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今月の主題

「理解のための29題」


問題01

次の主要な腎臓病の症候学的特徴を示す文章から,誤ったものを1つ選べ.

A:高血圧,浮腫,蛋白尿,血尿で発症するのは急性腎炎症候群である.
B:側腹部痛と疝痛,腰背部痛および叩打痛,血尿は尿路感染症の特徴である.
C:慢性腎炎症候群は食欲不振や倦怠感などの一般症状を示す.
D:ネフローゼ症候群の特徴には浮腫,蛋白尿に加えて凝固能亢進が含まれる.
E:変形赤血球や赤血球円柱を含む血尿は急性腎炎症候群にみられる.


問題02

試験紙法での尿検査において尿蛋白1+を指摘された患者に,尿蛋白定量を行ったところ5 g/日であった.この蛋白尿の原因として疑われる疾患は,次のうちどれか.1つ選べ.

A:膜性腎症
B:骨髄腫腎
C:尿管結石
D:ループス腎炎
E:巣状分節性糸球体硬化症


問題03

次のうち正しいのはどれか.1つ選べ.

A:抗核抗体はループス腎炎の活動性の指標となる.
B:ANCA陰性であれば血管炎は否定できる.
C:腎炎以外で補体が下がることはない.
D:末期腎不全ではクレアチニンクリアランスは糸球体濾過量(GFR)を過大評価してしまう.
E:シスタチンCは年齢・性別・体格などの影響を受けない.


問題04

慢性的経過で糸球体濾過量が低下しても,腎萎縮が生じにくい腎疾患はどれか.2つ選べ.

A:腎硬化症
B:糖尿病性腎症
C:IgA腎症
D:膜性腎症
E:腎アミロイドーシス


問題05

次のなかから経皮的腎生検の適応と考えられないものを2つ選べ.

A:21歳,女性.上気道炎に罹患.発熱から2日後に肉眼的血尿を認めたが,その3日後には消失した.3カ月後の尿蛋白1+(尿蛋白/尿クレアチニン[Cr]比0.4),潜血2+.
B:58歳,男性.糖尿病歴7年.2年前から経口血糖降下薬を内服中.網膜症なし.尿蛋白3+(尿蛋白/尿Cr比1.8),潜血-.
C:64歳,女性.進行した子宮癌の治療中.尿量が減少(200 ml/日)し,最近4カ月で血清Crが1.4 mg/dlから5.6 mg/dlと急速に上昇.
D:71歳,男性.最近6カ月で血清Crが1.0 mg/dlから2.3 mg/dlに上昇.尿蛋白±(尿蛋白/尿Cr比1.7),潜血-.
E:31歳,男性.学校健診で軽度の尿蛋白を指摘されていたが放置していた.今回職場健診で腎機能低下(Cr 2.6 mg/dl)を指摘され,来院した.腎長径は右8.3 cm,左7.8 cm.


問題06

次のうち,誤っているのはどれか.1つ選べ.

A:IgA腎症は,光学顕微鏡的組織分類ではメサンギウム増殖性腎炎に分類される.
B:巣状糸球体硬化症は,ネフローゼ症候群を呈することが多い.
C:急性糸球体腎炎の組織学的特徴は,糸球体基底膜の肥厚である.
D:半月体形成性糸球体腎炎は,急速進行性糸球体腎炎症候群の臨床症候を呈することが多い.
E:リポイドネフローゼは,光学顕微鏡では異常を認めない.


問題07

25歳,女性.突然,肉眼的血尿が出現し来院した.受診4日前に咽頭痛と発熱(38.0℃)を認め,その翌日,肉眼的血尿が2~3回あった.腰痛や頻尿・排尿痛はなく,来院するまで薬剤の投与はされていない.1年前の検診で尿蛋白(+),尿潜血(+)を指摘されている.

身体所見:血圧120/70 mmHg,体温36.8℃,咽頭・扁桃は正常,頭頸部・胸腹部の異常なし,肋骨脊柱角(CVA)の叩打痛なし.関節の異常なく四肢の浮腫もなし.検査所見:検尿;肉眼的血尿,尿蛋白2+.沈渣;赤血球多数/HPF,白血球2~3/HPF.血液検査;白血球数6,500/µl,Hb 12.0 g/dl,血小板数30×104/µl.血液生化学所見;TP 6.8 g/dl,Alb 3.5 g/dl,BUN14 mg/dl,Cr 0.8 mg/dl,尿酸 6.0 mg/dl,C3 100 mg/dl,抗核抗体;陰性.

この患者の肉眼的血尿の原因として最も可能性の高いものはどれか.1つ選べ.

A:急性腎盂腎炎
B:急性尿細管間質性腎炎
C:溶連菌感染後急性糸球体腎炎
D:ループス腎炎
E:IgA腎症


問題08

IgA腎症における腎生検糸球体所見でみられないものはどれか.2つ選べ.

A:細胞性半月体形成
B:糸球体基底膜における上皮下沈着物
C:傍メサンギウム領域への高電子密度物質の沈着
D:メサンギウム領域へのC3の沈着
E:フィブリンキャップ


問題09

58歳の男性.健診にて軽症高血圧を指摘されていた.本年初めより尿蛋白が陽性となり,ときどき下肢の浮腫を自覚するようになった.6月より全身の浮腫と約4 kgの体重増加を認め受診した.

身体所見:血圧160/95 mmHg,脈拍78/分・整,眼瞼浮腫ならびに下腿に圧痕を伴う浮腫がみられる.尿検査:蛋白(4+)(定量5~10 g/日),潜血(1+),糖(-),赤血球5~9/HPF,硝子円柱10~20/LPF,卵円形脂肪体(+),便潜血反応(1+). 血液生化学検査:WBC 7,200/µl, RBC 360×104/µl, Hb 10.6 g/dl, Ht 34%, Plts 25.3×104/µl, BUN 29.0 mg/dl, Cr 0.9 mg/dl, TP 4.0 g/dl, Alb 1.6 g/dl, ChE 219 IU/l, T-chol 314 mg/dl, CRP 0.1 mg/dl, CH50 31 IU/ml(正常値30~45).

診断的意義の低い検査はどれか.1つ選べ.

A:血清CEA値
B:血清抗核抗体
C:血清免疫複合体
D:尿蛋白selectivity index
E:B型肝炎ウイルス抗原・抗体


問題10

糖尿病性腎症第3期-Bの治療で正しいものはどれか.2つ選べ.

A:蛋白尿が治療によって寛解することはない.
B:蛋白過剰摂取は好ましくない.
C:インスリン注射は腎症を悪化させる.
D:厳格な降圧療法が重要である.
E:透析導入が必要である.


問題11

次の関節リウマチ治療薬のうち,腎障害をきたしにくいものはどれか.1つ選べ.

A:メソトレキセート
B:非ステロイド系消炎鎮痛薬
C:ブシラミン
D:金製剤
E:カルシニューリン阻害薬


問題12

アミロイドーシスについて,正しいものを1つ選べ.

A:原発性ALアミロイドーシスで陽性になるのはλ鎖よりκ鎖である.
B:関節リウマチ患者に合併するアミロイドはλ型アミロイドである.
C:家族性地中海熱に合併するアミロイドはサイロキシン(プレアルブミン)型である.
D:クレアチニン(Cr)値が3.0 mg/dlであるAA型アミロイドを合併した関節リウマチ患者の第一選択薬はMTX(メソトレキセート)である.
E:原発性ALアミロイドーシスの治療法としてVAD(ビンクリスチン,ドキソルビシン,デキサメタゾン)療法+高用量メルファラン療法に自己末梢血幹細胞移植を加えた治療法が試みられつつある.


問題13

C型肝炎ウイルス関連腎炎と合併しやすい疾患はどれか.1つ選べ.

A:喘息
B:血栓塞栓症
C:クリオグロブリン血症
D:悪性腫瘍
E:肉眼的血尿


問題14

35歳の女性.3日前より発熱,多発関節痛,下肢の浮腫が出現し来院した.子どもが2週間前伝染性紅斑に罹患している.血圧146/90 mmHg,下肢に圧痕を伴う浮腫を認める.尿所見:蛋白4+,潜血2+,赤血球21~50/1視野,顆粒円柱陽性,1日尿蛋白6.7 g.血液生化学所見:TP 5.2 g/dl,Alb 2.4 g/dl,UN 23 mg/dl,Cr 1.1 mg/dl,ヒトパルボウイルスB19 IgM抗体陽性.この疾患の記述で正しいのはどれか.1つ選べ.

A:低補体血症が認められる.
B:抗ds DNA抗体が陽性となる.
C:血清クリオグロブリンが陽性となる.
D:ステロイド治療が必要である.
E:腎生検では巣状糸球体硬化症が認められる.


問題15

Alport症候群と菲薄化基底膜病に関して,正しい記載はどれか.1つ選べ.

A:遺伝性腎疾患に難聴を合併したものを,Alport症候群という.
B:Alport症候群では,血尿を一般に伴わない.
C:菲薄化基底膜病では,蛋白尿を伴いやすい.
D:Alport症候群,菲薄化基底膜病ともに,予後不良の進行性腎障害を呈する.
E:Alport症候群,菲薄化基底膜病ともに,電子顕微鏡による診断が必要である.


問題16

腎前性AKI(急性腎臓障害)を示唆する所見はどれか.1つ選べ.

A:造影検査後
B:FENa 10%
C:FEUN 25%
D:褐色泥状の尿沈渣
E:腹部臍下部の膨隆


問題17

尿細管間質性腎炎について誤っているものはどれか.1つ選べ.

A:原因検索には薬剤によるリンパ球刺激試験が有用なことがある.
B:著しい蛋白尿を呈することが多い.
C:Sjögren症候群が原因となることがある.
D:急性腎不全を呈することがある.
E:67Gaシンチグラフィが診断に有用な症例がある.


問題18

IgG4関連疾患に伴う腎病変について誤っているのはどれか.1つ選べ.

A:しばしば低補体血症を伴う.
B:ネフローゼ症候群で発見されることが多い.
C:中高年男性に好発する.
D:ステロイド治療は有効である.
E:悪性リンパ腫類似のCT所見を示すことがある.


問題19

次のうち,正しい記載を1つ選べ.

A:全身性血管炎のうち,高安病はしばしば腎糸球体に病変をきたす.
B:抗好中球細胞質抗体(ANCA)は,好中球の細胞質に存在する各種酵素に対する自己抗体である.
C:Wegener肉芽腫症(WG)は,わが国の細小血管炎のなかで最も高頻度に発症する.
D:壊死性血管炎を伴う顕微鏡的多発血管炎(MPA)では低補体血症をきたす.
E:血中ANCA値は血管炎再燃の鋭敏なマーカーである.


問題20

65歳,男性.3カ月前に狭心症の診断で冠動脈インターベンションを施行され,チクロピジンを含めた内服治療を開始した.数日前からの全身倦怠感,浮腫,乏尿,発熱にて外来を受診し,高度な貧血と腎機能障害を指摘されて,紹介入院となった.Cr 5.5 mg/dl,BUN 90 mg/dl,RBC 245×104/µl,Plt 3.5×104/µl,LDH 1,200 IU/l. まず行うべき治療は何か.1つ選べ.

A:ステロイド投与
B:血漿交換療法
C:へパリン投与
D:血小板輸注
E:抗生物質投与


問題21

コレステロール塞栓症(CCE)は大動脈壁の粥腫が何らかの原因で破綻し,コレステロール結晶が全身に散布され,臓器障害を引き起こす病態である.CCEに合致しない項目はどれか.1つ選べ.

A:心臓カテーテル検査などの血管内操作後に発症することが多い.
B:抗凝固療法が治療として有効である.
C:好酸球増多を認めることが多い.
D:皮膚症状としてlivedo reticularis(網状皮斑)が特徴的である.
E:腎生検,皮膚生検などにより確定診断が可能である.


問題22

保存期腎不全症例の治療で正しいのはどれか.2つ選べ.

A:慢性腎臓病(CKD)ステージ2の症例はすべて専門医に紹介する.
B:アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)は血清カリウム5.5 mEq/lを超えれば減量または中止する.
C:スタチンには腎保護効果(腎機能低下抑制,蛋白尿減少)がある.
D:腎性貧血治療の目標ヘモグロビン(Hb)値は10 g/dl以上である.
E:経口吸着薬(活性炭)は蛋白尿減少効果がある.


問題23

常染色体優性多発性嚢胞腎の嚢胞内感染治療として,正しいものはどれか.1つ選べ.

A:ペニシリン投与
B:セファロスポリン投与
C:シプロキサシン投与
D:アミノグリコシド投与
E:ストレプトマイシン投与


問題24

透析患者において,カルシウム・リンなどの骨ミネラル代謝異常が引き起こす病態として,不適切なものはどれか.1つ選べ.

A:異所性石灰化
B:線維性骨炎
C:無形成骨
D:透析アミロイドーシス
E:血管石灰化


問題25

薬剤腎障害について正しいのはどれか.1つ選べ.

A:慢性腎不全症例に造影剤腎症を避けるため,ヨード造影剤の代わりにガドリニウム造影剤を用いる.
B:造影剤腎症を予防するために,NSAIDsをあらかじめ投与しておく.
C:腎障害のない糖尿病は,造影剤腎症のリスクファクターである.
D:造影剤腎症のリスクファクターがあるので,造影検査をしない.
E:NSAIDsによる間質性腎炎は好酸球増多や皮疹などの過敏反応が少ない.


問題26

腎障害患者に対する薬物投与について,次の記載のうち正しいのはどれか.1つ選べ.

A:腎障害患者の下剤には酸化マグネシウムが最も安全である.
B:腎障害時に推奨されている血糖降下薬はSU薬とナテグリニドである.
C:シクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)選択的阻害薬のNSAIDsは腎障害を進行させないことが証明されている.
D:MRI造影剤は腎機能低下患者にも使用制限がない.
E:薬物の尿中排泄率の評価には,活性代謝物の存在も考慮すべきである.


問題27

慢性腎臓病(CKD)患者の降圧治療で正しいものはどれか.2つ選べ.

A:尿蛋白が1 g/日以上の慢性腎臓病患者の降圧目標は130/80 mmHg以下である.
B:進行した慢性腎臓病ではRA系抑制薬に加え,利尿薬やカルシウム拮抗薬などの多剤併用が必要となる.
C:血清Cr 2.0 mg/dl以上では高カリウム血症や腎機能の悪化が起こるため,レニン-アンジオテンシン系抑制薬は禁忌である.
D:LDLアフェレーシス時にアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)を使用するとアナフィラキシーショックが起こるため,ARBは禁忌である.
E:抗アルドステロン薬は糖尿病性腎症およびCcr 50 ml/min/1.73 m2未満のCKD患者には禁忌である.


問題28

妊娠28週までは正常血圧で尿異常も指摘されなかったが,30週目の妊婦検診で血圧150/90 mmHg,尿蛋白(+)を指摘され,翌週,再検でも血圧156/96 mmHg,尿蛋白定量で0.5 g/日であった.妊娠週数からみた胎児発育は順調と思われた.適切な対応はどれか.2つ選べ.

A:食事療法で減塩6 g/日を指示する.
B:安静を指示する.
C:メチルドパを処方する.
D:カルシウムの摂取制限を指示する.
E:帝王切開で娩出し,NICU管理とする.


問題29

次のなかで肉眼的血尿を初発症状とすることが最も多い疾患はどれか.1つ選べ.

A:IgA腎症
B:膀胱癌
C:腎盂腎炎
D:腎癌
E:糖尿病性腎症


(解答は本誌掲載)