HOME > 雑 誌 > medicina > バックナンバー一覧 > 56巻2号(2019年2月号) 特集の理解を深めるための22題
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特集の理解を深めるための22題


問題1

次の中から正しいものを2つ選べ.

A
ST上昇型心筋梗塞患者に対しては,アスピリン162~325 mgの咀嚼服用とともに,クロピドグレル75 mgの急速負荷投与を行う.
B
急性冠症候群に対して,薬剤溶出性ステント留置後の抗血小板薬の2剤併用療法(DAPT)は1年間の継続が推奨される.
C
患者が3つ以上の冠危険因子(脂質異常症,喫煙,高血圧,家族歴)をもつ場合には,アスピリンによる一次予防が推奨される.
D
アスピリン使用の禁忌とは,アスピリン過敏症とともに,未治療の高度高血圧,活動性出血疾患がある.
E
冠動脈バイパス術後にアスピリンとワルファリンの併用は,グラフト閉塞率の減少に寄与すると考えられている.

問題2

末梢動脈疾患(PAD)における抗血栓療法について,正しいものを2つ選べ.

A
ワルファリンの有効性が確立している.
B
アスピリンが第一選択である.
C
クロピドグレルは心筋梗塞の発症予防に有効である.
D
ワルファリンの代わりに直接経口抗凝固薬(DOAC)が推奨される.
E
シロスタゾールにはステント再狭窄の予防効果がある.

問題3

脳卒中に用いられる抗血栓療法について,正しいものを2つ選べ.

A
非心原性脳梗塞の急性期には,抗血小板薬単剤が2剤併用よりも有用である.
B
非心原性脳梗塞の慢性期には,抗血小板薬単剤が2剤併用よりも有用である.
C
非心原性脳梗塞の慢性期には,直接経口抗凝固薬(DOAC)が抗血小板薬単剤よりも有用である.
D
非弁膜症性心房細動による心原性脳塞栓症では,組織プラスミノーゲンアクチベータ(tPA)による経静脈血栓溶解療法は適応外である.
E
非弁膜症性心房細動による心原性脳塞栓症の慢性期には,DOACが抗血小板薬単剤よりも有用である.

問題4

静脈血栓症の治療に対して,正しいものはどれか.

A
直接経口抗凝固薬は高度腎機能障害例でも注意して使用できる.
B
妊娠例に対する抗凝固薬は国内において未分画ヘパリンが第一選択となる.
C
血栓溶解療法は,循環動態に関係なく,右室機能不全を有する症例に対して第一選択の治療法である.
D
血栓溶解療法と抗凝固療法は併用してはならない.
E
抗血小板薬には静脈血栓症予防効果がない.

問題5

心腔内の異常構造物に対する抗血栓療法について,正しい記述はどれか.

A
感染性心内膜炎の疣贅は血栓塞栓症の原因となるため,抗凝固療法を開始する.
B
心内血栓が明らかでなくとも,左室収縮能が高度に低下している症例では抗凝固療法を行うことで予後が改善する.
C
心内腫瘍は血栓塞栓症の原因となるため,まず抗血栓療法を開始する.
D
心内血栓の治療には基本的にワルファリンを用い,PT-INRを3.0~4.0程度に管理する.
E
心内血栓の主な原因と好発部位は,心房細動による左心耳血栓と左室収縮障害(心筋梗塞など)による左室内血栓である.

問題6

日本人に多い薬物代謝酵素CYP2C19の遺伝子多型による影響を最も受けやすい抗血小板薬はどれか.

A
プラスグレル
B
シロスタゾール
C
チカグレロル
D
アスピリン
E
クロピドグレル

問題7

抗血小板薬の使用について,以下のうち正しいものはどれか.

A
生活習慣病を有する患者に対しては,動脈硬化性疾患の一次予防として安価でエビデンスの多いアスピリンを積極的に使用すべきである.
B
抗血小板薬使用時の血圧管理については,『高血圧治療ガイドライン』により適正値が設定されている.
C
アスピリンが他の抗血小板薬に比して出血合併症をきたしやすいのは抗血小板作用が強力なためであり,成人では少量の使用にとどめる.
D
脳梗塞患者は出血リスクが高いため,いかなる場合においても抗血小板薬の2剤併用療法(DAPT)を行うべきではない.
E
アスピリンは抜歯などの出血を伴う操作に際しては,内服を中断するのが望ましい.

問題8

クロピドグレルについて,正しい記載を2つ選べ.

A
クロピドグレルはプロトンポンプ阻害薬と併用すると薬効が低下するため,併用すべきではない.
B
クロピドグレルを急性冠症候群患者に使用する際は,150 mgでローディング投与を行う.
C
クロピドグレルには薬効に個人差が存在するため,血栓リスクの高い症例では注意する必要がある.
D
クロピドグレル休薬後は5~7日で血小板機能が回復する.
E
クロピドグレルはローディング投与から4時間程度で抗血小板作用が安定する.

問題9

以下のうち,作用が可逆性で,内服中止後に作用消失が最も早い抗血小板薬はどれか.

A
アスピリン
B
チカグレロル
C
プラスグレル
D
チクロピジン
E
クロピドグレル

問題10

シロスタゾールの使用を避けるべき症例はどれか.

A
脳微小出血が多発するラクナ梗塞
B
頭蓋内狭窄を有するアテローム血栓性脳梗塞
C
下肢閉塞性動脈硬化症を合併したアテローム血栓性脳梗塞
D
陳旧性心筋梗塞と心不全を合併したアテローム血栓性脳梗塞
E
多発ラクナ梗塞を有する初期Alzheimer病

問題11

抗凝固薬の使用について,正しいものはどれか.

A
ヘパリンは,アンチトロンビンⅢ欠乏症にも使用される.
B
アルガトロバンは,ヘパリン起因性血小板減少症に使用される.
C
ワルファリンは,ビタミンKの投与で作用が増強される.
D
直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)では,薬物相互作用は報告されていない.
E
DOACは,ワルファリン同様にINRの測定による用量設定が必要である.

問題12

ヘパリン類に関して正しいものを2つ選べ.

A
半減期が最も短いのは未分画ヘパリンである.
B
低分子ヘパリンでは,ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)を発症しない.
C
HITは,過去にヘパリン投与歴がなければ発症しない.
D
フォンダパリヌクスは,アンチトロンビン依存性に活性型第Ⅹ因子(Ⅹa)を阻害する.
E
低分子ヘパリンは,プロタミンによりヘパリン同様に中和される.

問題13

以下の記述で誤っているものを2つ選べ.

A
心房細動を合併した僧帽弁形成術後の患者はダビガトランの適応ではない.
B
クレアチニンクリアランス30 mL/分未満の患者には禁忌である.
C
ベラパミルを投与している場合は1回110 mgの1日2回投与が推奨される.
D
ダビガトランを深部静脈血栓症に用いる場合は,ヘパリンによる初期治療は不要である.
E
イダルシズマブはダビガトランに特異的な中和薬であり,他のDOACに対する効果はない.

問題14

次のうち,正しいものはどれか

A
心房細動における虚血性脳卒中・全身性塞栓症の予防では,CHADS2スコアに基づき適応を判断し,CHADS2スコア2点以上で抗凝固療法を実施する.
B
心房細動における虚血性脳卒中・全身性塞栓症の予防に対する経口Ⅹa因子阻害薬投与では,必ずクレアチニンクリアランスを測定し,適応・禁忌を判断する.
C
肺血栓塞栓症(PTE)急性期における経口Ⅹa因子阻害薬の投与期間は3種類の薬剤とも同一である.
D
PTEに対し経口Ⅹa因子阻害薬を投与する場合,3種類の薬剤とも心房細動に対する投与時と同じ用量調整基準を用いて用量を決定する.
E
整形外科周術期の静脈血栓予防について,3種類の経口Ⅹa因子阻害薬すべてが適応を有す.

問題15

以下の記述のうち,正しいものはどれか.

A
米国,欧州のガイドラインでは,安定冠動脈疾患患者の抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)の期間は12カ月が推奨されている.
B
日本のガイドラインでは,安定冠動脈疾患患者のDAPT期間は,出血リスクを考慮し,6カ月が推奨されている.
C
欧州のガイドラインでは,出血高リスク患者に対しては3カ月の短期DAPTが推奨されている.
D
DAPT試験において,長期のDAPTはステント血栓症や心筋梗塞の発生率だけでなく,死亡率も低下させた.
E
塞栓リスクが高い患者の出血リスクは低く,長期のDAPTは問題なく行えると考えられる.

問題16

70歳女性.非弁膜症性心房細動に対してダビガトランを内服中だった.某日午前8時にダビガトランを内服.午前11時に突然の頭痛と左片麻痺が出現し,午後1時に当院へ救急搬送された.血圧は180/90 mmHg.意識清明で,顔面を含む左片麻痺と左半身感覚障害を認め,頭部CTで右被殻出血を認めた.検討すべき薬物治療として適切なものを2つ選べ.

A
プロトロンビン複合体
B
イダルシズマブ
C
ニカルジピン
D
ビタミンK
E
andrexanet alfa

問題17

70歳男性.65歳時より糖尿病性腎症のため血液透析を行っている.67歳時に脳梗塞を発症し,その際に発作性心房細動を認めワルファリンが開始された.今回,不安定狭心症のため冠動脈造影を行ったところ,左前下行枝に高度狭窄を認めたため,薬剤溶出性ステントが留置され,抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)も追加された.この症例について正しいものはどれか.

A
ワルファリンはPT-INR 2~2.5にコントロールする.
B
ワルファリンから直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)へ変更する.
C
ステント血栓症および塞栓症を予防するため,3剤併用療法は可能な限り長期継続する.
D
今後のDAPT期間を検討する際は,DAPTスコアに基づいて決定を行う.
E
プロトンポンプ阻害薬を開始する.

問題18

がん関連静脈血栓症について,誤っているものはどれか.

A
がんと血栓は密接な関係があり,がん関連静脈血栓症は増加傾向にある.
B
がん患者に発症する静脈血栓症は,非がん患者に比べ4~7倍とその頻度が高い.
C
がん患者は,血栓の再発率が高い一方で,出血のリスクも高いことから,抗凝固療法を施行する際には注意が必要である.
D
直接経口抗凝固薬(DOAC)は,すべてのがん症例に有効であり,投与が推奨されている.
E
がん患者への抗凝固療法は,出血などの合併症に留意しながら,がんが治癒しない限り継続することが望ましい.

問題19

42歳女性.抗リン脂質抗体症候群があり,深部静脈血栓症の既往があるため再発抑制のためXa因子阻害薬のリバーロキサバンを内服していた.結婚し,妊娠したため来院した.直ちにするべきことはどれか.

A
リバーロキサバンを中止し,ワルファリンカリウムの内服に変更する.
B
リバーロキサバンを中止し,未分画ヘパリンの自己注射と低用量アスピリンの内服を開始する.
C
妊娠判明後もリバーロキサバンを継続する.
D
リバーロキサバンを中止し,エノキサパリンの自己注射を開始する.
E
リバーロキサバンを中止し,経過観察とする.

問題20

血栓性素因について正しいものはどれか.

A
欧米で多く認められる凝固第Ⅴ因子Leiden変異は本邦でも多くみられる.
B
本邦でのプロテインS欠乏症の頻度は他の血栓性素因と同程度である.
C
本邦で認められる血栓性素因として,アンチトロンビン欠乏症は最も頻度が高い.
D
プロテインC欠乏症では,動脈系の血栓症を発症することは少ない.
E
血栓性素因を有する患者は妊娠や手術などを契機に血栓症を発症しやすい.

問題21

87歳,女性.高血圧症と糖尿病に対する薬物療法のため通院中である.心血管疾患の既往はない.身長150 cm,体重48 kg,血清クレアチニン0.62 mg/dL.診療所に徒歩にて通院し,ADLは保たれている.無症候であったが,脈の不整を自覚していたため心電図を施行したところ,心房細動を認めた.本症例に対する適切な薬物療法はどれか.

A
アスピリン100 mg/日
B
クロピドグレル75 mg/日
C
ワルファリン2 mg/日(INR 2.0~3.0でコントロール)
D
ダビガトラン300 mg/日
E
アピキサバン5 mg/日

問題22

12カ月前に新世代薬剤溶出性ステントが留置された患者に観血的処置が必要となった.現在,抗血小板薬としてはアスピリンを内服している.処置のためにアスピリンの休薬を打診された.心血管イベントを防ぐという観点から,休薬期間は最大何日にすべきか.

A
1日
B
3日
C
5日
D
7日
E
14日

(解答は本誌掲載)