今月の主題

抗菌薬の使い方を究める

大曲貴夫(静岡県立静岡がんセンター感染症科)


 いつの時代も,感染症診療,特に抗菌薬の使い方は医師にとって悩みの種です.抗菌薬に関する情報は世の中に溢れていますが,実際にそれを頭の中で実用に耐えるレベルで整理できている人は少ないはずです.

 そこで,読者の方々が頭の中に「抗菌薬の使い方」をしっかりと引き出しを作って整理できるように,と願って今回の特集を組むことにしました.

 まずは感染症診療の方法をおさえることにしました.なぜなら抗菌薬治療は感染症診療の中で用いる手段の一つでしかなく,流れの中で捉えるべきものだからです.この「総論」のなかでは抗菌薬の全体像も示していただきました.何事もまずは全体像を見渡してから,各論に入るのが重要です.

 次には各クラスの抗菌薬について,解説をお願いしました.ここでは「各クラスの抗菌薬を使うべき場面」および「使うときの注意点」に重点をおいて書いていただきました.しかし,実際にどう使うかは症例に当たってみないとイメージし難いはずです.そこで「ケーススタディ」という形で解説していただくことにしました.

 次には,重要な微生物毎に抗菌薬の使用法を整理していただきました.抗菌薬は,単に各抗菌薬毎に区分けするのでは十分に理解できません.「微生物」というくくりで整理すれば,更に理解が深まります.

 最後に「抗菌薬はなぜ難しく感じるのか」と題して,座談会を行いました.「難しい」ことの中身を突き詰めて考えれば,対処法も見えてくるのでは,と期待してのことです.なかなかに面白い議論ができたと思っています.

 一つお断りしておくことがあります.各論文で示されている抗菌薬の適応・用法・用量については,現在の科学的・臨床的知見を踏まえたうえで各執筆者が記載しています.必ずしも本邦における添付文書の記載とは沿わない面がありますので.この点をご了承ください.この違いは,添付文書の記載内容が,現在の科学的知見および積み重ねられた多くの臨床経験を指標として吟味した場合に必ずしも妥当でない面がある,という点に起因しています.ご自身の患者さんに施す治療を決める際には,本特集の内容を機械的に適用するのではなく,個々の患者さんの状態を踏まえて,読者の方々のご判断・裁量で行っていただきますよう,よろしくお願い申し上げます.