状を改善する作用はない。
C:アルツハイマー型認知症(痴呆)においてみられる妄想や興奮に対しては抗精神病薬の使用が推奨されている。
D:アセチルコリンエステラーゼ阻害薬の代表的な副作用は,吐き気や嘔吐である。
E:アルツハイマー型認知症(痴呆)の予防にアミロイド蛋白を用いたワクチンが一般に使用されている。


問題15

アルツハイマー病に対する非薬物治療に関する内容で誤っているものはどれか,1つ選べ。

A:認知症の行動心理学的症候(BPSD)のみられる患者には非薬物治療は控える。
B:非薬物治療の一つに音楽,絵画,ダンスなどの刺激を用いる治療法がある。
C:回想法では写真,ビデオなども利用し,過去の出来事について話し合う。
D:認知リハビリテーションは軽症~中等症に適した治療法である。
E:認知リハビリテーションでは欲求不満,抑うつを増すこともあるので,慎重に実施する。


問題16

次のうち,誤っているものはどれか。2つ選べ。

A:レビー小体型認知症では,脱抑制,常同行動,社会的関心の喪失などの種々の行動異常が認められる。
B:レビー小体型認知症の患者は,抗精神病薬に対する過敏性を有している。
C:前頭側頭葉型変性症では,しばしば失語症が初発症状となる。
D:進行性核上性麻痺の患者では,体幹に強いパ-キンソン症状,眼球運動障害,認知・行動障害が認められる。
E:皮質基底核変性症では,失語症などの高次機能障害は認められない。


問題17

多発小梗塞性認知症を示唆する所見として誤っているのはどれか。1つ選べ。

A:パーキンソニズム
B:失禁
C:病的反射
D:物盗られ妄想
E:仮性球麻痺


問題18

次のうち,正しいものはどれか。2つ選べ。

A:血管性認知症は異質な原因による症候群である。
B:血管性認知症では実行機能障害が主で,健忘は軽度である。
C:皮質下血管性認知症(SVD)は突然発症し,多発梗塞性認知症(MID)は血管性MCIから移行することが多い。
D:血管性認知症はアルツハイマー病に比べBPSDを呈することが多い。
E:血管性認知症の生命予後はアルツハイマー病よりよい。


問題19

脳卒中で認知症を生じる危険因子となる血管障害部位はどれか。2つ選べ。

A:右大脳半球病変
B:角回病変
C:小脳半球病変
D:内包膝病変
E:被殻病変


問題20

血管性認知症の治療について,誤っているものはどれか。1つ選べ。

A:血管性認知症患者の高血圧治療は認知症の進行予防に役立つ。
B:脳梗塞が原因の血管性認知症患者の場合は,病型に適した抗血小板療法や抗凝固療法を行う。
C:薬物療法に加えて,食生活やライフスタイルの改善も行う。
D:脳血管障害による軽度認知機能障害のみの患者には治療を行わず,経過観察を行う。
E:自発性低下や情緒障害などの周辺症状に対しても治療を行う。


問題21

78歳の男性。2週間前より物忘れが出現し,ちぐはぐなことを言うようになった。最近,歩行時にふらつきが出現してきた。1カ月半前に頭部を打撲するが,明らかな変化はみられなかったため家族はそのまま様子をみていた。頭部CTを図に示す。最も適切な治療を選べ。

A:経過観察
B:塩酸ドネペジル(アリセプト®)の内服
C:グリセロールの投与
D:穿頭術
E:シャント術


問題22

ビタミンB1欠乏症に関する記述で正しいのはどれか。1つ選べ。

A:慢性アルコール中毒患者に多い。
B:胃切除術を受けた患者では,ビタミンB1の吸収障害が起きやすい。
C:主徴候として,皮膚炎(dermatitis),下痢(diarrhea),認知症(dementia)のペラグラ症状が有名である。
D:Korsakov症候群で見られる健忘は,逆行性健忘が特徴的である。
E:治療はビタミンB1の経口投与である。


問題23

薬物による中枢神経系副作用について正しいものはどれか。2つ選べ。

A:セロトニン症候群では発熱はみられない。
B:抗パーキンソン病薬の副作用で多いのは幻聴である。
C:シメチジンの副作用にせん妄がある。
D:ベンゾジアゼピン系薬物の副作用は潜行性に出現する。
E:非定型抗精神病薬は,定型抗精神病薬より錐体外路系副作用が少ない。


問題24

認知症の人の権利擁護について,正しいものはどれか。1つ選べ。

A:医師の患者への病名や治療に関することの説明義務は憲法で定められている。
B:インフォームドコンセントは,認知症の患者には行う必要がない。
C:新しい年後見制度は,2006年4月施行された。
D:地域福祉権利擁護事業の所轄庁は法務省である。
E:憲法25条では,国民の最低生活を保障している。


問題25

成年後見制度について,誤っているものはどれか。1つ選べ。

A:成年後見制度では,財産管理だけでなく,身上監護についての身上配慮義務(生活状況や療養看護に配慮する義務)が重視されている。
B:法定後見には後見,保佐,補助の3類型が,任意後見には任意後見契約がある。
C:原則として,後見と保佐には鑑定書が,補助と任意後見には診断書が必要である。
D:身寄りのない独居高齢者の場合を想定して,成年後見制度利用の申し立て権が市区村長にも付与されている。
E:成年後見に関する情報は戸籍記載によって公示され,誰でも知ることができる。


問題26

わが国の介護保険制度に関する記述で誤っているものはどれか。1つ選べ。

A:65歳未満の場合には,認知症と診断した根拠を主治医意見書に記載する必要がある。
B:「要支援2」とは,要介護1相当とされた者のうちで「状態の維持・改善の可能性が高い」と判断された者である。
C:主治医意見書における「生活機能」とは,日常生活動作(ADL)と同一の概念である。
D:要介護認定審査は,コンピュータによる一次判定と介護認定審査会による二次判定の2段階で行われる。
E:介護保険サービスの給付を受けるためには,あらかじめ要介護認定を受けなくてはならない。


問題27

73歳の一人暮らしの女性。最近,人が入ってきてお金を盗ったと何度も警察に行くようになり,近所の人から娘宅に,当人がゴミの出す日を間違えるので注意してほしいと電話が入った。どのような対応をすべきか。正しくないものを2つ選べ。

A:いくつかの薬を服用しているのであれば,最近,薬に変更がなかったかどうかを確認する。
B:娘宅への同居をできるだけ早期に考える。
C:ヘルパーを依頼し,家事をすべてしてもらう。
D:認知障害に関して,一度,専門医の診断を受けるように勧める。
E:最近,生活上で大きな出来事がなかったかどうかを確認する。


問題28

高齢者における疾患の進行経過と運転能力の低下と相関するものはどれか。1つ選べ。

A:視力障害
B:聴覚障害
C:関節疾患
D:筋疾患
E:認知症


問題29

認知症患者のQOLとターミナルケアについて,間違っているものはどれか。1つ選べ。

A:大腿骨頸部骨折や慢性硬膜下血腫は可能な限り手術を勧める。
B:ターミナルケアについては,かかわっているスタッフと家族の話し合いが大切である。
C:介護施設でのターミナルケアの取り組みも増えたが,看取りには難しい問題がある。
D:摂食嚥下障害があれば,積極的に経管栄養や胃瘻造設を家族に勧める。
E:身体拘束は介護の現場では減少しているが,医療の現場では少なくない。


(解答は本誌掲載)