HOME雑 誌medicina誌面サンプル 46巻11号(2009年11月号) > 連載●外来診療に差をつけるコミュニケーションスキル
●外来診療に差をつけるコミュニケーションスキル

第2回 テーマ

オープニング:第一印象が肝心!

菅野圭一(渋川市国民健康保険赤城北診療所)


【キーワード】
●出迎え
●フルネームの自己紹介
●アイスブレイク

事例紹介:緊張気味の初診患者さん

 今日は初診の担当.診察室のいすに座ったまま,「どうぞお入りください」と声をかけ最初の患者さんを呼び入れる.患者さんは,緊張した面持ちの年配の女性.すぐいすに座っていただき,カルテの名前と相違がないか確認してから,自分の名字を名乗る.やはりかなり緊張しているようで,表情も硬く,軽くうなずくだけで返事は返ってこない.

 緊張をほぐして話がスムーズにできるように,「そんなに硬くなんなくっていいんダヨ」と砕けた口調で言葉をかけるが,これが逆に緊張を与えてしまったようだ.「しまった!」と思いながら,よい案も浮かばず,「さて,今日はどうしましたか?」と気を取り直して診察を開始する.しかし,患者さんから出てくる言葉は「はあ」「ええと,胸のあたりがちょっと……」と途切れ途切れで,さっぱり要領を得ない.詳しい経過を話してもらおうと,言語的コミュニケーションスキルを駆使して躍起になるが,焦れば焦るほどこちらの緊張も高まってしまい,スムーズに診察が進まなくなってしまった.

 時間ばかりが過ぎていく……

 最初の患者さんとのコミュニケーションでつまずくと,その後もいつもの調子が出ず,外来がスムーズに進まなくなってしまいます.さて,こんな状態を避けるために,どのようなことに気をつければよいのでしょうか.

■初対面は誰でも緊張するだからアイスブレイクが重要

 初めての人に会う時には,どんな時でも少なからず緊張しますね.医師であっても,慣れないうち(研修医の時,転勤先の最初の外来,開業したてなど)は初診の患者さんと会う時には緊張しますよね.まして,悩みをもって診察にいらっしゃる患者さんたちは,なおさらなのではないでしょうか.

 そんな時,少しでもお互いの緊張緩和(アイスブレイク)ができれば,スムーズに診察が進みます.医療面接において,挨拶と自己紹介,患者確認を通して,患者さんが話しやすい雰囲気作りを目指す段階を「オープニング」といいます(表1)1).オープニングでは,第一印象をよくして,「話しやすそう」とか「なんでも聞いてくれそう」と思っていただくのが効果的です.このためのコミュニケーションスキルとして,非言語的なものでは,こざっぱりとした清潔な身なり・優しそうな笑顔,そして言語的なものでは,挨拶・自己紹介といったものが挙げられます1)

表1 医療面接における7 つの段階
I.オープニング
II.共感的コミュニケーション
III.傾聴・情報収集
IV.説明・真実告知・教育
V.マネジメント
VI.診断に必要な情報の授受
VII.クロージング
(松村真司・箕輪良行(編):コミュニケーションスキルトレーニング――患者満足度の向上と効果的な診療のために,医学書院,2007より)

 ただ,これらはすでに多くの方が実践していると思います.では,第一印象をよくする,簡単で効果的なコミュニケーションスキルには,ほかにどのようなものがあるでしょうか.

(つづきは本誌をご覧ください)

文献
1)松村真司・箕輪良行(編):コミュニケーションスキルトレーニング――患者満足度の向上と効果的な診療のために,医学書院,2007