HOME雑 誌medicina誌面サンプル 45巻6号(2008年6月号) > 今月の主題「理解のための23題」

今月の主題

「理解のための23題」


問題01

わが国の糖尿病に関する記述のなかで減少に転じたものはどれか.1つ選べ.

A:境界型患者
B:糖尿病患者
C:糖尿病性腎症による透析導入者
D:糖尿病性網膜症による失明者
E:糖尿病患者における心筋梗塞合併者


問題02

糖尿病の治療について,正しいものはどれか.2つ選べ.

A:1型糖尿病患者ではbasal-bolusインスリン注射療法が最も汎用されている.
B:2型糖尿病患者の約50%に薬物療法が行われている.
C:本邦の2型糖尿病患者における平均HbA1cは約8%であり,血糖コントロールがアジア諸国より良好であるが,米国より不良である.
D:2型糖尿病患者には,超速効型インスリン製剤と持効型製剤によるbasal-bolusインスリン注射療法が導入されることは稀である.
E:2型糖尿病患者には病態の多様性,すなわち膵β細胞の機能障害とインスリン抵抗性を考慮して,薬剤を選択すべきである.


問題03

糖尿病患者の病歴聴取に関して,誤っているものを1つ選べ.

A:これまでの糖尿病の治療,コントロール状況などは,今後の治療計画に役立つ.
B:体重歴(既往最大体重・その後の推移など)は,糖尿病の発症時期を推定する参考になる.
C:妊娠歴,出産歴,現在の状況(妊娠またはその可能性の有無)の聴取には十分な配慮をすべきである.
D:糖尿病問診表を活用すれば,医師自らの病歴聴取は省略してもよい.
E:患者の訴えを十分に聞き,信頼関係を構築することは,その後の診療の成否にかかわる.


問題04

写真のような糖尿病合併症は何か.1つ選べ.

A:Charcot関節
B:慢性炎症性脱髄性神経炎
C:手根管症候群
D:ばね指
E:Dupuytren拘縮


問題05

HbA1cが偽低値を示す可能性が高いのはどの疾患か.1つ選べ.

A:緩徐進行1型糖尿病
B:ビタミンB12欠乏性貧血
C:肝硬変症
D:ネフローゼ症候群
E:慢性アルコール中毒


問題06

初診で未治療の糖尿病の治療を開始する際,最も正しいものはどれか.1つ選べ.

A:初めて糖尿病が発見され,HbA1cが6.2%なので眼底検査は不要と判断した.
B:網膜に出血斑があるので,初日からSU薬を開始して食前血糖を300mg/dlから180mg/dlに下げた.
C:35歳,BMI32,HbA1c8.5%の合併症のない男性.全身状態は良好なので,食事療法,運動療法のみで開始した.
D:HbA1cが7%未満の場合,これだけでは入院の適応にはならない.
E:両足先に軽度のしびれ感があるが,血糖値が下がれば通常改善すると説明して安心してもらった.


問題07

糖尿病患者における食事指導で,間違っているものを1つ選べ.

A:高血圧がある患者では,塩分は1日6g未満とする.
B:飲酒を許可する場合は,1日2単位(160kcal)までとし,その分を主食から差し引く.
C:軽労作の場合は,25~30kcal/kg標準体重に標準体重をかけて,1日の必要エネルギー量を算出する.
D:高LDL血症がある患者では,コレステロール摂取量は1日300mg以下とする.
E:果物の摂取量は1日1単位(80kcal)までと指導する.


問題08

糖尿病の食品交換表について,正しいものはどれか.2つ選べ.

A:みかんの缶詰,干し柿は表2(果物)に入る.
B:アルコールは,主食となる表1(穀物)と食品交換できる.
C:乳製品は,表3(魚介,肉,卵,大豆)として扱う.
D:総カロリー量の50~55%は,表1から選択する.
E:かぼちゃ,れんこんは,野菜でも表1として扱う.


問題09

15年間経口血糖降下薬で治療されていた45歳,男性の2型糖尿病患者が受診した.身長172cm,体重75kg.HbA1cは8.1%で,眼底検査で増殖糖尿病網膜症の疑いがあり,精査の予定であるとのことである.この患者に勧めるべきではないと考えられる運動は何か.2つ選べ.

A:速歩(平地,95~100m/分)
B:自転車エルゴメータ:50ワット
C:階段を駆け足で昇る
D:水中体操
E:ベンチプレス


問題10

42歳,女性.健康診断でHbA1c6.7%を指摘され,医療機関への受診を勧められた.当院初診は半年前で,合併症を認めなかった.食事療法や運動療法を勧めてきたが,現在,HbA1c6.5%で,初診時とほとんど変化はない.この患者に次に行うべきことは何か.1つ選べ.

A:コントロールがよいので,このまま様子をみる.
B:もう一度食事指導を行う.
C:すぐにα-グルコシダーゼ阻害薬を開始する.
D:すぐにインスリン治療を開始する.
E:食前血糖,食後血糖,インスリン分泌などを測定し,患者の病態を把握する.


問題11

52歳,男性.会社役員.会社の健康診断で高血糖を指摘され,内科紹介.身長161cm,体重78kg,血圧156/72mmHg,空腹時血糖159mg/dl,HbA1c8.5%,Cr0.9mg/dl,尿糖+,尿蛋白-,尿ケトン体-.この症例について,正しいものを2つ選べ.

A:まず食事療法,運動療法を行い,効果が不十分な場合はSU薬が第一選択となる.
B:インスリン抵抗性改善薬が有効と考えられる.
C:1,400kcalの栄養指導を行う.
D:1,600kcalの栄養指導を行う.
E:絶対的インスリン不足の状態と考えられるので,インスリン治療を行う.


問題12

糖尿病の治療について,正しいのはどれか.1つ選べ.

A:soft drink ketosisは2型糖尿病であり,インスリン治療の適応にならないことが多い.
B:血糖コントロール不良例では,合併症の有無にかかわらず,速やかに血糖降下を行うべきである.
C:コントロール不良でも,肥満症例に比べ肥満を伴わない例では,食事・運動療法の効果がより期待できる.
D:2型糖尿病でも,HbA1cが10%以上であれば,食事・運動療法を行う前に薬物療法を行うべきである.
E:糖毒性を軽減/除去するための薬物療法は,強化インスリン療法が最も有効である.


問題13

下記のうち,正しいものを1つ選べ.

A:α-グルコシダーゼ阻害薬:(α-GI)は,糖尿病発症抑制,高血圧発症抑制,心筋梗塞発症抑制のエビデンスがある.
B:グリニド系薬は低血糖を起こさない.
C:グリニド系薬はSU薬からの切り替え例に特に有効性が高い.
D:α-GIは膵を疲弊させやすい.
E:ミグリトールは小腸で吸収されない.


問題14

チアゾリジン薬について,正しいものはどれか.2つ選べ.

A:腸管からのブドウ糖の吸収を抑制する.
B:副作用には浮腫がある.
C:アディポネクチンを増加し,インスリン抵抗性を改善する.
D:非肥満者では無効である.
E:膵β細胞に作用し,インスリン分泌を促進する.


問題15

62歳,男性.糖尿病罹病期間8年.身長175cm,体重70kg,網膜症なし,腎症2期,神経障害なし.グリベンクラミド(2.5mg)1錠内服中.空腹時血糖値135mg/dl,HbA1c7.7%.経口血糖降下薬を追加する場合,望ましくない薬剤はどれか.1つ選べ.

A:グリニド薬
B:ビクアナイド薬
C:チアゾリジン薬
D:α-グルコシダーゼ阻害薬


問題16

以下のなかから誤っているものを選べ.ただし,食事療法,運動療法は遵守されているものとする.

A:HbA1c7.3%の63歳男性にα-グルコシダーゼ阻害薬(α-GI)を投与したが,6.8%以下にならないのでグリニド系薬剤を追加した.
B:グリベンクラミド1日5mgでHbA1c8.2%の28歳女性に,食後高血糖の是正を目指してα-GIを追加した.
C:健診で新規に診断されたBMI25.2でHbA1c6.6%の32歳肥満男性に,メトホルミンを投与した.
D:病歴20年でBMI19.8の76歳男性に,チアゾリジン誘導体を投与した.
E:病歴1年の45歳女性でBMIは20.4.グリニド系薬剤とα-GI内服中に,3カ月続けてHbA1c7%台に上昇してきたので,SU薬単剤に切り替えた.


問題17

1日2回注射で,インスリン導入してもよい症例はどれか.1つ選べ.

A:糖尿病合併妊娠
B:高血糖を伴う重症感染症
C:高カロリー輸液中の血糖コントロール
D:糖尿病性ケトアシドーシス
E:腎症が進行してSU薬が使用できなくなった2型糖尿病


問題18

1型糖尿病で,インスリン強化療法によりHbA1c値は7%である.急に38℃の高熱が出て,夕食が摂れそうにない.夕食前の血糖は145mg/dlであった.適切な対応はどれか.2つ選べ.

A:夕食直前の超速効型インスリンを中止する.
B:夕食直前の超速効型インスリンを増量する.
C:夕食直前の超速効型インスリンをいつも通り注射する.
D:グルカゴンを筋肉注射する.
E:頻回に血糖自己測定をする.


問題19

下記の文章のなかで,誤りを含むものはどれか.2つ選べ.

A:微量アルブミン尿検査の対象となるのは,試験紙法で尿蛋白陰性者のみである.
B:尿アルブミン値30~299mg/g・Crが1回でも陽性となれば,糖尿病腎症と診断してよい.
C:高度肥満やメタボリックシンドロームでも微量アルブミン尿を認めることがある.
D:糖尿病腎病変の存在を示唆する参考事項として,腎肥大や尿中Ⅳ型コラーゲン値上昇などがある.
E:尿アルブミンは現在免疫法で測定されているが,抗体に反応しないアルブミンも存在することが知られており,その測定法には今後も検討が必要である.


問題20

糖尿病腎症を管理するうえで,誤っているものはどれか.1つ選べ.

A:厳格な血糖コントロールは,腎症の進展予防に効果がある.
B:厳格な血圧コントロールは,腎症の進展予防に効果がある.
C:腎性貧血があるときはHbA1cが高値を示すので,注意が必要である.
D:進行した腎症では,経口血糖降下薬の効果が遷延するので注意が必要である.
E:高齢者では血清クレアチニン値から推定されるよりも腎機能が低下していることが多い.


問題21

糖尿病療養指導士について,正しい記載はどれか.1つ選べ.

A:糖尿病療養指導士は国家資格である.
B:糖尿病療養指導士の認定機構の母体は日本糖尿病学会単独である.
C:糖尿病療養指導士は医師の指導の下で療養指導を行う.
D:現在,糖尿病療養指導士は約5,000名である.
E:糖尿病療養指導士は一度取得すれば更新は不要である.


問題22

『糖尿病治療のエッセンス』について,正しいのはどれか.2つ選べ.

A:日本糖尿病学会にて編集した.
B:専門医向けの治療パスである.
C:かかりつけ医と専門医の連携を前提にしている.
D:1型糖尿病についても,かかりつけ医での治療は可能である.
E:インスリン治療については,専門医が行うとされ,記載されていない.


問題23

GLP-1に関する記述として,正しいものはどれか.2つ選べ.

A:消化管運動を促進する.
B:インスリンの生合成と分泌を促進させる.
C:膵臓のβ細胞の増殖作用は認めない.
D:GLP-1はDPP-IIにより分解され,血中の半減期は1分以内である.
E:グルカゴン分泌を抑制し,糖代謝を改善する.


(解答は本誌掲載)