今月の主題

Multiple problemsの治療戦略

福原俊一(京都大学大学院 医療疫学)


 患者の高齢化とあいまって,内科の患者は複数の疾患によるmultiple problemsをもっていることがほとんどである.multiple problemsを有する患者では,すべての問題を理想的にマネージすることが困難な場合が稀でない.さらに,エビデンスは単一疾患に対する単一治療のみに関してあることが多く,multiple problemsに対してどの治療を優先するべきかのエビデンスや指針が乏しいことが多い.

 また,「一方をたてれば,他方がおろそかになる」,「一方の治療が他方を悪くしたり,再発を促す」いわゆる利害相反が生じるケースなど,multiple problemsの頻度が高い後期高齢者の治療にみられるジレンマは枚挙にいとまがない.

 以上のような患者を前にして,頭を悩ませている臨床医は多いのではないだろうか?

 そこで本特集は,それらを解決する糸口として,次のような内容を盛り込んで企画した.

 まず,すべてをマネージできるわけではないmultiple problemsを前にして,治療の優先順位をどうすべきか,population‐basedな疫学データに基づく治療の優先順位づけと,evidenceや疫学データがない場合の考え方について,解説していただいた.

 また,複数の疾患に対する異なる治療が利害相反する場合の治療戦略について,それぞれの専門家に異なる立場から討論していただいた.

 今後ますます増えるmultiple problemsを有する患者診療に,少しでも役立てれば望外の喜びである.