今月の主題「理解のための27題」問題0132歳,男性が2カ月間の咳・発熱・寝汗・体重減少を主訴に救急外来を受診した.既往歴なしで,10カ月前に刑務所に入った際のHIV検査とツ反は陰性である.喫煙なし,渡航歴なし.体温38℃以外のバイタルは正常である.身体所見での陽性所見は右肺にcoarse crackleが聞こえる.胸部X線では右上葉に浸潤影がある.喀痰は採取できなかった.この患者に最も適切な初期治療・対応はどれか.1つ選べ. A:セフトリアキソン2g静注24時間ごと
問題02肺炎が疑われる患者の喀痰グラム染色結果から次の起因菌を推定したが,患者はβ-lactam薬に重症アレルギーがある.選択薬剤として適切ではないのはどれか. A:グラム陰性桿菌で周りに莢膜が認められた…レボフロキサシン
問題03成人市中肺炎ガイドラインの適用について,誤っているのはどれか.1つ選べ. A:CURB-65の指標に従って,はじめからICUで治療を開始した.
問題04下記のうち,正しいものを1つ選べ. A:ATS/IDSAガイドラインでは,院内肺炎の患者すべてに3剤の抗菌薬使用を推奨している.
問題05次のうち,正しいのはどれか.1つ選べ. A:肺炎の診断において病歴・身体所見で診断的価値が高いものはないので,病歴・身体所見は役に立たない.
問題0670歳,女性.数時間ほど前から発熱,呼吸苦が出現したと救急外来を受診.2~3日前から風邪をひいていたとのことであった.裁縫の仕事で毎日椅子に座って長時間作業をしている.救急外来では体温37.6℃,呼吸数28回/分.胸部ラ音を聴取し,両下腿浮腫を認めた.検査所見では,WBC12,100/μl,Hb12.1g/dl,Ht37.3%,Plt14.4×104/μl,BUN16mg/dl,Cr0.8mg/dl,Na136mEq/l,K4.4mEq/l,Cl99mEq/l,CRP8.8mg/dl,BNP204pg/ml,尿検査では潜血(1+),白血球(2+),細菌(1+)であった. A:急性心不全
問題07症例:32歳,男性.統合失調症にて単科精神病院に入院していたところ,発熱,呼吸困難を訴え,肺炎と診断された.喀痰培養を採取されないまま,セフトリアキソンで治療を開始された.いったん解熱するも呼吸回数35回で酸素飽和度88%(room air)と呼吸状態が悪化したため,転院搬送されてきた.喀痰のグラム染色で集塊状のグラム陽性球菌を多数認めた.喀痰の質は良好で白血球のみで●平上皮は少数であった.適切な選択肢はいずれか. A:若い男性でもあり,誤嚥性肺炎の可能性もあるので,経過を1日だけ観察して,悪化すれば治療する.
問題08日本呼吸器学会で設けている非定型肺炎鑑別の診断基準に含まれない項目はどれか.2つ選べ. A:年齢60歳未満
問題0968歳,男性.慢性閉塞性肺疾患の治療を受けている.1週間前にインフルエンザの診断を受け,タミフル®による治療を終えたばかりである.2日前からの発熱,湿性咳嗽にて来院.身体所見にて38.4℃の発熱,胸部に右下肺野のラ音あり.胸部X線写真上,右上肺野に浸潤影あり.喀痰を採取するも不良喀痰にて非診断的であった.エンピリックな治療として,投与すべき抗菌薬を選べ. A:バンコマイシン
問題10重症肺炎に対する治療のうち,大規模無作為比較対照試験で死亡率の低下が認められ,標準的治療と考えられているのはどれか.1つ選べ. A:市中肺炎に対するステロイド
問題11市中肺炎の治療効果をみるうえで,参考にならないことが多いものを1つ選べ. A:胸部X線写真上の浸潤影
問題12市中肺炎の重症度を評価する際,必要のないものはどれか.1つ選べ. A:意識レベル
問題1370歳男性,施設入所中.以前から食事中にむせることが多かったという.既往に糖尿病があり経口血糖降下薬内服にて治療中である.来院3日前から咳嗽を認めていたとのこと.来院当日から38℃の発熱と食欲低下を認めたため来院.来院時のバイタルサインは意識レベルクリア,体温38.1℃,血圧155/90mmHg,脈拍103bpm,呼吸数34回/分,SpO295%(カヌラ4L)であり,身体所見上は右背側の下肺でcrackleを聴取し胸部X線写真にて右下肺に浸潤影を認めた.そのときの喀痰グラム染色ではさまざまな菌が認められ,有意な菌を認めなかった.そのため誤嚥性肺炎と診断しセフトリアキソン1g1日1回投与にて治療を開始した.治療開始後3日経過したときのバイタルサインは意識レベルクリア,体温37.8℃,血圧145/86mmHg,脈拍92bpm,呼吸数28回/分,SpO296%(カヌラ4l)であり,右背側でcrackleを聴取すると共に呼吸音の減弱を認め,胸部X線写真では右下肺の透過性低下を認めた.以下のうち不適切なものはどれか.1つ選べ. A:嫌気性菌をカバーする抗菌薬に変更
問題14次のうち,耐性菌の認められる可能性の高い患者を選べ. A:20歳,男性.既往歴なし.3日間の発熱,黄色痰を伴う咳を認め,来院.
問題15次のうち,正しいものを1つ選べ. A:院内肺炎の診断基準(発熱,膿性痰,X線異常)の感度・特異度は高い.
問題16正常免疫者における病院肺炎の原因菌として,考えにくい微生物はどれか.1つ選べ. A:Pseudomonas aeruginosa
問題17誤嚥性肺炎に比べて化学性肺臓炎の特徴として当てはまるものはどれか. A:脳梗塞後の嚥下障害のある患者に多い
問題18好中球減少患者の肺炎で起因菌として,不適当なものはどれか.2つ選べ. A:Pseudomonas aeruginosa
問題19下記の患者で明らかにPcPに対する予防内服を推奨されるのはどれか.2つ選べ. A:38歳,女性.HIV患者.CD4数は450/μl.HIV以外に既往歴なし
問題20以下のうち,脾摘後敗血症(postsplenectomy sepsis:PSS)の起炎菌となる,encapsulated organismsはどれか.2つ選べ. A:緑膿菌
問題21鳥インフルエンザA(H5N1)について,正しいものを次の選択肢から選べ. A:野鳥での報告はあるが,ヒト感染例は報告されていない.
問題22バイオテロに使用される可能性がある以下の病原体のうち,最も危険なものはどれか.1つ選べ. A:コレラ
問題23NPPV(非侵襲的陽圧換気法)の適応として,最も適切と思われるものはどれか.1つ選べ. A:誤嚥を繰り返す意識状態が悪い重症肺炎患者の呼吸管理
問題24次のうち,間違っているものを2つ選べ. A:膿胸の原因は肺炎後,および外傷後が大半を占めており,他の原因はほとんどない.
問題25市中肺炎の予防に関して,間違っているものはどれか.1つ選べ. A:2006年現在,肺炎による死亡率は年齢とともに増加していき,90歳以上の死因のなかでは肺炎がトップを占めている.
問題26日本における院内肺炎・VAP(ventilator-associated pneumonia)予防について誤っているものを2つ選べ. A:できるだけ気管挿管や人工呼吸は避け,非侵襲的陽圧換気(noninvasive positive pressure ventilation:NPPV)を使用する.
問題27誤嚥性肺炎の予防に関して,誤っているものはどれか.1つ選べ. A:毎日行う口腔ケアで誤嚥性肺炎の発症を抑制できる可能性がある.
(解答は本誌掲載)
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