HOME雑 誌medicina誌面サンプル 46巻10号(2009年10月号) > 今月の主題「理解のための26題」

今月の主題

「理解のための26題」


問題01

慢性閉塞性肺疾患(COPD)で通院中の58歳男性.来院前日から喀痰の増加と黄色化を認め,さらに38℃の発熱が出現したため救急室に来院.聴診にて左肺にholo cracklesを認め,胸部X線写真にて左肺野に大葉性肺炎像を認めた.喀痰スメアではグラム陰性球桿菌と多核白血球を多数認めた.市中肺炎の起因菌として最も疑わしいのはどれか.1つ選べ.

A:肺炎球菌
B:インフルエンザ桿菌
C:レジオネラ
D:黄色ブドウ球菌
E:マイコプラズマ


問題02

30年以上の喫煙歴のある80歳男性.数日前に雨水を貯めるタンクの清掃を行った.来院当日から食欲低下と発熱38℃,軽度の咳嗽が出現.胸部X線写真にて肺炎像を認めた.喀痰塗抹検査(グラム染色)では多数の多核白血球を認めるが有意な菌は認めず,抗酸菌染色は陰性.尿中レジオネラ抗原を検査したところ陽性であった.使用すべき抗菌薬は以下のうちいずれか.1つ選べ.

A:アンピシリン
B:アンピシリン・スルバクタム
C:セフォタキシム
D:シプロフロキサシン
E:ミノサイクリン


問題03

75歳男性の喫煙者.COPDにて気管支拡張薬の吸入を普段からしている.今朝突然の悪寒戦慄あり,意識も低下したため来院.初診時,呼びかけに反応するがやや傾眠傾向あり.血圧120/60 mmHg(普段は降圧薬を服用して140/80 mmHg程度),脈拍120,呼吸数35回/分,体温39.5℃.酸素飽和度はルームエアにて80%.胸部写真にて右中肺野に大葉性肺炎あり.白血球30,000 ml.BUN 35 mg/dl,Cr 1.6.痰のグラム染色にてランセット型のグラム陽性双球菌を認める.
次のうち最も正しいと思われるのはどれか? 1つ選べ.

A:意識も悪く,敗血症かもしれないので血液培養を1セット(計20 ml)取る.
B:グラム陽性双球菌は肺炎球菌なのでペニシリン1,800万単位で治療する.
C:意識が悪い原因は敗血症かもしれないが,髄膜炎かもしれないので神経巣症状,項部硬直などを確認し,腰椎穿刺を行う.
D:血圧が低いのでノルアドレナリンをまず投与して平均血圧65 mmHg以上に保つ.
E:DICの有無をチェックするためにD-dimerを測定する.


問題04

誤嚥を目撃した場合に抗菌薬開始に関して次のように考えた.バイタル含め,患者さんの全身状態は良い.最も適切なものはどれか.

A:アンピシリンスルバクタムを開始するように指示する.
B:クリンダマイシンを開始するように指示する.
C:セフトリアキソンを開始するように指示する.
D:レボフロキサシンを開始するように指示する.
E:呼吸状態の悪化や48時間以上の発熱の持続とならないか注意深く経過観察する.


問題05

特に既往のない高校3年生,前日夕方からの発熱と咳を訴え受診,39℃の発熱を認めるものの全身状態は比較的良好で,迅速検査でインフルエンザAが陽性だった.患者は大学受験を控えており不安を訴えている.県内ではタミフル耐性A/H1N1がA型のほとんどを占めて流行している.患者への説明として間違っているのはどれか.1つ選べ.

A:インフルエンザは基本的には自然に治る病気である.
B:抗ウイルス薬は耐性や備蓄の問題があるので,代わりに抗菌薬を処方する.
C:発症48時間以内にリレンザ®を開始することで1日程度症状が短くなる.
D:耐性株が蔓延しておりタミフル®は処方しない.
E:少なくとも解熱するまでは自宅で静養する必要がある.


問題06

急性上気道炎の診療において正しいものを1つ選べ.

A:急性上気道炎に対する抗菌薬治療は治療期間を短縮する.
B:一般に,成人は1年に数回,急性上気道炎に罹患する.
C:急性上気道炎においては溶連菌感染が最も多い.
D:ウイルス性と細菌性はスコアリングシステムでほぼ鑑別可能である.
E:急性上気道炎に対して抗菌薬を用いる場合にはニューキノロン系が第一選択である.


問題07

以下のうち,「喘息発作の重症度」の指標とされていないものを2つ選べ.

A:血圧
B:脈拍数
C:呼吸数
D:体温
E:酸素飽和度


問題08

慢性期の喘息治療において正しいのはどれか.1つ選べ.

A:治療は重症度に応じて行う.
B:運動誘発性喘息の治療の第一選択薬は吸入ステロイド薬である.
C:長期間作用型b2刺激薬は吸入ステロイドとの併用が原則である.
D:コントロールが良好であれば,1カ月毎に治療を減量していく.
E:成人喘息において,患者教育や環境コントロールはあまり重要ではない.


問題09

気管支喘息の患者でアスピリン喘息を疑う病歴とならないのはどれか.1つ選べ.

A:鼻茸の手術歴
B:アトピー性皮膚炎
C:重症の喘息
D:成人発症の喘息
E:蕁麻疹


問題10

コントロールに難渋する気管支喘息患者に対して,本邦で(保険適応があり)使用可能なものはどれか.1つ選べ.

A:アザチオプリン療法
B:シクロスポリンA療法
C:メトトレキサート療法
D:抗IgE療法
E:TNF-a阻害薬


問題11

喘息合併妊娠における喘息治療に関して正しい方針は以下のどれか.1つ選べ.

A:妊娠中は喘息が改善することが知られており,治療薬は減量してもよい.
B:FDA分類の記載がない薬剤でも,販売認可が下りている日本の喘息治療薬は基本的に妊婦,胎児に安全とみなして問題ない.
C:安全性,有効性の面で,吸入ステロイドは喘息合併妊娠における,喘息治療の主役を担う薬剤と言える.
D:ステロイドの全身投与は,催奇形性が問題となるので,どんな場面においても禁忌と考え,使用しない.
E:妊娠中の喘息治療ではFDA分類がB以上の薬剤しか使用してはいけない.


問題12

重度のCOPD急性増悪の治療に適切な抗菌薬はどれか.1つ選べ.

A:アモキシシリン・クラブラン酸
B:トリメトプリム/サルファメトキサゾール
C:アジスロマイシン
D:シプロフロキサシン
E:セファゾリン


問題13

肺機能の改善に有用なのは次のうちどれか.1つ選べ.

A:禁煙
B:薬物療法
C:包括的呼吸リハビリテーション
D:在宅酸素療法
E:肺容量減少術


問題14

高齢者への吸入薬の吸入指導について,正しいのはどれか.1つ選べ.

A:指導する側が指導し慣れた製剤を選択する.
B:スペーサーを用いる場合は噴射と吸入の同調が上手くできるように指導する.
C:呼吸機能が正常な患者では吸入速度を考慮する必要はない.
D:長年同じ吸入薬を使用している患者には過剰な指導は行わない.
E:吸入速度の極端な低下がある場合はエアロゾル製剤(pMDI)を選択する.


問題15

48歳女性,Crohn病にてレミケード®使用中.2週間持続する原因不明の発熱,寝汗にて受診.身体所見上,右上肺野後面にcrackleを聴取した.胸部X線写真で右上中肺野に浸潤影を認めた.直ちに取るべき処置はどれか.1つ選べ.

A:直ちに陰圧室に収容.
B:呼吸器科外来にて経過観察.
C:Crohn病の再燃として,消化器科外来へ紹介.
D:外来にて市中肺炎として,セフトリアキソンとアジスロマイシンにて治療開始.
E:外来診察室にて痰を採取し検鏡.


問題16

1カ月間の不明熱,咳,痰を主訴に外来受診した64歳女性に対してQuantiFERON®検査を行ったところ陽性であった.外来での喀痰抗酸菌塗抹検査は3回連続陰性であった.胸部X線では,右肺尖部に淡い陰影がみられる.以下のうち不適切な対応はどれか.2つ選べ.

A:直ちに,潜在結核としてイソニアジド単剤で治療を開始する.
B:直ちに,活動性結核としてリファンピシン,イソニアジド,エタンブトール,ピラジナミドの4剤で治療を開始する.
C:気管支鏡検査を行い,気管支肺胞洗浄により検体採取を行う.
D:過去の結核曝露歴を確認する.
E:胸部CT検査を行う.


問題17

Mycobacterium avium complex(MAC)の多剤併用療法において治療薬として不適切なものはどれか.1つ選べ.

A:イソニアジド
B:リファンピン
C:エタンブトール
D:ストレプトマイシン
E:クラリスロマイシン


問題18

急性呼吸窮迫症候群(ARDS)について正しいものはどれか.1つ選べ.

A:ARDS発症早期にステロイド・パルス療法を行うと死亡率が改善する.
B:AECC(American-European Consensus Conference)によるARDSの診断基準の特異度は高い.
C:ARDS発症後1週間経過しても改善しない患者へのステロイド治療の有効性のエビデンスは確立している.
D:ここ10年間でARDSの予後は改善している.
E:ARDSからの生存患者は後遺症なく多くが社会復帰できる.


問題19

以下の感染による肺炎の中でステロイド投与が有効であるのはどれか.1つ選べ.

A:肺炎球菌肺炎
B:マイコプラズマ肺炎
C:レジオネラ肺炎
D:ニューモシスチス肺炎
E:肺結核


問題20

50歳,女性で間質性肺炎の為に3カ月前よりステロイドを内服中.当初,プレドニゾロンを50 mg/日で開始され現在は25 mg/日まで減量している.他に内服薬はなし.来院前日より労作時呼吸困難が出現し急速に症状が進行して救急室受診.発熱はなし.胸部X線では両側スリガラス陰影が新たに出現しており酸素化はマスク7 l/分吸入下で酸素飽和度94%の呼吸不全の状態であった.以下のうち重要な鑑別疾患はどれか.1つ選べ.

A:肺炎球菌肺炎
B:粟粒結核
C:過敏性肺臓炎
D:ニューモシスチス肺炎
E:侵襲性肺アスペルギルス症


問題21

次の中でニューモシスチス肺炎予防に関して適切なものはどれか.1つ選べ.

A:ST合剤とメトトレキサートは併用禁忌である.
B:ペンタミジンはナロキソン過敏症のある患者には禁忌である.
C:ペンタジン吸入剤は気管支収縮を起こすため喘息の既往のある患者では禁忌である.
D:ジアフェニルスルホンの副作用としてDDS症候群が見られることがある.
E:ST合剤は本邦では唯一ニューモシスチス肺炎予防に保険適応のある薬剤である.


問題22

骨粗鬆症のリスクとなりえるのはどれか.1つ選べ.

A:プレドニゾロン7.5 mg/日3カ月間
B:閉経前女性の吸入ステロイド
C:COPD
D:間欠的な経口プレドニゾロン使用
E:上記すべて


問題23

禁煙補助薬について正しいのはどれか.1つ選べ.

A:ニコチンガムは,普通のガムのように味がなくなるまで噛み続けるのがよい.
B:ニコチンパッチは,ニコチンをゆっくりと皮膚から吸収する機序であるため,狭心症発作がある方にも使用可能である.
C:妊婦の禁煙は非常に重要であるため,積極的に禁煙補助薬を使用しながら禁煙支援を行っていくことが勧められる.
D:禁煙外来では,ブリンクマン指数≧200で,かつ禁煙外来に12週間にわたり5回受診し同意書に署名することも,禁煙補助薬が健康保険の適応となる条件となっている.
E:ある疾患で入院した患者が禁煙希望の場合,ニコチン依存症管理料の施設基準を届けている保険医療機関であれば禁煙補助薬は医療保険適応処方が可能である.


問題24

60歳男性でCOPDを基礎疾患に持つ患者が,肺炎球菌ワクチンを希望して来院した.正しい説明はどれか.1つ選べ.

A:肺炎球菌による肺炎を予防する効果よりも,侵襲性肺炎球菌感染症を予防する効果のほうが大きいです.
B:あなたは65歳以上ではないので接種は勧められません.
C:費用は医療保険が使えますよ.
D:あなたは5年後に再接種を受けてください.
E:2カ月前に産まれたお孫さんにもこのワクチンの接種をおすすめします.


問題25

咳を起こす疾患と咳に対する治療薬について正しい組み合わせを2つ選べ.

A:咳喘息─ヒスタミンH1受容体拮抗薬
B:アトピー咳─気管支拡張剤
C:胃食道逆流症─プロトンポンプ阻害剤
D:副鼻腔気管支症候群─エリスロマイシン
E:気管支拡張症─リン酸コデイン


問題26

オピオイド(医療用麻薬)について正しい記載はどれか.1つ選べ.

A: オピオイドを処方用量を守って使用しても,中毒になることは避けられない.
B:終末期患者にオピオイドが過剰投与された場合,ナロキソンを直ちに投与する.
C:オピオイドの副作用として最も頻度が多いのは,眠気,嘔気,頭痛である.
D:オピオイドはがんの終末期に生じる呼吸困難で,第一選択薬となる.
E:オピオイドを処方する場合には,患者・家族に,オピオイドによって寿命が短くなる可能性があることを伝えておく.


(解答は本誌掲載)