巻頭言
特集病院マネジメント職に求められるもの

 病院経営をめぐる環境が激変する中で,病院マネジメント(事務)職の能力向上は,病院生き残りのための最重要課題の一つである.病院マネジメント職の能力向上に何が必要か.病院マネジメント職については,病院機能の拡大に対応して,経営企画,総務,秘書,経理,人事,広報,医事,情報,調達,管財など組織分化が進んできている.さらに,地域連携や医師事務作業補助など,多職種との連携が不可欠な病院マネジメント職の業務が拡大している.

 しかし,医療現場に入ってみると,病院マネジメント職に対して期待される能力に,職員が追いついていないことも多いように感じる.高い技術と職務意識を持った優秀な医師や看護師は多数存在する.それらの優秀な医師や看護師を養成するための研修システムは,わが国において長い時間をかけて確立されてきた.病院を業界として見るならば,医師や看護師などの専門職のほとんどは医療業界で仕事を行い,病院は人材の最大の受け入れ先であった.したがって,病院を中心とした医師・看護師などの医療職の人材養成(典型は大学病院)は,わが国の医療の浮沈に影響する最重要事項でもあり,最優先されてきた.

 一方,病院マネジメント職については,これまでは出来高中心の診療報酬制度の中で,業務も比較的単純であった.職員には単純な作業を確実に行う事務処理能力が求められた.人材育成の優先度は低く,職員養成システムの確立は後回しにされてきた.文系学生の就職先は多様であり,他の業界で経験を積んだ者を中途採用することで人材を確保することも少なくなかった.

 しかし,現在は病院経営にも質が求められる時代である.経営の根幹に関わる病院マネジメント職の能力向上への期待が高まる中で,その人材育成の内容は高度・専門化し,数多くの人材を効率的に育成する研修システムやキャリアパスの確立が求められている.また,他業種と競争して有能な文系人材を確保することも必要となってきている.

 本特集では,そのような人材育成の好事例を紹介しながら,病院マネジメント職に求められるものは何かを追究している.

 病院マネジメント職のあり方が大きく変わっていく時代である.変化の時代における病院マネジメント職の能力向上を読者と共に考えたい.

城西大学経営学部教授伊関 友伸