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●手を見て気づく内科疾患

第17回テーマ

著明な手の腫脹――鎖骨下静脈閉塞

松村正巳(金沢大学医学教育研究センター リウマチ・膠原病内科)


(写真は本誌をご覧ください)
図1 右手が著明に腫脹し,左手との差が明白である
図2 右肩に側副血行路が認められる(矢印)

患者:84歳,女性
病歴:1年前に腎硬化症から慢性腎不全となり血液透析が導入された.左前腕に内シャントが作成されたが閉塞した.続いて右肘部で動静脈吻合が行われたが,右鎖骨下静脈まで血栓性静脈炎を併発した.右鎖骨下静脈の完全閉塞のため右腕全体が著明に腫脹した.
身体所見:右手が著明に腫脹し,左手との差が明白である(図1).右肩に側副血行路の発達が認められた(図2).

診断:右鎖骨下静脈閉塞

 この患者は,過去に右鎖骨下静脈に透析用のカテーテルを挿入された事実はありません.1980年代から,鎖骨下静脈に透析用カテーテル挿入による静脈の閉塞,狭窄が報告されはじめました1).現在では,透析用カテーテルは鎖骨下静脈には留置しません.

 透析患者で鎖骨下静脈,腕頭静脈,上大静脈の狭窄をきたすと,シャント肢が著明に腫脹します.インターベンションで拡張すると,拡張した瞬間から腫脹がとれはじめ,数時間後には劇的に改善します.

文献
1)Davis D, et al:Subclavian venous stenosis;A complication of subclavian dialysis. JAMA 252:3404-3406, 1984

(画像は本誌をご覧ください)