●Case Study 診断に至る過程 | ||||||
第8回テーマ 意外な関係 松村正巳(金沢大学医学部付属病院リウマチ・膠原病内科)
本シリーズではCase Studyを通じて鑑別診断を挙げ,診断に至る過程を解説してみたいと思います。どこに着目して鑑別診断を挙げるか,次に必要な情報は何か,一緒に考えてみませんか.今回は以前にTierney先生に,ディスカッサント(discussant)として解説して頂いた患者さんです。
いかかがでしょうか。まず病歴,身体所見より問題点を重要なものから,すべて挙げてみましょう。検査をオーダーする前に,どこまで診断にせまることができるか,チャレンジしてみましょう。後ほどTierney先生の鑑別診断を示します。
長期にわたる喫煙歴のある方に,血痰を認めますので,癌の可能性は考えておかなければなりません。まずは血痰,慢性多発関節炎をきたす疾患を切り口にして,鑑別診断を考えてみましょう。
病歴からは関節リウマチを思いうかべますが,血痰と慢性多発関節炎をきたす疾患を考えてみましょう。この方は太鼓ばち状指を認めますので,肥大性骨関節症の可能性を検討する必要があります。Tierney先生は,太鼓ばち状指をきたす疾患として,以下のものを挙げました。
やはり肺癌をはじめとする肺疾患の可能性がありますね。では視点を変えて,関節リウマチに伴う肺病変から,血痰をきたす可能性がないか検討してみましょう。関節リウマチの肺病変には,どのようなものがあるでしょうか。Tierney先生はいつも次の6つを挙げます。
血管炎では血痰をきたすことがあります。さらに,肺結核の患者さんで稀に関節炎を認めることも報告されています。Tierney先生は,われわれに鑑別診断を解説するときに,いつも以下のカテゴリーを使います。Vascular(血管性疾患),Infection(感染症),Neoplastic(腫瘍性疾患),Collagen(自己免疫性疾患),Toxic/Metabolic(中毒/代謝性疾患),Trauma/Degenerative(外傷/変性疾患),Congenital(先天性疾患),Iatrogenic(医原性疾患),Idiopathic(特発性疾患)。 さて,Tierney先生の鑑別診断は。。。 (つづきは本誌をご覧ください) 参考書1)Garcia JA, Peters JI:Hemoptysis, Tierney LM, Henderson MC(eds) The patient history;Evidence-based approach, pp211-218. McGraw-Hill, New York, 2005 2)上野征夫:内科医のためのリウマチ・膠原病診療ビジュアルテキスト,pp 6-10,医学書院,2002 3)Hilliard AA, Weinberger SE, Tierney LM, et al:Clinical Problem-Solving;Occam's Razor versus Saint's Triad. N Engl J Med 350:599-603. 2004
松村正巳
Lawrence M. Tierney Jr.
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