今月の主題

消化器薬の使い方 Update

上野文昭(大船中央病院)


 本号では,これまで何度か本誌の主題として取り上げられてきた「消化器薬の使い方」をupdateします.前回の企画から6年以上経過し,その間に開発された新薬や適応追加が承認された薬剤は少なくありません.また,わが国の診療にもEBMの概念が徐々に浸透し,経験だけで用いられていた薬剤は徐々に淘汰され,明確なエビデンスのある薬剤が重視されるようになってきました.

 薬のエビデンスを知るうえで最も重要なことは,その薬剤が何を改善する効果があるのかをピンポイントに把握することです.漠然と適応症を知るだけでは不十分で,症状を改善するのか,検査値や画像所見を改善するのか,あるいは予後を改善するのかなどを的確にとらえる必要があります.もちろん,患者アウトカムに直結するエンドポイントが重要であることは言うまでもありません.

 しかし,単にエビデンスを知るだけでは正しい薬物治療はできません.患者のための健全な判断をするには,豊富な臨床経験と適切な臨床技術が必須です.そこで本特集では,消化器領域の各分野で活躍中の専門医に基本的な消化器薬と消化器疾患の薬物治療について,現存するエビデンスを踏まえたエキスパート・オピニオンを展開していただきました.また,明日の消化器薬の動向を探るため,新しい薬物治療の概念や新薬の開発状況などに関する情報も提供いたします.本特集が読者諸氏の日常診療の一助となることを願ってやみません.