今月の主題

最新ガイドラインに基づく喘息とCOPDの診療

滝沢 始(帝京大学医学部附属溝口病院第4内科)


 気管支喘息もCOPDも日常臨床で遭遇することの多いコモンディジーズであり,しかも疫学調査によると確実に増加している.両者はともに閉塞性換気障害を示すため,歴史的にも概念の混乱がみられたが,近年の病態をめぐる研究の進歩をふまえて,最新の診療ガイドラインが相次いで公表された.また,新規の薬剤が使用可能となり,両疾患の診断と治療には一段と進歩がみられる.このような状況から,これらの疾患をいかに的確に診断し治療・指導するかが,一般臨床医にとっても重要な問題となってきている.

 本特集では以上の観点から,まず,両疾患の病態の理解のために,疾患概念の歴史とガイドラインの現状を整理し,それぞれの疫学,そして病態の最新の考え方を概観した.

 次に,おのおののガイドラインに基づいて,診断と鑑別のポイントを挙げ,検査の有用性と限界についてまとめたうえで,喘息とCOPDの治療についても,ガイドラインに基づき,救急現場で役立つ急性期治療の実践的な考え方と,それに引き続く,より慢性期の管理と治療の要点を解説している.薬剤の使用法についても,具体的な使い方や位置づけをまとめている.

 さらに,禁煙,ワクチン,運動,食事の生活指導などの非薬物療法や,呼吸リハビリテーション,在宅酸素療法と在宅人工呼吸についてもわかりやすく述べ,最後に,やや上級の診療のコツとして,治療抵抗性喘息へのアプローチやアスピリン喘息,妊娠と喘息,喘息・COPD患者の外科手術の注意点といった実際的な問題にも触れている.

 本特集は,以上のように,喘息とCOPDの今日的な課題を網羅したハンディな一冊となった.さっそく今日からの診療に役立つものと確信している.