今月の主題

一般内科診療における呼吸器薬の使い方

金城紀与史(沖縄県立中部病院総合内科)


 呼吸器系の主訴で受診する患者は多い.発熱,咳といった「風邪」症状から呼吸困難・胸痛まで症状は多彩であり,しかも急性疾患から慢性疾患,また外来でマネージできるものから病棟・ICUレベルの治療が必要なものまである.鑑別診断も呼吸器疾患のほか,心疾患・神経筋疾患・精神科疾患と幅広い.そこで,今回は内科系診療で必ず遭遇する一般的呼吸器疾患での薬剤療法を中心に特集を組んだ.

 取り上げるテーマは肺炎,急性上気道炎,喘息とCOPD,そして結核や重症呼吸器疾患・間質性肺疾患にも触れた.最後にタバコ依存治療・ワクチン・対症療法・緩和療法の概説も加えた.

 さまざまな吸入薬が登場しているが,処方しても実際の吸入方法は指導できているだろうか,患者はしっかり吸入できているだろうか?忙しい外来では省きがちな服薬指導のコツを薬剤師の方に執筆いただいた.

 各項の筆者にはエビデンスやガイドラインに基づきながらも,日常診療でのちょっとした疑問や,エビデンスが明確でない領域にも近づいて「現場感覚」が出るように執筆をお願いした.ガイドラインを参考に診療することは診療レベルの標準化のために非常に重要である.だがガイドライン作成の舞台裏は複雑である.エビデンスが確立していることはほんの一部であり,ほとんどの事柄についてはエビデンスがないか,昔からの慣習的診療である.こうした慣習は「ひとりよがり診療」となるリスクはあるものの,長年の経験知である場合も多く,侮れない.臨床現場で日々迷うであろう読者に今特集からなにがしかのTipsが得られれば幸いである.