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今月の主題

「理解のための25題」


問題1

脳卒中の一次予防,二次予防で最も重要なリスク因子はどれか.1つ選べ.

A:糖尿病
B:脂質異常症
C:高血圧
D:メタボリック症候群
E:喫煙


問題2

低リスクの若年高血圧患者において第一選択薬とはならないのはどれか.1つ選べ.

A:利尿薬
B:カルシウム拮抗薬
C:α遮断薬
D:アンジオテンシン変換酵素阻害薬
E:アンジオテンシンII受容体拮抗薬


問題3

慢性腎臓病(CKD)合併高血圧にて近医通院中の患者が下腿浮腫にて紹介されてきた.尿血液検査では尿蛋白定量1,200 mg/g-cr,血清クレアチニン1.2 mg/dl,血清ナトリウム132 mEq/l,血清カリウム4.6 mEq/lであった.この患者の治療として誤っているものはどれか.2つ選べ.

A:低ナトリウム血症に対して半生食による輸液を行う.
B:浮腫に対してサイアザイド系利尿薬を投与する.
C:アンジオテンシンII受容体阻害薬を少量から開始する.
D:食事指導として塩分摂取制限を行う.
E:食事指導として果物や野菜の摂取を推奨する.


問題4

高齢者の高血圧治療について,正しいものを1つ選べ.

A:75歳以上の高齢者では血圧は160/100 mmHg未満にならないようにコントロールする.
B:高齢者では降圧は緩徐に行う.
C:偽性高血圧症は高齢者で少ない.
D:80歳以上では,降圧治療により生命予後の改善効果は期待できない.
E:降圧利尿薬は高齢者では避ける.


問題5

糖尿病合併高血圧の降圧療法に関して正しいものはどれか.1つ選べ.

A:糖尿病網膜症がある場合は急激な降圧は避ける.
B:血圧値が135/85 mmHgであれば,生活習慣の改善のみとする.
C:十分な降圧は細小血管障害のリスクも減少させる.
D:RA系抑制薬が第一選択薬であり,十分な降圧を得るためにACE阻害薬とARBの併用も行う.
E:利尿薬は耐糖能悪化も懸念されるので,RA系抑制薬とCCBに続く第三選択薬として少量投与とする.


問題6

メタボリック症候群に関する以下の記述において,正しいものを1つ選べ.

A:メタボリック症候群の診断基準はいくつかあるが,腹囲の測定はどの基準でも必須項目である.
B:日本人(アジア人)は比較的肥満が高度であっても糖尿病になりにくい.
C:メタボリック症候群の概念は,その心血管病に対する危険度が糖尿病や高血圧,脂質異常症などその構成因子のリスクの和を上回ることが明らかになり,創出された.
D:日本の基準でメタボリック症候群と診断された場合,脳梗塞発症の危険度は健常人のおよそ5倍以上になることが証明されている.
E:腹囲95 cm,空腹時の中性脂肪100 mg/dl,HDL50 mg/dl,空腹時血糖が100 mg/dl,心電図で左室肥大を認め,複数回測定して血圧が162/90 mmHgの男性はただちに降圧薬治療を開始する.


問題7

仮面高血圧の高リスクではないのはどれか.1つ選べ.

A:喫煙者
B:精神的ストレス
C:心拍数の少ない者
D:起立性低血圧
E:肥満


問題8

急性心筋梗塞で高値を認めない生体バイオマーカーはどれか.1つ選べ.

A:CK-MB
B:トロポニンT
C:H-FABP
D:BNP
E:D-dimer


問題9

高血圧患者に以下の特徴(左)がある時,考えるべき疾患(右)として正しくないものはどれか.1つ選べ.

A:皮膚菲薄化,易出血性,好酸球数低下─褐色細胞腫
B:血清カリウム3.6 mEq/l─原発性アルドステロン症
C:AT1受容体拮抗薬開始時の30%以上の血清クレアチニン値上昇─腎血管性高血圧
D:小顎症,いびき─睡眠時無呼吸症候群
E:高齢者,変形性膝関節症,NSAID─薬剤誘発性高血圧


問題10

閉塞型睡眠時無呼吸症候群に対するCPAP治療について,正しいもの2つを選択せよ.

A:重症高血圧が正常化する.
B:血管内皮機能が改善する.
C:1日2時間の治療でも血圧などの改善が期待できる.
D:特に夜間血圧の低下が認められる.
E:副交感神経活動の正常化が生じる.


問題11

利尿薬について正しいのはどれか.2つ選べ.

A:ループ利尿薬とサイアザイド系利尿薬は低カリウム血症を起こすことがある.
B:ループ利尿薬とサイアザイド系利尿薬を併用しても相乗効果は期待できない.
C:ループ利尿薬はカルシウムの尿中排泄を増加させ,血清カルシウムを低下させる.
D:ループ利尿薬やサイアザイド系利尿薬は低マグネシウム血症を起こさない.
E:ループ利尿薬やサイアザイド系利尿薬は低尿酸血症を起こしやすい.


問題12

次のうち誤った記載はどれか.1つ選べ.

A:動脈硬化の進展機序には血管内皮機能障害,炎症,酸化ストレスが重要である.
B:血管内皮が障害されると一酸化窒素による血管平滑筋細胞増殖促進作用により動脈硬化が進展する.
C:血管内皮が障害されると血液凝固活性が亢進,線溶活性が低下する.
D:血管内皮が脱落した傷害血管壁では露出した内皮化組織に粘着した血小板層に白血球が接着する.
E:活性酸素種は平滑筋細胞増殖を促進させるとともにLDLを酸化修飾することで動脈硬化を進展させる.


問題13

aortic stiffnessおよび脈派解析に関して正しい記載はどれか.下記より1つ選べ.

A:aortic stiffness とは動脈硬化性疾患による大動脈の損傷の程度を表す言葉であるが,一方で動脈硬化性疾患発症のリスクファクターとしても重要である.
B:aortic stiffnessの増加によってpulse wave velocity(PWV)は亢進するがこれは中心血圧の上昇によるものであり,降圧によって正常化する.
C:PWVの測定には熟練が必要であり,日常臨床での応用はまだ期待できない.
D:腕動脈で測定した血圧に対し,腹部大動脈付近の血圧は中心血圧と称され,主にカテーテル検査時に測定される重要な指標である.
E:中心血圧の測定は従来の末梢血圧に替わるものであり,中心血圧さえ測定すれば末梢血圧を測定する必要はない.


問題14

次の文章のうち間違っているものはどれか.3つ選べ.

A:サイアザイド系利尿薬は糖尿病では糖代謝を悪化させるため禁忌である.
B:高血圧治療中に血糖値の上昇をみたらまず薬のせいであると考える.
C:利尿薬投与後にクレアチニンが上昇したらただちに中止する.
D:低用量であっても利尿薬投与中のカリウム低下は予防すべきである.
E:痛風の既往のない患者において利尿薬投与中に尿酸が上昇しても節酒,減量等生活指導を積極的に行い,ただちに利尿薬を中止しなくてもよい.


問題15

降圧薬としてのβ遮断薬に関する記述のうち誤った項目を1つ選べ.

A:β遮断薬の積極的適応には心不全,頻脈,狭心症,心筋梗塞後が挙げられているが,安静狭心症あるいは安静・労作性狭心症ではCa拮抗薬が第一選択になる.
B:β遮断薬とCa拮抗薬の併用は推奨されているが,非DHP系Ca拮抗薬との併用は過度の降圧,心不全,高度房室ブロック,心停止のリスクがあり注意が必要である.
C:一般にβ遮断薬服用例では新規糖尿病発症の頻度は高いが,ARB,ACE阻害薬,Ca拮抗薬服用例では新規糖尿病の発症頻度は増加しない.
D:高血圧治療ガイドラインではCa拮抗薬,ARB,ACE阻害薬,利尿薬,β遮断薬が第一選択薬とされているが,一部のガイドラインは第一選択薬よりβ遮断薬を除外している.
E:β遮断薬はβ1選択性β遮断薬,非選択性β遮断薬,αβ遮断薬,ISA(内因性交感神経刺激作用)の有無などと多様である.付随的な作用が異なると,心拍数,末梢循環,糖・脂質代謝などへの臨床的な効果が異なる.


問題16

ACE阻害薬投与が禁忌である症例はどれか.1つ選べ.

A:片側の腎動脈狭窄症
B:心筋梗塞発症後24時間以内
C:気管支喘息
D:妊娠
E:高度徐脈


問題17

アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)に関する次の記述のうち,誤っているのはどれか.1つ選べ.

A:ARBはアンジオテンシンII1型受容体を阻害する.
B:ARBは,心不全治療薬のひとつである.
C:ARBは,腎機能低下症例には禁忌である.
D:ARBは,糖尿病の新規発症を抑制する効果がある.
E:ARBで降圧不十分なときの併用薬として,Ca拮抗薬や少量の利尿薬が良い.


問題18

以下の中で血漿レニン濃度を上昇させる薬剤はどれか.1つ選べ.

A:レニン阻害薬
B:ACEI
C:ARB
D:ARBとACEI
E:すべて


問題19

高血圧に合併する病態のうちCa拮抗薬が第一選択薬として積極的適応とならない病態はどれか.2つ選べ.

A:左室肥大
B:腎不全
C:脳血管障害慢性期
D:糖尿病
E:高齢者


問題20

抗アルドステロン薬の適応と考えられない疾患は次のどれか.

A:心筋梗塞後
B:急性腎不全
C:慢性腎臓病
D:重度心不全
E:糖尿病(腎症なし)


問題21

降圧治療における併用療法と合剤について正しいものを1つ選べ.

A:高リスク群の患者に対して初期から常用量の2剤併用療法が行われる.
B:併用療法が必要な患者に対して合剤は第一選択薬として使用できる.
C:2剤の併用療法と合剤の服薬アドヒアランスに差はない.
D:本邦ではACE阻害薬/利尿薬,ACE阻害薬/Ca拮抗薬の合剤が使用できる.
E:併用療法において本邦では利尿薬の使用頻度が低い.


問題22

間違っているのはどれか.1つ選べ.

A:米国の高血圧ガイドライン(JNC7)では,ACE阻害薬を心筋梗塞後患者,高リスク冠動脈疾患患者,脳卒中再発予防のために積極的に使用すべきとしているが,ARBにはこの推奨はない.
B:BPLTTCが行っているメタアナリシスでは,ACE阻害薬に降圧と独立した冠動脈疾患抑制効果が認められたが,ARBには認められなかった.
C:欧米ではARBよりACE阻害薬が多く処方されている.
D:ACE阻害薬とARBのアドヒアランスはほぼ同等である.
E:日本における通常用量で比較すると,ARBがACE阻害薬より降圧効果が大きい.


問題23

急性期脳梗塞の患者で,降圧療法を考慮すべき場合はどれか.2つ選べ.

A:意識障害のある患者
B:糖尿病を合併している患者
C:重症貧血を合併している患者
D:未破裂胸部大動脈瘤を合併している患者
E:発症3時間以内に血栓溶解療法を実施する予定の患者


問題24

高血圧に対する減塩指導で正しいものはどれか.2つ選べ.

A:降圧利尿薬服用者に対して積極的な減塩指導は不要である.
B:野菜・果物の積極的摂取は減塩の手助けになる.
C:成長期にある小児では減塩はしないほうがよい.
D:高齢者は腎からNa喪失傾向があるので,6 g/未満まで減塩する必要はない.
E:肥満合併者ではカロリー制限による減量が減塩にも結びつくことが期待される.


問題25

治療抵抗性高血圧の要因となるものを1つ選べ.

A:降圧利尿薬の使用
B:芍薬甘草湯の使用
C:トノメトリー法による血圧測定
D:CPAPの使用
E:良好な服薬アドヒアランス


(解答は本誌掲載)