HOME雑 誌medicina誌面サンプル 44巻9号(2007年9月号) > 連載●聖路加Common Diseaseカンファレンス
●聖路加Common Diseaseカンファレンス

第6回

あなたは呼吸器疾患を的確に診断できますか?

藤谷志野(聖路加国際病院内科 チーフレジデント)
西村直樹(聖路加国際病院呼吸器内科)


呼吸器疾患の診断  まずここを押さえよう

(1)問診により,病歴,喫煙歴などを聴取し,鑑別診断を考えよう.
(2)各疾患ごとのガイドラインが確立しているので,それを参考に治療を行おう.

■症例1
  2カ月間継続する湿性咳と息切れにて来院した48歳男性

指導医 症例は,48歳男性です.42歳頃よりかぜの後に咳が止まらなくなることがしばしばあり,近医にてテオフィリンを処方され内服すると改善することがありました.来院2カ月前より,咳・痰が継続することがあり,紹介元を受診後に当院呼吸器内科を受診されました.身体所見上,脈拍90/min,血圧177/109mmHg,SpO 93%,呼吸音は正常でした.既往歴としては,30歳台後半から高血圧,47歳から糖尿病と副鼻腔炎を診断されて,副鼻腔炎に対しては手術を勧められています.

 どのような疾患を考えますか?

研修医A 風邪の後に咳が止まらなくなることがあるということなので,感染後咳嗽ですか.気管支喘息も鑑別診断に挙がると思いますが…….

指導医 胸部X線(図1)で異常がないということと,症状経過から気管支喘息の可能性が高いと考えました.肺機能検査(図2)で気管支拡張薬(β刺激薬を使用)吸入前後のFEVの改善率が12%以上かつ改善幅が200ml以上というのは気管支喘息診断の十分条件の一つとされています.糖尿病があるためにステロイド全身投与は避けたいと考え,ガイドラインのステップ3の定期治療からのみ開始しました.その後,数日間で症状は消失しました.耳鼻科疾患と喘息の関係は知っていますか.

図1 【症例1】X線所見
a:胸部X線像肥満はあるが異常なし.
b:頭部X線像左>右の上顎洞の含気低下(矢印).

研修医B 鼻ポリープですか.

指導医 そうですね.アスピリン喘息患者の36~96%が鼻ポリープを,また7~15%の喘息患者が鼻ポリープを有するといわれています.またその鼻ポリープに関しては,喘息における吸入ステロイド薬と同様に,ステロイド点鼻薬が奏効するといわれています.この症例では後日,慢性副鼻腔炎に対して,手術を施行したところ,気管支喘息の改善傾向が認められました.これは,one airway one diseaseの考え方ですね.ひとつながりである気道は,鼻から気管支まですべて良くすることで症状が安定します.

(つづきは本誌をご覧ください)