HOME雑 誌medicina誌面サンプル 44巻7号(2007年7月号) > 連載●日常診療の質を高める口腔の知識
●日常診療の質を高める口腔の知識

第7回

歯科疾患と関連する意外な病気

岸本裕充(兵庫医科大学歯科口腔外科学)


 むし歯と歯周病は2大歯科疾患ですが,これらが意外な病気と関連していることが少しずつ明らかになってきました。むし歯や歯周病の罹患率が非常に高いことを考えると,これらの影響を常に頭の隅に置いておく必要があると思います。


■歯科疾患がどのように全身にかかわるか

 これまでの連載で,(1)口腔内の細菌は容易に血管内に侵入し,一過性の菌血症を生じること,(2)口腔内の細菌の微量誤嚥(マイクロアスピレーション),について説明しました。いずれも,意外なほど日常的に生じるもので,これに宿主の感染防御機能の低下という「リスクファクター(Rf)」が加わると,(1)は敗血症(Rf:好中球減少症など)や感染性心内膜炎(Rf:弁疾患や人工弁,先天性心奇形など),(2)では誤嚥性肺炎(Rf:脳血管障害による嚥下反射/咳反射の低下など)を発症する可能性が高まります。

 また,古くから「病巣感染」という概念が知られており,慢性扁桃腺炎とともに,むし歯(根尖病巣を有する進行したむし歯)と歯周病は「歯性病巣感染」の原病巣として有名です(図1)。これらが,一見関係なさそうな遠隔臓器に二次疾患を引き起こします。皮膚の掌蹠膿疱症(図2:抜歯前後での症状の変化)はその代表ですが,A群連鎖球菌感染症による咽頭炎などに続発する急性糸球体腎炎やリウマチ熱も病巣感染として有名です。

 

(つづきは本誌をご覧ください)


岸本裕充
1989年に大阪大学歯学部を卒業し,兵庫医科大学歯科口腔外科学講座へ入局。化学療法後の口内炎に苦しむ患者さんを毎日のように往診し(研修医時代),頭頸部癌術後患者のMRSA定着・感染に苦しみ(医員の頃),その後は手入れが良くないと不潔になりやすい口腔内のインブラント義歯(人工歯根療法)に取り組んでいます。これらの経験が口腔ケアに活かされていると思っています。