HOME雑 誌medicina誌面サンプル 47巻9号(2010年9月号) > 今月の主題「理解のための24題」

今月の主題

「理解のための24題」


問題1

虚血性心疾患について誤っているものはどれか.1つ選べ.

A:急性冠症候群には不安定狭心症,急性心筋梗塞,心臓突然死が含まれる.
B:冠攣縮性狭心症は早朝に症状が出現することが多い.
C:非ST上昇型急性冠症候群には血栓溶解療法が適応となる.
D:心筋梗塞の二次予防にはLDLコレステロールを100 mg/dl未満に下げることが推奨されている.
E:不安定プラークにはT細胞や活性化マクロファージが多く存在する.


問題2

わが国の虚血性心疾患とその危険因子の疫学について,誤っているのはどれか.1つ選べ.

A:虚血性心疾患の年齢調整死亡率は時代とともに低下傾向にある.
B:虚血性心疾患の年齢調整発症率に時代的変化はほとんどない.
C:年齢調整後の高血圧頻度は上昇傾向にある.
D:年齢調整後の高コレステロール血症の頻度は近年横ばい状態にある.
E:メタボリックシンドロームは虚血性心疾患のリスクを2~3倍上昇させる.


問題3

以下の文章のうち正しくないものはどれか.1つ選べ.

A:虚血性心疾患の診断の多くは病歴でつけられる.
B:頻度や特異度の高い症状が複数あれば診断はつきやすい.
C:幅広く鑑別診断を考えて行っていくのがよい.
D:常にじっくりと病歴聴取を行うことが大切である.
E:OPQRST2Aは病歴聴取のポイントをまとめている.


問題4

60代男性.20XX年5月18日の18時頃の入浴中に胸痛が出現したが,約15分で自然消失した.翌日の午前7時に胸痛が再発,同日午前7時40分に当院受診した.来院時は胸痛が持続していたが,心電図では洞調律で有意なST―T変化は認められず,血液検査ではWBC 6,640/μl,ALT 25 IU/l,AST 26 IU/l,CPK 173 IU/l,CK-MB 7 IU/l,LDH 132 IU/lと正常範囲内であった. 症状の発症経過から急性冠症候群が疑われるが,来院時点で最も診断精度が高い検査はどれか.1つ選べ.

A:ミオグロビン
B:心筋ミオシン軽鎖
C:心臓型脂肪酸蛋白(H-FABP)
D:トロポニンT
E:トロポニンI


問題5

急性冠症候群を示唆する心電図所見ではないのはどれか.1つ選べ.

A:QRS幅増大
B:ST上昇
C:ST下降
D:陰性T波
E:U波増高


問題6

問診以外に,心筋梗塞の超急性期(発症1時間以内)の非侵襲的な診断法として最も有用なものはどれか.1つ選べ.

A:心電図
B:心エコー
C:血清のCKとCK-MB
D:トロポニンT測定
E:白血球数


問題7

冠動脈CTのよい適応はどれか.1つ選べ.

A:胸痛があり,冠動脈疾患の高リスク患者
B:2.5 mm径ステントの再狭窄の評価
C:急性冠症候群の中等度リスク患者
D:心房細動のある患者
E:無症候性の糖尿病患者


問題8

負荷心筋血流シンチグラフィについて正しいものはどれか.2つ選べ.

A:アデノシン負荷は喘息例に禁忌である.
B:左脚ブロック例では運動負荷が適している.
C:多枝冠動脈疾患において,罹患枝を高率に同定できる.
D:心電図同期法を用いて右室駆出率を評価できる.
E:負荷時の左室の一過性虚血性拡大所見は重症例で認められる.


問題9

70歳,男性.6時間前に今までに経験のない前胸部締めつけ感が出現し,15分程度で消失.その後も2時間前に同様の症状が出現し,30分程度で軽減したが,その後も軽い前胸部の違和感が出現・消退を繰り返した.心配になり,救急外来を受診.身体所見:脈拍76/分,整.血圧156/78 mmHg,心音雑音なし.呼吸音清明検査所見:心電図には明らかなQ波,ST変化を認めず.前胸部誘導に陰性U波を認める.心臓超音波検査にて,特に壁運動異常なし.トロポニンT陰性. 本症例に対する対応として,正しいものはどれか.2つ選べ.

A:ニトログリセリンをもたせて帰宅させ,近日中に循環器科外来を受診させる.
B:エルゴメーターまたはトレッドミル検査にて心筋虚血を評価する.
C:入院させてヘパリン,硝酸薬投与,心電図持続モニタリングを行う.
D:カテーテル検査の準備を行い,早期にカテーテル・血行再建を行う.
E:経静脈的血栓溶解療法〔組織プラスミノーゲンアクチベータ(t-PA)〕を実施する.


問題10

70歳の男性で,胸痛出現2時間後に来院した.血栓溶解療法の適応となるのはどれか.1つ選べ.

A:非ST上昇型急性心筋梗塞
B:ST上昇型急性心筋梗塞で90分以内にPCIによる再灌流が可能
C:ST上昇型急性心筋梗塞で90分以内にPCIによる再灌流が不可能
D:ST上昇型急性心筋梗塞で8年前に出血性脳梗塞の既往がある.
E:ST上昇型急性心筋梗塞で急性大動脈解離が否定できない.


問題11

院外で発生した心停止に対して,一般市民が行う救命処置の行動として望ましいものはどれか.2つ選べ.

A:倒れている成人男性を発見した.口をつけて人工呼吸を行うことに抵抗があったので,直ちに119番に通報をして,何もせずに救急車の到着を待った.
B:交通事故の負傷者の救助は警察が到着するまで何もしないで待つ.
C:AEDでショックを与えた後「電気ショックの必要はありません」と指示が出たため,傷病者に触れずにパッドや電源をそのままにして救急隊到着まで待った.
D:目の前で子どもが倒れた.AEDに成人用パッドしか装備されていなかったので,成人用パッドを使用した.
E:目の前で成人が倒れた.救助者は自分自身しかいなかったため,いったん患者の傍を離れ,近くの公衆電話から119番通報をし,救急隊が到着するまで胸骨圧迫を行った.


問題12

安定狭心症例に対する薬物治療について,誤っているのはどれか.2つ選べ.

A:アスピリンやスタチンは長期予後を改善する.
B:β遮断薬は症状の緩解に有効である.
C:硝酸薬は長期予後を改善する.
D:短時間作用型カルシウム拮抗薬は長期予後を改善する.
E:ACE阻害薬は長期予後を改善する.


問題13

PCI後の抗血小板療法について,誤っているものはどれか.1つ選べ.

A:薬物溶出性ステント(DES)留置後で非心臓手術を控えた患者の抗血小板薬を完全に中止するとステント血栓症をきたすことがある.
B:ベアメタルステント(BMS)留置後の患者の手術は,できればPCI後30~45日待つのが望ましい.
C:抜歯の際にはアスピリンを中止してもよい.
D:2剤併用抗血小板療法はBMSの場合,1カ月間が推奨される.
E:2剤併用抗血小板療法はDESの場合,12カ月間が推奨される.


問題14

冠動脈バイパス術について正しいものはどれか.2つ選べ.

A:バイパスグラフトとして大伏在静脈グラフトの使用は長期開存性の観点から極力控えるべきである.
B:糖尿病患者では両側内胸動脈の使用は望ましくない.
C:内胸動脈グラフトを狭窄度の低い冠動脈に吻合すると,やせ現象(string sign)が認められることが多い.
D:術中血行動態不良の症例には心拍動下冠動脈バイパス術が適している.
E:上行大動脈硬化性病変の症例ではグラフト自動吻合器の活用が有用である.


問題15

次に挙げる運動療法の身体効果のなかで,証拠が十分であるものとされるのはどれか.1つ選べ.

A:左室収縮能の改善
B:心筋灌流の改善
C:炎症性サイトカインの減少
D:II型からI型への筋線維型の変換
E:冠動脈性事故発生率の減少


問題16

次の記述のなかで正しいものはどれか.2つ選べ.

A:すべての急性冠症候群患者に禁忌がない限り,アスピリン1日75~150 mgを長期投与する.
B:アスピリンとチエノピリジン系薬剤を併用すると胃潰瘍のリスクが高まるので,プロトンポンプ阻害薬と併用するほうがよい.
C:急性冠症候群でアスピリン投与下でワルファリンを投与するときには,低用量(INR 1.0~1.5)でコントロールする.
D:抜歯時にはアスピリン休薬期間は3日,チエノピリジン系薬剤は5日,両者の併用で7日とされている.
E:ワルファリン投与例の大手術時には,術前3~5日までにワルファリンを中止し,半減期の短いヘパリンにて,APTTが1.5~2.5倍になるようにコントロールする.


問題17

禁煙治療について,次のうち望ましくないのはどれか.1つ選べ.

A:12歳の喫煙男子生徒に対してのニコチンパッチによる治療
B:妊娠中の喫煙女性に対してのバレニクリンによる治療
C:48歳の喫煙男性(3年前に狭心症の治療歴あり,以後無症状)に対してのニコチンパッチによる治療
D:うつ傾向にて心療内科治療中の喫煙女性(1日喫煙本数40本)に対して治療薬を使用せずに行動療法のみによる禁煙治療
E:95歳の男性(COPDにて加療中)に対してのバレニクリンによる治療


問題18

急性心筋梗塞を罹患した患者に対するLDLコレステロール管理目標値はどれか.1つ選べ.

A:160 mg/dl以下
B:140 mg/dl以下
C:120 mg/dl以下
D:100 mg/dl以下
E:冠危険因子の数により決定される.


問題19

プライマリケアにおける抗血小板薬の使用について,正しいものはどれか.1つ選べ.

A:抗血小板薬により心筋梗塞,脳卒中を予防できるので,プライマリケア医は積極的に抗血小板薬を使用すべきである.
B:アスピリンに代表される抗血小板薬の使用により,心筋梗塞,脳梗塞の発症をほぼ完全に予防できる.
C:抗血小板薬は出血性合併症が増加しないように工夫された薬剤である.
D:抗血小板薬には抗血栓効果のメリットと出血性合併症増加のデメリットがあるため,使用にあたっては十分なインフォームド・コンセントを得るべきである.
E:本邦における抗血小板薬の適応は,欧米のデータベースに従って決定すべきである.


問題20

心筋梗塞後の投与で左室リモデリング抑制効果が証明されている薬剤はどれか.2つ選べ.

A:アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬
B:ジギタリス
C:エンドセリン拮抗薬
D:マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)阻害薬
E:hANP(カルペリチド)


問題21

心機能が正常の安定狭心症に対する薬物療法について,誤っているのはどれか.2つ選べ.

A:アスピリンは長期予後を改善する.
B:スタチンは長期予後を改善する.
C:ACE阻害薬は長期予後を改善する.
D:β遮断薬は長期予後を改善する.
E:硝酸薬は長期予後を改善する.


問題22

重症虚血性心疾患に対する再生医療において,有効性が証明された細胞種はどれか.1つ選べ.

A:骨髄由来細胞
B:骨格筋芽細胞
C:心筋幹細胞
D:iPS細胞
E:なし


問題23

冠動脈血管内画像検査において,脆弱性プラーク(vulnerable plaque)の特徴として考えられている所見はどれか.2つ選べ.

A:偏心性の脂質成分に富むプラーク
B:厚い線維性被膜を伴ったプラーク
C:白色調のプラーク
D:線維性プラーク
E:血栓を伴うプラーク


問題24

微小血管狭心症について,正しいのはどれか.1つ選べ.

A:高齢者に多く認められる.
B:男性に多い疾患である.
C:喫煙との関係が示唆されている.
D:硝酸薬への反応は半数以上で不良である.
E:一般に予後は良好とされている.


(解答は本誌掲載)