●手を見て気づく内科疾患 | ||||
第3回テーマ ジェーンウェー病変,オスラー結節, 松村正巳(金沢大学医学部付属病院 リウマチ・膠原病内科)
病歴:3週間前から倦怠感を自覚していた.5日前から38℃台の発熱,悪寒,腰痛が出現した.2日前には,ロキソプロフェン・ナトリウムが処方された.しかし,発熱が治まらず入院となった. 身体所見:血圧84/50 mmHg,脈拍120/分,不整,体温39.0℃.呼吸数28/分,意識レベルJapan coma scale 3.手掌,指先,足底に圧痛のない紫斑が散在している(図1).胸骨左縁第3肋間にgrade 2の拡張期雑音を聴取する.腰の痛みを訴えるが,明らかな圧痛は認めない. 検査所見:血液培養2セットから黄色ブドウ球菌が培養された.経胸壁心エコーで大動脈弁,僧帽弁に疣贅を認めた. 診断:ジェーンウェー病変を有する急性心内膜炎 黄色ブドウ球菌による急性心内膜炎では手掌,足底に細菌性塞栓を起こすことがあり,Janeway lesions(ジェーンウェー病変)と呼ばれています.痛くありません.一方,亜急性心内膜炎にともなうOsler’s nodes(オスラー結節:図2)は免疫反応によって起こるとされ,圧痛を認めます.同様の有痛性の結節は全身性エリテマトーデス,溶血性貧血でも認められることがあります. 以下にカリフォルニア大学サンフランシスコ校のローレンス・ティアニー先生から教わったパール(Clinical pearls)を記載します. 「急性心内膜炎の感染性塞栓では,決して圧痛がない(ジェーンウェー病変)」 「亜急性心内膜炎のオスラー結節は,免疫複合体によるもので,常に圧痛を認める」 身体診察の基本は観察です. (つづきは本誌をご覧ください) |
松村正巳
1986年自治医科大学卒.2年間の全科ローテート研修後,石川県内で診療に従事.著書に『ティアニー先生の診断入門』(ローレンス・ティアニー氏との共著)がある.