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今月の主題

「理解のための17題」


問題1

感染症診療の流れについて,不適切なものを以下から1つ選べ.

A:患者の背景が異なれば,感染症の原因微生物は異なる.
B:感染症治療が開始される時点では,とりあえず抗菌力に優れた広域スペクトラムの抗菌薬を選択する.これをempiric therapyと呼ぶ.
C:原因微生物が判明すれば,現在治療中の臓器・微生物に対して第一選択である抗菌薬に治療を変更する.これをdefinitive therapyと呼ぶ.
D:感染症をきちんと治療するためにはpharmacokinetics/pharmacodynamicsに基づいた十分な量・適正な投与回数で抗菌薬を使う必要がある.
E:適切な経過観察を行うには,各疾患の自然経過つまり「どのような過程を経てよくなっていくか」をよく理解しておく必要がある.


問題2

臨床疫学に関する次の説明のうち誤っているものはどれか.1つ選べ.

A:検査前確率は,問診と診察から得られる情報とこれまで集積された疫学データからおおよそ予測は可能である.
B:検査後確率は検査前確率と行った検査の特性から推定できる.
C:陽性尤度比とは,検査が陽性のときにどのくらい疾患が存在しやすいかをオッズを用いて示したものである.
D:陰性尤度比とは,検査が陰性のときにどのくらい疾患が発症しにくいかをオッズを用いて示したものである.
E:検査後確率は「検査前確率×尤度比」から算出できる.


問題3

嫌気性菌感染症の治療薬として不適切なものはどれか.1つ選べ.

A:アンピシリン・スルバクタム
B:ゲンタマイシン
C:セフメタゾール
D:メロペネム
E:クリンダマイシン


問題4

妊娠12週の24歳女性.2日前からの咽頭痛を主訴に来院.咳嗽はない.身体所見にて,38.6℃の発熱あり,左扁桃の腫脹と発赤を認める.また後頸部にリンパ節腫脹を伴っていた.咽頭スワブにてA群溶連菌迅速抗原診断キットを使用したところ陰性であった.経口抗菌薬を処方する場合,どれが適切か.1つ選べ.

A:アモキシシリン(アモリン®,サワシリン®
B:アモキシシリン・クラブラン酸(オーグメンチン®
C:ベンジルペニシリン(バイシリンG®
D:クラリスロマイシン(クラリス®
E:レボフロキサシン(クラビット®


問題5

生来健康な45歳女性.来院当日,ネコの喧嘩を仲裁していたところ右手掌を噛まれた.その後,同部位が腫れてきたため来院.右手に腫脹,発赤と歯形を認めた.腱損傷,神経損傷は認めない.創部を開放して破傷風トキソイドを接種し,外来フォローすることとなったが,抗菌薬の選択としてどれが適切か.1つ選べ.

A:クリンダマイシン(ダラシン®
B:レボフロキサシン(クラビット®
C:セファレキシン(L-ケフレックス®
D:アモキシシリン(アモリン®,サワシリン®
E:クラリスロマイシン(クラリス®


問題6

80歳男性.脳外科手術後,シャントが挿入されている.発熱を認め,髄液の細胞数増加,グラム染色でグラム陰性桿菌が認められた.腸内細菌科や緑膿菌を想定し,local factorを考慮し,セフタジジムとゲンタマイシンを選択した.その後,髄液の培養結果でセファゾリン,セフォチアム,セフトリアキソン,セフタジジムのいずれにも感受性の大腸菌と判明した.選択すべき抗菌薬は以下のうちどれか.1つ選べ.

A:セファゾリン
B:セフォチアム
C:セフメタゾール
D:セフトリアキソン
E:セフタジジム


問題7

グリコペプチド系による治療が適切でないのはどれか.1つ選べ.

A:メチシリン耐性表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)による人工関節感染症
B:メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)による手術創感染症
C:ペニシリン耐性肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)による髄膜炎
D:アンピシリン感受性腸球菌(Enterococcus faecalis)による肝膿瘍
E:Corynebacterium属によるカテーテル関連血流感染症


問題8

アミノグリコシド系抗菌薬の使い方の実際について正しいのはどれか.1つ選べ.

A:初期投与量は腎機能に合わせて減量する.
B:クレアチニンクリアランス推定値は当てにならないため使用しない.
C:分布容量が増加するような状況では十分なピーク値が得られない場合があり,頻繁にピーク値・トラフ値を測定する.
D:ピーク値・トラフ値をモニタリングすれば耳毒性は起こらない.
E:感染性心内膜炎では起因微生物にかかわりなく1日分割法MDDでアミノグリコシドを使用する.


問題9

次のうち,通常キノロン系薬剤が第1選択とならない疾患はどれか.1つ選べ.

A:レジオネラ肺炎
B:細菌性赤痢
C:溶連菌性扁桃炎
D:サルモネラ菌血症


問題10

エリスロマイシン投与時に注意すべき内容について正しいものを1つ選べ.

A:腸管からの吸収は良好でほぼ100%吸収される.
B:薬物相互作用は他のマクロライド系薬剤に比べて少ないのが特徴である.
C:Moraxella catarrhalisHaemophilus influenzaeといった気道感染症の原因微生物にも有効である.
D:レジオネラ感染症には静注で利用できる薬剤の選択肢の一つである.
E:マクロライド耐性の黄色ブドウ球菌感染症ではクリンダマイシンを用いる.


問題11

カルバペネム系薬剤について正しいものはどれか.2つ選べ.

A:臨床効果は%T>MIC(time above MIC)の長さに相関する.
B:投与量を腎機能によって調節する必要はない.
C:長期投与によって耐性獲得されやすい抗菌薬である.
D:重症感染症のempiric therapyには不可欠である.
E:副作用は軽微なもののみである.


問題12

カルバペネム系抗菌薬でカバーできない菌種はどれか.3つ選べ.

A:Metallo-β-lactamase産生グラム陰性桿菌
B:メチシリン耐性黄色ブドウ球菌
C:ESBL産生大腸菌
D:BLNAR(β-lactamase-nonproducing Ampicillin-resistant Haemophilus influenzae
E:Stenotrophomonas maltophilia


問題13

抗真菌薬の選択について,正しい記載を1つ選べ.

A:ミカファンギンは酵母様真菌に広く活性を有する.
B:アムホテリシンBはクリプトコッカス症に対して使用してはならない.
C:フルコナゾールを深在性カンジダ症の治療に用いるときはフルシトシンと併用する.
D:ボリコナゾールは侵襲性アスペルギルス症の第一選択薬である.
E:リポソーム化アムホテリシンBはアムホテリシンBと比較して肝毒性が軽減されている.


問題14

ショック患者の血液培養から2セット中2セット,MRSAが検出された場合に必ず行うべきものは次のどれか.2つ選べ.

A:バンコマイシン/テイコプラニンの投与
B:プロカルシトニンの測定
C:血液培養が陰性化しない場合,バンコマイシンにゲンタマイシンを加える
D:経食道心エコー
E:ST合剤の投与


問題15

65歳男性.肺腺癌に対し化学療法のため入院中であった.ある朝,悪寒戦慄を伴う38.8℃の発熱が出現した.意識レベル JCSⅠ-1,血圧78/40 mmHg,脈拍136/分,呼吸数24/分,採血上WBC 800/μl(好中球25%)と好中球減少を認めた.対応として適切でないものを1つ選べ.

A:十分な輸液を行った.
B:抗菌薬投与前に,血液培養を異なる部位(静脈)から計2セット採取した.
C:肺炎の有無の評価のため,胸部単純X線を施行した.
D:院内のローカルファクターでβラクタム薬の耐性が少ないことから,第3世代セフェム系のセフトリアキソンを十分量投与した.
E:院内のローカルファクターでβラクタム薬の耐性が多いことから,第4世代セフェム系のセフェピムに加え,アミノグリコシド系のアミカシンを併用した.


問題16

基質特異性拡張型βラクタマーゼ(ESBL)産生菌による敗血症の治療薬として適切なものはどれか.1つ選べ.

A:メロペネム(カルバペネム系抗菌薬)
B:アズトレオナム(モノバクタム)
C:セフェピム(第4世代セファロスポリン)
D:セフトリアキソン(第3世代セファロスポリン)
E:ピペラシリン(ペニシリン系抗菌薬)


問題17

肺炎球菌感染症の治療に,一般的には使用されない抗菌薬はどれか.2つ選べ.

A:アモキシシリン
B:バンコマイシン
C:ミノサイクリン
D:ゲンタマイシン
E:シプロフロキサシン


(解答は本誌掲載)