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●研修おたく海を渡る

第48回テーマ

カンファ三昧

白井敬祐(サウスカロライナ医科大学)


 新しいフェローが入ってきて,半年近くが経ちました.3年間で専門医試験に通り,それなりの決断をできるようになるにはどうしたらいいでしょう.「そんなん結局は本人次第やって」と言ってしまっては身も蓋もありません.せっかく仲間がいるのです.グループダイナミズムを最大限に生かすために,工夫がほしいところです.ぼくが出ている一週間のカンファと最近の工夫を具体的に見てみましょう.

 月曜日の朝8時からは,Oncology Journal Clubです.毎月,消化器がん,肺がんなどとテーマを決めて主要な文献を読み,その領域の指導医が,背景についてコメントをします.最近は文献PDFをプロジェクターで大写しにして読みます.担当フェローは書き込みや,蛍光ペン機能を使って前もってポイントを明らかにしておきます.手元の文献に突っ伏しがちだった参加者も議論に集中できるようになりました.午前の外来を終えると,13~15時は頭頸部がんのTumor Boardです(Tumor Boardについては第18,36,37回を参照してください).

 火曜日朝イチは内科全体のグランドラウンドです.招聘講師や,院内各専門科医師が,その分野の知って得する話を紹介してくれます.がんばっかりしか診なくなった今は数少ないほかの話題に触れる時でもあります.12時からは,Pathwayカンファと名の付いた,こてこての基礎医学カンファです.がん抑制遺伝子,細胞内シグナル伝達などを基礎研究者がかみ砕いて説明してくれます.そのあと関連文献をフェローが紹介します.レビューは禁止,オリジナルの基礎研究文献のみが許されるおたくなカンファです.

 水曜日の朝は,カリキュラムカンファといい,フェローが割り振られたトピックについて60分のレクチャーをします.スライド40~50枚を,担当指導医のチェックを受けながら準備します.60分話をもたせるのは,かなり大変ですが,やり終えるとずいぶん頭の整理もでき,力がつくことが実感できます.3年間で乳がん,肺がん,大腸がんなどの大事なトピックは繰り返し,稀なトピックも最低1回はカバーするように考えられています.担当は年に2~3回ですが,あっという間に自分の番が回ってきたものです.外来の合間には,肺がんのTumor Boardと緩和ケアカンファが立て続けに12~14時と続きます.

 木曜日,朝7時からメラノーマTumor Board.8時からは放射線治療科のカンファに顔を出しています.これは,他施設も含めたテレカンファのような形です.同じスライドをインターネット上で見ながら進めます.

 金曜日朝8時は,医療統計の専門科によるJournal Clubです.ハザード比の解釈の仕方,中間解析の妥当性,エンドポイントの選択といったことを,かなり細かく議論します.12時からは,がんセンターのセミナーです.ハードコアな基礎研究者から,臨床研究のプロまで,主に外部招聘講師の話が聞けます.

 フェローは,これに加えて乳がん,消化器がん,リンフォーマのTumor Board,血液のJournal Club,さらにケースカンファもあるので,もっと大変です.しかも指紋認証で出席を管理されています.冗談ではありません.

 さて一週間に,どれだけの文献を読んだ(読まされた?)でしょうか.やりっ放しにしない工夫が,Google Documentsの活用です.カンファで使われた文献,Power Pointはアップロードされ共有されます.時系列での管理と,PDFソフトの蛍光ペン,コメント機能のおかげで後から読み返すのがずいぶん楽になります.お試しください.


白井敬祐
1997年京大卒.横須賀米海軍病院に始まり,麻生飯塚病院,札幌がんセンターと転々と研修をする.2002年ついに渡米に成功,ピッツバーグ大学で内科レジデンシー修了,サウスカロライナ医科大学で血液/腫瘍内科のフェローシップを修了.2008年7月より,同大Assistant Professor.米国腫瘍内科専門医.