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今月の主題

「理解のための27題」


問題1

あなたはBLSプロバイダーコースを受講してから4年が経過し,普段救急医療に従事していない内科医である.hands-only CPRの適応となる状況はどれか.1つ選べ.

A:内科病棟回診中,50代男性患者が目の前で突然倒れた.
B:公園で,幼稚園児が目の前で突然倒れた.
C:学会会場のトイレで,60代女性が,倒れていた.
D:レストランで,30代男性が食事中急にむせこみ始め,苦しみだし,しばらくして倒れた.
E:デパートで買い物中,60代男性が,突然目の前で倒れた.


問題2

18歳男性,バイク走行中自己転倒し,下腿の変形と胸部の打撲を主訴に搬送された患者.当初,意識清明,バイタルサインは安定していたが,来院後20分で意識レベルが低下した.
まず行うべき処置はどれか.1つ選べ.

A:気道開通の確認
B:呼吸音の聴取
C:血圧測定
D:GCSによる意識レベルの評価
E:頭部CT検査


問題3

ショック対応で正しいものを1つ選べ.

A:超音波でkissing signを認め,輸液速度を全開にした.
B:心原性ショックを認めドブタミンを使用した.
C:ショック患者が瞳孔不同を呈していたので頭部CTを施行した.
D:β遮断薬内服中のアナフィラキシーショックなのでまずグルカゴンを使用した.
E:SpO2がいいので肺塞栓は否定的と考えた.


問題4

生来健康な57歳の男性.左手の切創で救急室を受診した.来院時の血圧は190/108 mmHg.切創部位の疼痛のほかに自覚症状はなく,全身の身体診察でもほかの部位に異常所見はない.外傷の治療後に血圧を再測定すると186/112 mmHgであった.病歴では,血圧以外の心血管リスクファクター(喫煙,脂質異常,糖尿病,肥満,家族歴)はない.
高血圧への対応として正しいものはどれか.1つ選べ.

A:直ちにニカルジピンの静注投与を行い,頭部CTを撮影する.
B:直ちにニカルジピンの静注投与を行い,経過観察目的の入院を指示する.
C:直ちにニフェジピンの舌下投与を行い,正常血圧になったら帰宅させる.
D:直ちにニフェジピンの経口投与を行い,正常血圧になったら帰宅させる.
E:降圧薬の投与は行わず,現時点では心配のないことを説明し,1週間以内の外来受診を指示して帰宅させる.


問題5

次のうち,正しいものはどれか.2つ選べ.

A:原因不明の低体温は,敗血症の所見の1つである.
B:感染性心内膜炎のような間欠性菌血症では,検出率を上げるため発熱する直前に血液培養を採取する.
C:血液培養の採取量と陽性率は相関しない.
D:肺炎球菌性肺炎では血液培養の陽性率は10%以下である.
E:脾臓摘出術後は,重症感染症の危険因子である.


問題6

次のうち,正しいものはどれか.1つ選べ.

A:意識障害と呼吸不全の鑑別は,意識障害が優先される.
B:片麻痺を呈する意識障害患者は,必ず脳血管障害が原因である.
C:軽症低体温の場合,心室細動を起こすリスクが高まる.
D:血中アンモニア濃度と,肝性脳症の重症度は良く相関する.
E:ブドウ糖投与によって,Wernicke脳症を誘発する可能性がある.


問題7

62歳の女性.孫のために五月人形を用意していて,兜を置いた瞬間に今までにない頭痛を自覚した.しばらく我慢していたら治まってきたが心配で来院.来院時はほぼ症状消失.既往歴としては軽度の高血圧のみ.降圧薬が近医から処方されている.意識清明血圧205/110 mmHg,脈拍82/分,regular SpO2 99%(室内気)眼球運動などの脳神経系,四肢の温痛覚などの神経学的所見は正常.頭部CTでは明らかな出血は認めない.側頭動脈の圧痛や副鼻腔の叩打痛も認めず眼底も正常.
次に行うべき処置はどれか.

A:降圧
B:安静にて経過観察
C:2時間後に頭部CT再検
D:腰椎穿刺
E:帰宅


問題8

急性心筋梗塞で,無痛性のリスクとならないのは次のどれか.1つ選べ.

A:糖尿病
B:高齢
C:女性
D:脂質異常症
E:心不全


問題9

次のうち大動脈解離について正しいものはどれか.

A:大動脈痛と言われる裂けるような痛みの自覚はわずか1/4.
B:来院時にはすべての解離で痛みがある.
C:心筋梗塞合併が解離の半数にある.
D:血圧左右差と神経局在所見の頻度は少ないが診断に有用な所見.
E:Dダイマー 500 ng/ml以上は大動脈解離の診断に有用な所見.


問題10

1時間前に発症した息切れを主訴に来院した30歳男性で,下腿の疼痛,腫脹はない.頻脈や頻呼吸もなかった.日常生活は普通に生活していて,飲酒,喫煙の習慣はない.肺梗塞や深部静脈血栓症の既往はない.スクリーニングとして以下の検査を実施した.肺梗塞を否定するために最も優れた検査はどれか.1つ選べ.

A:Dダイマー
B:胸部X線写真
C:12誘導心電図
D:動脈血血液ガス検査
E:心臓超音波検査


問題11

次の失神患者のなかでSan Francisco Syncope Ruleでlow riskにあたるのはどれか.1つ選べ.

A:55歳男性,血圧180/54 mmHg,脈拍90/分,呼吸12/分,10代で心不全.現在は元気でサッカーもこなす.
B:22歳男性,血圧122/84 mmHg,脈拍68/分,呼吸10/分,心電図に異常なし.実兄が24歳で突然死.
C:82歳女性,血圧160/64 mmHg,脈拍92/分,呼吸30/分,心電図に異常なし.通院歴なし.
D:60歳男性,血圧92/74 mmHg,脈拍106/分,呼吸16/分,心電図肢誘導でlow voltage.
E:34歳女性,血圧100/68 mmHg,脈拍95/分,呼吸10/分,心電図でQTc 0.52 秒,QRS 0.16 秒.


問題12

虫垂炎に関する以下の判断のうちで,最も適切なものはどれか.

A:heel drop testが陰性だったので,虫垂炎は否定的だと考えた.
B:エコーで有意な所見が見られなかったので,虫垂炎は否定的だと考えた.
C:Blumberg徴候が陽性だったので,虫垂炎で間違いないだろうと考えた.
D:白血球増多がみられたので,虫垂炎で間違いないだろうと考えた.
E:obturator(内閉鎖筋)徴候が陰性だったので,虫垂炎は否定的だと考えた.


問題13

尿管結石の患者において,肉眼的/顕微鏡的血尿が偽陰性となる割合はどれか.1つ選べ.

A:0~10%
B:10~30%
C:30~50%
D:50~70%
E:70~90%


問題14

次のうち,誤っているものを1つ選べ.

A:認知症患者は訴えが非典型になりやすい.
B:精神疾患患者は身体所見が非典型になりやすい.
C:画像診断の進歩により,腹痛の診断率は90%以上に向上した.
D:腸閉塞の原因検索では骨盤周囲までしっかりと読影しなければならない.
E:腹痛患者で,身体所見に特に異常なく,血液検査,単純X線検査,腹部超音波検査が正常でも,致死的疾患が潜んでいる可能性がある.


問題15

βブロッカーを内服中の患者のアナフィラキシー.まず投与すべきものを1つ選べ.

A:エピネフリン静注
B:ステロイド
C:抗ヒスタミン薬
D:エピネフリン筋注
E:グルカゴン


問題16

成人の脳出血の対応で,正しいものはどれか.2つ選べ.

A:視床出血がみられたが,半身の軽度の痺れのみであったので,翌日の脳神経外科受診を指示した.
B:意識,バイタルサインに異常のある患者は,可能な限り安楽にし,酸素投与,モニタ装着,静脈ルート確保を行う.
C:収縮期血圧180 mmHg未満,または平均血圧130 mmHgを目標に降圧し,経過を観察する.
D:カルシウム拮抗薬は,脳圧亢進の副作用があり,使用してはならない.
E:脳出血患者の高血糖は,直ちに速効型インスリンを用いて正常化させなければならない.


問題17

細菌性髄膜炎の診断について正しいものはどれか.1つ選べ.

A:発熱,頭痛がなければ,細菌性髄膜炎は否定できる.
B:発熱,項部硬直,意識障害がいずれも認めない場合には,細菌性髄膜炎を除外できる.
C:Kernig徴候やBrudzinski徴候は50%以上の患者で認められる.
D:Jolt accentuationは感度が97%なので,陽性なら診断を確定できる.
E:糖尿病や免疫不全の患者では症状や所見が典型的となる.


問題18

ST上昇型急性心筋梗塞の対応と治療の説明で正しいものはどれか.1つ選べ.

A:歩いて来院した患者(walk-in患者)の場合,対応が遅れても仕方がない.
B:血栓溶解療法は禁忌である.
C:患者来院から30分以内に心電図などの診断的検査を行わないといけない.
D:患者来院から,冠動脈内バルーンの初回拡張までの時間(DBT;door-to-baloon time)は90分以内である.
E:再灌流療法の選択において米国では日本よりもprimary PCI〔direct PCI(percutaneous coronary intervention)〕が多く選択されている.


問題19

肺炎で入院加療し,1カ月前に退院した担癌患者.発熱と下痢を認めるようになり,しばらく解熱薬で様子みていたが改善せず,次第に意識混濁を認めるようになったため救急搬送された.来院時の平均動脈血圧60 mmHg,脈拍120回/分,体温39℃.敗血症性ショックとして大量輸液やノルアドレナリン投与開始したが反応はなかった.Ht25%であった.また,入院後のCDtoxin Aが陽性であった.以下のうち治療として考慮するべきものとして不適切なものはどれか.1つ選べ.

A:赤血球輸血
B:バンコマイシン125 mg 経管チューブより4回/日
C:ドブタミン投与追加
D:さらなる大量輸液
E:ハイドロコルチゾン500 mg/日


問題20

抗がん剤の嘔吐予防に使用される薬剤はどれか.2つ選べ.

A:メトクロプラミド
B:アプレピタント
C:デキサメサゾン
D:ジフェンヒドラミン
E:ハロペリドール


問題21

75歳の女性.慢性心房細動,高血圧にて通院中.本日片麻痺・失語のため受診.4時間前までは普段と変わりなかったが,1時間前に家族が寝室で倒れている患者を発見した.右の手足を動かさず,しゃべらなくなったため,受診させたという.診療所での対応として,誤っているものを1つ選べ.

A:簡易キットで血糖を測定する.
B:rt-PA適応例として,専門高次医療機関に搬送する.
C:血圧を測定する.
D:迅速な身体診察を行う.
E:既往歴と服薬を確認する.


問題22

患者評価項目の中で,TIA後2日以内の脳梗塞発症のリスクとの関連が示されていないものはどれか.1つ選べ.

A:症状持続時間
B:年齢
C:糖尿病
D:意識消失
E:言語障害


問題23

次のうち,正しい記述はどれか.2つ選べ.

A:胸痛時にとった心電図が正常であれば,心筋梗塞は否定できる.
B:発症3~4時間の採血で心筋マーカーが上昇していなければ,心筋梗塞は否定できる.
C:心エコーで検出できない心筋梗塞がある.
D:TIMIリスクスコアで低リスク(0~1)であっても,心筋梗塞は否定できない.
E:ST上昇型急性心筋梗塞にはCCTA(coronary computed tomographic angiography)が有効である.


問題24

70歳男性.生来健康.1週間続く咳と前日より38℃台の発熱を認めたため来院.体温39℃,SpO2 95%以外はバイタルに異常は認めず.採血上も大きな変化を認めず比較的元気だったが念のため経口βラクタム系抗菌薬を処方して帰宅とした.1週間後,熱は軽快したが咳が続くと言い再来院した.胸部X線撮影したところ全肺野にスリガラス状陰影を認めた.抗菌薬は何を使用するか.1つ選べ.

A:アンピシリン
B:アンピシリン・スルバクタム
C:アジスロマイシン
D:メロペネム
E:リファンピシン


問題25

単純型熱性痙攣とするのにふさわしくない項目を含むのは次のうちどれか.1つ選べ.

A:痙攣発作後,易刺激性などの神経学的異常を示さない5歳児
B:38.5℃の発熱とともに12分前後続いた全般性痙攣
C:39℃の発熱とともに5分前後痙攣の続いた6カ月児
D:5分の痙攣に引き続き5分の意識障害がみられた後に意識清明となった1歳児
E:以前水頭症と診断された8カ月児の38.5℃の発熱を伴う痙攣


問題26

急性緑内障発作で特徴的な有意所見はどれか.1つ選べ.

A:RAPD(relative afferent pupillary defect)陽性
B:患側の縮瞳
C:cherry red spot
D:中心暗転
E:毛様充血


問題27

せん妄の主要因となり得ないものはどれか.1つ選べ.

A:低血糖
B:一酸化炭素
C:集中治療環境
D:偶発性低体温
E:アルコール


(解答は本誌掲載)