今月の主題

内科外来でみるウィメンズ・ヘルス

武田裕子(三重大学大学院医学系研究科地域医療学講座)


 臨床医は,疾患ごとに発現頻度や発症様式に性差があることを認識して診療している.性差を意識した診療を知らず知らずに行っているといえる.しかし,“ウィメンズ・ヘルス”と聞くと,何となく婦人科的な領域をイメージし,内科医には敷居が高く縁遠い領域と考えがちではないだろうか.

 実際にウィメンズ・ヘルスで大切なのは,生物医学的な問題を超えて広い視点で女性の健康について考え,心理社会的側面に目を向けて診療に反映する医師の姿勢である.すなわち,臓器別の専門性にとらわれず一人ひとりの患者に向き合う一般内科医にとっては,診療の間口を広げ女性患者のニーズに沿った診療を提供するというごく日常的なアプローチそのものが,ウィメンズ・ヘルスの実践を意味している.

 本特集では,“女性特有の健康課題や疾患をどう診るか”,特に,ライフステージにおける身体特性や精神的・社会的な背景など,女性の抱える問題の理解に役立つような項目を取り上げている.内科外来で遭遇することのある,しかし患者からは言い出しにくい問題について,わかりやすく解説していただいた.各論の論文冒頭には症例の紹介があり,実際の診療場面をイメージできる構成となっている.

 「ウィメンズ・ヘルスは男性医師禁制」,あるいは「女性の気持ちはわからない」と感じている男性医師には,特集の最後に収載されている座談会からお読みになるようお勧めしたい.ウィメンズ・ヘルスが実は身近なものであると知っていただき,本特集が,日々の診療,患者へのサポートに役立てば幸いである.

 企画にあたっては,熊本大学医学部附属病院総合診療部の早野恵子先生と川崎医療生協・あさお診療所の西村真紀先生にご助言とご協力をいただいた.両先生ならびにご執筆下さった先生方に,この場を借りて感謝申し上げる.