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今月の主題

「理解のための29題」



問題01

年齢調整した場合,わが国の一般住民でみられる時代的変化について,正しい組み合わせを選べ。

(1)虚血性心疾患の発症率は増加傾向にある。
(2)アテローム血栓性脳梗塞の発症率は低下傾向にある。
(3)ラクナ脳梗塞の発症率は低下傾向にある。
(4)高血圧頻度に大きな時代的変化はない。
(5)耐糖能異常は低下傾向にある。

A:(1),(2)
B:(1),(5)
C:(2),(3)
D:(3),(4)
E:(4),(5)


問題02

本邦のメタボリックシンドロームの診断基準で正しいものはどれか。

(1)HDL-コレステロールは男性40mg/dl未満,女性50mg/dl未満
(2)腹囲基準は男女ともに90cm以上
(3)血圧基準は130/80mmHg以上
(4)空腹時血糖基準は100mg/dl以上
(5)中性脂肪は150mg/dl以上

A:(1),(2)
B:(1),(5)
C:(2),(3)
D:(3),(4)
E:(4),(5)


問題03

降圧治療と認知機能障害の関係に関する記述で正しいのはどれか。1つ選べ。

A:降圧治療により認知機能が改善することは大規模臨床試験により検証されている。
B:降圧治療による脳血管性認知症の発症抑制効果については未だ報告されていない。
C:高齢者の降圧治療に際しては,認知機能を定期的に評価する必要がある。
D:降圧治療により認知機能障害が進行することは臨床試験により証明されている。
E:降圧薬の種類による認知機能障害への効果の差については報告がない。


問題04

高血圧をもたらす因子として誤っているものはどれか。

A:交感神経系の活性亢進
B:塩分の過剰摂取
C:レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系の活性亢進
D:肥満
E:香辛料の過剰摂取


問題05

以下のうち,間違いの組み合わせを選べ。

(1)Prehypertension(前高血圧)とは,130~139/85~89mmHgのことである.
(2)至適血圧は,120/80mmHg未満である。
(3)一般に深呼吸により血圧は低下する。
(4)至適血圧に比べ,正常または正常高値血圧値の人の心血管リスクは高い。
(5)仮面高血圧とは家庭血圧に比べ,診察室血圧が高い高血圧である。

A:(1),(2)
B:(1),(5)
C:(2),(3)
D:(3),(4)
E:(4),(5)


問題06

高血圧症の病歴,身体所見について,誤っているものはどれか,2つ選べ。

A:生活習慣の修正にはほとんど費用がかからず,まず行うアプローチとして基本的な事項である。
B:両側の頸動脈狭窄を認める患者では,高血圧症が重症であることが予測されるため,十分に降圧する必要がある。
C:睡眠時無呼吸症は交感神経系活性化を介して高血圧症の原因になることがある。
D:正常の場合,仰臥位において心尖拍動は触診で左第4,5肋間の鎖骨中線よりも外側にある。
E:頸動脈狭窄の存在を疑うために,聴取すべき部位は,頸部と眼窩(眼瞼)部である。


問題07

二次性高血圧に関する記述で正しいものはどれか。

(1)131I-アドステロールシンチは褐色細胞腫の確定診断に有用である。
(2)腎血管性高血圧の診断において,左右の腎静脈レニン比3以上で有意と判定する。
(3)preclinical Cushing症候群では,ACTHの抑制がみられる。
(4)低カリウム血性のアルドステロン症もしばしばみられる。
(5)腎実質性高血圧で最も頻度が高いのは慢性糸球体腎炎である。

A:(1),(2)
B:(1),(5)
C:(2),(3)
D:(3),(4)
E:(4),(5)


問題08

次の文章で正しいのはどれか?

A:高齢者は,収縮期血圧の上昇とともに拡張期血圧も上昇する。
B:高齢者高血圧の原因の一つとして,生理的な血漿レニン活性上昇がある。
C:高齢者においては,夜間血圧が上昇するnon-dipperパターンを呈することが多い。
D:高齢者においては,臓器虚血の心配があるため,血圧コントロールは厳格なものは必要ない。


問題09

家庭血圧に関する記述で正しいのはどれか。

A:家庭血圧と24時間自由行動下血圧の高血圧基準は同様である。
B:朝の血圧測定は起床直後に行う。
C:仮面高血圧とは白衣高血圧のことである。
D:家庭血圧は診察室血圧よりも優れた予後予測因子である。
E:家庭血圧測定は上腕のほか,手首で行ってもよい。


問題10

次の文章で正しいものはどれか。

A:最も信頼できる血圧の評価方法は診察室で測定する血圧である。
B:血圧の絶対値よりもその変動性のほうが重要である。
C:血圧の変動は起床後の朝が最も大きい。
D:夜間血圧は昼間血圧に比べると0~10%低下するのが正常パターンである。
E:24時間血圧の高血圧の定義は140/90mmHg以上である。


問題11

仮面高血圧に関する記述で正しいのはどれか。1つ選べ。

A:診察室で医師が測定した血圧値のほうが,患者が家庭で測定した血圧値よりも脳心血管合併症発症の予後を正しく予測する。
B:仮面高血圧は診察室では正常血圧でも,職場や夜間の血圧が高い状態をいう。
C:夜間に血圧が下がらない,いわゆるnon-dipperの予後は下がる人(dipper)に比べて良好である。
D:ヘビースモーカーは仮面高血圧になりにくい。


問題12

次の文章で誤っているのはどれか。

A:白衣現象は外来血圧重症例で大きい。
B:白衣高血圧は外来血圧軽症例に多い。
C:白衣高血圧例で臓器障害がある場合は治療が必要である。
D:24時間自由行動下血圧を1回測定することで白衣高血圧を診断できる。
E:白衣高血圧の治療薬としてα遮断薬が有効である。


問題13

高血圧による脳血管障害について,誤っているものはどれか。1つ選べ。

A:脳血管障害は心血管イベントのなかで高血圧の影響が最も大きい臓器障害である。
B:脳梗塞のなかで高血圧との関連が最も深いのは,心原性脳塞栓症である。
C:無症候性脳血管障害でも,認知機能障害やうつ病をきたしうる。
D:有効な降圧療法により,脳卒中発症率だけでなく認知機能低下も抑制されうる。
E:眼底検査は脳血管病態を簡便に推し量ることのできるきわめて重要な検査である。


問題14

以下のうち,誤っているのはどれか。

A:糖尿病は左室肥大のリスクである。
B:心電図の左室肥大と心エコーの左室肥大は独立した心血管イベントのリスクである。
C:心エコーにて心駆出率が保たれていれば心不全は否定できる。
D:夜間血圧の上昇は左室肥大のリスク増加と関連している。


問題15

次のうち心血管系の事故に結びつくと考えられている腎臓関連のマーカーはどれか。2つ選べ。

A:血清アルブミン
B:血清ナトリウム(Na)濃度
C:微量アルブミン尿
D:蛋白尿
E:尿中カリウム(K)排泄量


問題16

動脈特性を反映する各臨床指標に関する記述で誤っているものはどれか。2つ選べ。

A:頸動脈エコー検査で動脈の機能的な評価が可能である。
B:降圧薬の種類により,PWV(pulse wave velocity)の改善作用に差がある。
C:AI(augmentation index)は心不全患者(左室収縮能障害)では低下するため,動脈壁硬化の正確な評価が困難となる。
D:AIは高血圧患者における心血管死亡の優れた予測因子である。
E:β遮断薬は中心動脈圧を効率的に低下させることで心臓の後負荷を軽減する作用が特に強い。


問題17

腎障害を伴う高血圧の治療として適切でない生活習慣の改善はどれか。2つ選べ。

A:禁酒
B:禁煙
C:減塩
D:減量
E:野菜・果物の積極的摂取


問題18

カルシウム拮抗薬について正しいのはどれか。2つ選べ。

A:L型カルシウムチャネルに結合する。
B:ニフェジピンは第二世代に属する。
C:ジルチアゼムはジヒドロピリジン系に属する。
D:ベラパミルは血管選択性が高い。
E:アムロジピンは長時間作用型である。


問題19

ACE阻害薬とARBの投与時にともに認められる反応はどれか。

(1)血漿レニン活性の上昇
(2)アンジオテンシンIIの低下
(3)ブラジキニンの上昇
(4)アンジオテンシンタイプ2受容体の活性化
(5)アンジオテンシン1-7の上昇

A:(1),(2)
B:(2),(3)
C:(3),(4)
D:(4),(5)
E:(1),(5)


問題20

高血圧の治療における利尿薬の用い方について,誤っているのはどれか。1つ選べ。

A:サイアザイド系利尿薬の副作用として低カリウム血症,痛風,糖尿病がある。
B:利尿薬の利尿作用は用量依存性であり,降圧効果はこれに相関する。
C:高用量の抗アルドステロン薬は女性化乳房,無月経をきたしうる。
D:利尿薬は少量でRA系抑制薬との併用が望ましい。
E:降圧利尿薬には脳卒中を中心とした心血管合併症の抑制効果が期待できる。


問題21

α遮断薬・β遮断薬に関する記述で正しいものはどれか。2つ選べ。

A:α遮断薬は早朝高血圧に対しては無効である。
B:高血圧治療におけるβ遮断薬はβ1受容体選択性のものが望ましい
C:β遮断薬は妊娠女性に対しては禁忌である。
D:α遮断薬は,脂質代謝異常を伴う高血圧に対して有用である。
E:左室収縮不全による心不全を伴う高血圧にはβ遮断薬よりもα遮断薬が有効である。


問題22

治療抵抗性高血圧への対処として誤りはどれか。1つ選べ。

A:家庭血圧(あるいは24時間血圧)を測定する。
B:服薬コンプライアンスと生活習慣について調べる。
C:降圧薬は少量での多剤併用を行う。
D:利尿薬を追加する(これまで用いていない場合)。
E:二次性高血圧の可能性を考慮し,検査を行う。


問題23

自宅での血圧測定で著しい高血圧(血圧230/140mmHg)と軽い頭痛を訴える60歳の女性が内科外来に歩いて来院した。患者は普段から高血圧で外来に通院しており,神経症的な訴えが日頃から多く,緊張型頭痛で鎮痛薬を頓用している。対応として誤っているものはどれか。

A:病歴や診察をする前にとりあえずニフェジピン(5mg)舌下錠を服用させて,処置室のベッドに休ませておく。
B:すぐに頭部CTを撮影する。
C:高血圧緊急症の可能性もあるが,普段から訴えが多い神経症的な患者なので,特に検査をせずに家で休んでおくように指導した。
D:眼底所見でKeith-Wagner-IV度であれば,高血圧性緊急症と確定診断できる。
E:血液検査で急性腎不全と微小血管性溶血性貧血の像が現れていれば高血圧性緊急症の可能性が高い。


問題24

脳梗塞慢性期患者の降圧療法に関する記述で正しいものはどれか。1つ選べ。

A:高血圧を有する患者の大半に,降圧療法を行うべきである。
B:大脳の広範な梗塞を呈する患者には,降圧してはいけない。
C:エコーで頸動脈に中等度以上の狭窄があれば,降圧してはいけない。
D:降圧の最終目標は,150/95mmHg未満である。
E:利尿薬は脱水を起こして脳血流量を下げるので,用いてはいけない。


問題25

冠動脈疾患患者の高血圧治療に関する下記の記述のうち正しいのはどれか,一つ選べ。

A:左心機能の低下した患者に,通常量のβ遮断薬を開始する。
B:日本人の虚血性心疾患には冠動脈攣縮の要素が強いため,β遮断薬は使用すべきではない。
C:血圧は,通常の血圧の範囲内で低くコントロールすればするほど,冠動脈疾患の再発率は低くなる。
D:利尿薬は高脂血症や,耐糖能異常などの副作用があるため心不全のない虚血性心疾患患者には使用しない。
E:長時間作用型Ca拮抗薬に,レニン・アンジオテンシン・アルドステロン阻害薬に劣らない虚血性心疾患の予防効果のあることが最近の大規模研究で明らかにされた。


問題26

高血圧における心合併症に関する記述で正しいのはどれか。2つ選べ。

A:心肥大は圧負荷に対する心臓の適応現象であり,心拡大から収縮機能障害をきたさない限り心不全は発症しない。
B:心肥大は心血管事故の独立した予後の規定因子である。
C:高血圧による心肥大・心血管リモデリング・心不全へ至る過程で,神経体液性因子が重要な役割を果たしている。
D:収縮不全患者に陰性変力作用を有するβ遮断薬の投与は禁忌である。
E:心不全の診断のために最初に行うべき検査は心エコーである。


問題27

慢性腎疾患における高血圧に関する記述のうち,誤ったものを1つ選べ。

A:ARB/ACE阻害薬には蛋白尿減少作用がある。
B:ARB/ACE阻害薬使用時にCrが30%あるいは1mg/dl以上の上昇を認める場合,腎動脈狭窄などを疑い,精査をする必要がある。
C:慢性腎疾患の降圧目標は,蛋白尿量の多少にかかわらず130/80mmHg以下である。
D:Ca受容体拮抗薬のなかには,輸出細動脈を拡張し,糸球体内圧を下げるものもある。
E:スピロノラクトンは,腎機能障害が進展している例では,高K血症をきたしやすく,注意を要する。


問題28

正しいものの組み合わせを選べ。

(1)高血圧の是正は細小血管症を減少させることが証明されている。
(2)糖尿病腎症ではACEIは腎機能を悪化させる。
(3)蛋白尿(1g/日以上)を呈する糖尿病腎症の降圧目標は130/80mmHg未満である。
(4)α遮断薬は糖尿病患者で臓器保護作用を示す。
(5)ARBは高血圧の程度にかかわらず糖尿病腎症の予防効果を示す。
(6)ACEIは高血圧の程度にかかわらず,心血管疾患の予防効果を示す。

A:(1),(2)
B:(1),(5)
C:(2),(3)
D:(3),(4)
E:(4),(5)


問題29

閉塞性睡眠時無呼吸症候群のCPAP治療の適応の基準で正しいのはどれか,2つ選べ。

A:終夜睡眠ポリグラフィで無呼吸低呼吸指数が20/時以上。
B:簡易検査で無呼吸低呼吸指数が20/時以上。
C:CPAPで睡眠の断片化が改善すること。
D:高血圧,心不全,虚血性心疾患,脳血管障害などを伴うこと。
E:最低SpO2値が88%以下。


(解答は本誌掲載)