今月の主題

内科の基本 肺炎をきわめる

八重樫牧人(亀田総合病院総合診療・感染症科)


 肺炎は日本人の死亡原因における第4位の疾患であり,さらに高齢者においては85歳以上男性で死亡原因の第2位,90歳以上男性で死亡原因の第1位であり,高齢化社会において今後もますます重要になってくる.

 その診療は簡単なようでいて,実に奥が深い.改善の余地はいくらでもある.例えば,予防の大黒柱である肺炎球菌ワクチンは,適応の一部である65歳以上の人口だけでも2,744万人いるのに,年間20万人にしか投与されていない.さらに保険適応さえもない.喫煙率も全体で24.2%,男性で39.3%もある.抗菌薬の選択に関しても,近年のガイドラインの普及は非常にばらつきの大きい日本での診療の質の底上げに寄与するであろうが,ガイドラインを悪用して喀痰グラム染色など肺炎の起因菌を想定する努力を怠り,不必要に広域な抗菌薬を投与することは耐性菌の発現を促し,偽膜性腸炎などの合併症を引き起こすことになるであろう.

 院内肺炎も院内感染で死亡の原因として最多であり,担当医の専門分野にかかわらず,院内肺炎の診療ができるのは入院患者をもつ医師には「必要最低限」の知識である.

 これからの高齢化社会で,肺炎のマネジメントは内科,いや医療に携わる者すべてに必須である.世界スタンダードの上を行く治療を心がけてほしい.