HOME雑 誌medicina誌面サンプル 44巻6号(2007年6月号) > 連載●外来研修医教育への招待
●外来研修医教育への招待

第6回

こんな場合はどうする?
その2

及川晴子(佐久総合病院総合診療科)
川尻宏昭(名古屋大学地域医療センター)


 新研修医が入ってきてはやくも2カ月がたちました。1年目の先生は少しずつ病院にも慣れてきた頃でしょう。2年目の先生は先輩らしくちょっと得意気に指導している頃でしょうか。新人医師たちの初々しさとやる気に,元気をもらっている指導医の先生方も多いのではないかと思います。そのパワーで今月も一緒に,外来研修教育について学んでみましょう。

 前回は,「患者さんの緊急性をいかに研修医に理解してもらうか?」という点がその主題でした。今回も具体的な症例に沿いながら,研修医に修得してもらう外来診療の実際について,皆さんと一緒に考えていきたいと思います。

参考1 佐久総合病院での実際的な流れ
(1)予診用紙を研修医と一緒に見て,ショートディスカッション
(2)診察後の研修医プレゼンテーション(One minutes teacherを意識して行う)
(3)次の一手を検討する
(4)一緒に診察室へ
(5)外来後の振り返りカンファレンス


ケース
予診用紙:33歳男性,Bさん
主訴:3週間続く咳
既往歴:特になし
希望の検査:未記入
体温37.0℃。


【例1】

今日の担当研修医は研修医2年目A君。

研修医A:咳か。最近多いな。本当は,指導医の先生と少しディスカッションしたいんだけど,今,忙しそう。それにこんなにたくさんのカルテだし。この症例の患者さんは若いし,風邪かな? 咳止めの処方も覚えたところだし,まあ,まず診てみよう。
研修医A:Bさんこんにちは。研修医のAといいます。よろしくお願いします。今日は咳でこられたんですね。どのような感じですか?
Bさん:3週間くらい前から続いていて……。(ごほっ)なんか体もだるくって。(ごほっ)
研修医A:そうですか。(他の症状も聞いておかないとな……)熱が出たことはありましたか? 痰やのどの痛みなどの症状はどうでしょう?
Bさん:熱は計ってないです。痰はあまりでません。のどの痛みは,最初のころは少しありましたが今はないです。
研修医A:(ん? なんか,いつも診る咳の患者さんと少し違うような……。でも,熱も37℃で,高くないし,あまり重症そうではないな。あわてなくていいよな。そういえば,上気道炎の後などに咳が続く感染後の咳っていうのがあるんだっけ。それと,喘息や喫煙歴についてもきいておかないとな……)

***

(診察を終えて)

研修医A:(診察したけど,咽頭の発赤もあまりないし,首のリンパ節も腫れてない……。胸部の聴診でも問題はないな。まあ,あまり有意な所見はないということか。緊急性もないし,上気道炎として,対症的な感じでいいかな? よし。そんなに時間もかからずに診察まで終えられたぞ。まあ,上の先生に確認しなくてもよさそうだけど,一応カルテをまとめて,上の先生に報告しておこう。咳止めはなにがいいかな)

 さて,このケースいかがですか? 「咳」という非常によくある主訴ですね。研修医Aは,2年目に入り,外来にはだいぶ慣れてきているようです。「咳」を訴える患者さんもこの一年間で,かなり多く経験してきました。患者さんとのやり取りや時間の使い方などは,それなりに対応できるようです。このケース,指導医である皆さんなら,どのように考えますか? 指導する側として,このケースで,研修医に気付いてもらいたいことは? また,この患者さんを診るうえで医師として気をつけるところは? その点に注意しつつ,前回も使用した実際の流れ(参考1)を参考に,検討してみましょう。

(つづきは本誌をご覧ください)


及川晴子
2002年山形大学医学部卒。同年天理よろづ相談所病院ジュニアレジデント。2年間の初期研修終了後,佐久総合病院総合診療科で3年間の後期研修を行う。2007年4月より総合診療科スタッフとして,入院,外来診療の中で研修医教育に携わる一方,訪問診療や週1回の診療所勤務を行い,自らもgeneralistを目指してトレーニング中である。

川尻宏昭
1994年徳島大学医学部卒。同年,佐久総合病院初期研修医。2年間のスーパーローテーションおよび2年間の内科研修の後,病院附属の診療所(有床)にて2年間勤務。2001年10月より半年間,名古屋大学総合診療部にて院外研修。その後,佐久総合病院総合診療科医長として,診療と研修医教育に従事。2006年12月より現職。