HOME雑 誌medicina誌面サンプル 44巻10号(2007年10月号) > 連載●内科医が知っておきたいメンタルヘルスプロブレムへの対応
●内科医が知っておきたいメンタルヘルスプロブレムへの対応

第10回(最終回)

心身医学的対応

中尾睦宏(帝京大学医学部衛生学公衆衛生学・心療内科)


 今回で連載の最終回となった.第9回までの特集では,内科診療で遭遇するケースが多く,特に注意が必要な精神科疾患を選んで解説した(表1).内科医の先生方が実地ですぐに応用できるよう平易で短い解説を心がけたので,少し乱暴なまとめ方があったらお許しいただきたい.

表1 本特集のテーマとその意図
1回目 「うつ病」……身体症状が主訴で,精神症状が前面に出現しないこともある.
2回目 「不眠」……まずは不眠の症状がないか質問してみる.
3回目 「パニック発作」……受診時に発作が消失していることが多い.問診が命.
4回目 「社会不安障害」……従来の赤面恐怖や対人恐怖が類似の病態.潜在数は大.
5回目 「神経症と心身症の違い」……ICD-10保険病名の付け方に気をつけよう.
6回目 「疼痛性障害」……やたらと痛がる患者は精神性疼痛も考慮する.
7回目 「心気症」……あれこれ病気を心配するのでひたすら粘り強く話を聴く.
8回目 「人格障害」……患者に巻き込まれず,同じ(心理的)距離感を保つ.
9回目 「摂食障害」……治療への動機付けが何より肝要.
10回目 「心身医学的対応」……話を聴いて適切な薬の処方とリラックス指導を.


 連載の要点は以下のようになる.内科診療は身体だけを診たらよいというわけではなく,メンタルヘルスへの配慮も必要である.そのなかでもうつ病・うつ状態の急増が社会問題となっているので,まずは見逃さないようにしたい(第1回).不眠はうつの部分症状のときもあり大事である(第2回).うつと不安は実はオーバーラップする面が多く,不安障害も忘れないでほしい.そこで不安障害としてパニック障害と社会不安障害をそれぞれ紹介した(第34回).ストレス反応には心理面・身体面・行動面の症状が出現するので,図1のようなストレスモデルを知っておくとメンタルヘルスプロブレムの理解に役立つ(第5回).また精神面の問題であってもひたすら身体愁訴を訴える患者群として身体表現性障害という病態がある.身体表現性障害の中で疼痛性障害と心気症をそれぞれ紹介した(第67回).メンタルヘルスプロブレムには疾病の問題だけでなく,性格(パーソナリティ)そのものに偏りがある患者も相当数存在するので注意したい(第8回).最後に行動異常ともいうべき摂食障害を診る機会も内科では多いので紹介した(第9回).

 本特集で選ばれなかった大切な精神科疾患として,心的外傷後ストレス障害(PTSD),適応障害,薬物依存(アルコール依存を含む)などが挙げられる.こうした精神疾患は内科医でもある程度の知識と対応が必要である.また心身症の各論についても本特集では触れなかった.緊張型頭痛,片頭痛,過敏性腸症候群,自律神経失調症など内科診療で重要な病態は数多くある.他の特集記事を参考にしながら勉強を続けてほしい.

 それでは最後に,残された誌面を使って心身医学的対応についてまとめよう.

(つづきは本誌をご覧ください)


中尾睦宏
1990年東京大学医学部卒業.東大病院で内科研修をして心療内科に入局.1996年に東京大学医学系大学院(心身医学)修了.2000年にハーバード大学公衆衛生大学院(臨床疫学)修了,ハーバード大学医学部心身医学研究所内科講師.2001年に帰国し,現在,帝京大学医学部衛生学公衆衛生学准教授・附属病院心療内科副科長.専門は心身医学,行動医学,職場のメンタルヘルスなど.