●内科医のためのせん妄との付き合い方 |
第4回テーマ せん妄に対する薬物療法 本田 明(国立病院機構長崎医療センター精神科医長) せん妄の薬物療法は意識レベルを落とさないことを目標とする.ただし,せん妄に保険適応のある薬物はほとんどないため,その使用には患者・家族の同意が望ましい. ■せん妄の薬物療法の目的せん妄治療の目標は意識清明下で穏やかにすることである.すなわちベンゾジアゼピン系薬剤やプロポフォールなどを使い眠らせることは簡単であるが,それのみではせん妄の改善にはつながらない.なぜなら眠らせるだけでは,薬剤を中止すると,せん妄は再発するからである.せん妄の原因の除去とともに抗精神病薬や抗うつ薬,場合によっては抗てんかん薬などを使用し,意識レベルの低下を伴わない鎮静を目指す. ■急いで鎮静が必要な場合の処方例(図1,表1)現在興奮して暴力を振るうリスクが高い,またはルートを自己抜去しようとしている,など直ちに鎮静を行わないと本人に何らかのデメリットが発生する場合. 穏やかにしたい場合効果出現まで15~30分程度待てる状態. 経口摂取可能な場合
リスペリドンの抗幻覚妄想作用はハロペリドールに匹敵し,錐体外路症状はハロペリドールより少ない.液剤の利用で興奮している患者にも使用が可能. 経口摂取不可能な場合
ハロペリドールは強力なドーパミン受容体遮断作用により幻覚妄想に効果がある.安価であり,あらゆる経路(経口・筋注・静注)での投薬が可能.錐体外路症状をきたすためParkinson病患者のせん妄には禁忌である.連用で過鎮静,錐体外路症状をきたしやすい. 薬剤性のパーキンソニズムが出現した場合は減量か,薬剤の変更が必要であるが,どうしても継続せざるを得ない場合は,やむを得ずアキネトン®(ビペリデン),アーテン®(塩酸トリヘキシフェニジル)などの抗Parkinson薬を追加する. (つづきは本誌をご覧ください) 文献 本田 明 |