HOME雑 誌medicina誌面サンプル 46巻3号(2009年3月号) > 連載●手を見て気づく内科疾患
●手を見て気づく内科疾患

第3回テーマ

ジェーンウェー病変,オスラー結節,
感染性心内膜炎診断の鍵

松村正巳(金沢大学医学部付属病院 リウマチ・膠原病内科)


図1 急性心内膜炎患者の細菌性塞栓(ジェーンウェー病変).圧痛はない
図2 指腹に触れる紅斑あり.圧痛を認める
患者:58歳,男性
病歴:3週間前から倦怠感を自覚していた.5日前から38℃台の発熱,悪寒,腰痛が出現した.2日前には,ロキソプロフェン・ナトリウムが処方された.しかし,発熱が治まらず入院となった.
身体所見:血圧84/50 mmHg,脈拍120/分,不整,体温39.0℃.呼吸数28/分,意識レベルJapan coma scale 3.手掌,指先,足底に圧痛のない紫斑が散在している(図1).胸骨左縁第3肋間にgrade 2の拡張期雑音を聴取する.腰の痛みを訴えるが,明らかな圧痛は認めない.
検査所見:血液培養2セットから黄色ブドウ球菌が培養された.経胸壁心エコーで大動脈弁,僧帽弁に疣贅を認めた.

診断:ジェーンウェー病変を有する急性心内膜炎

黄色ブドウ球菌による急性心内膜炎では手掌,足底に細菌性塞栓を起こすことがあり,Janeway lesions(ジェーンウェー病変)と呼ばれています.痛くありません.一方,亜急性心内膜炎にともなうOsler’s nodes(オスラー結節:図2)は免疫反応によって起こるとされ,圧痛を認めます.同様の有痛性の結節は全身性エリテマトーデス,溶血性貧血でも認められることがあります.

以下にカリフォルニア大学サンフランシスコ校のローレンス・ティアニー先生から教わったパール(Clinical pearls)を記載します.

「急性心内膜炎の感染性塞栓では,決して圧痛がない(ジェーンウェー病変)」
“Acute bacterial endocarditis infected emboli never tender”

「亜急性心内膜炎のオスラー結節は,免疫複合体によるもので,常に圧痛を認める」
“Osler’s nodes with subacute endocarditis is immune complex, always tender”

身体診察の基本は観察です.

(つづきは本誌をご覧ください)


松村正巳
1986年自治医科大学卒.2年間の全科ローテート研修後,石川県内で診療に従事.著書に『ティアニー先生の診断入門』(ローレンス・ティアニー氏との共著)がある.