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今月の主題

「理解のための28題」


問題01

H受容体拮抗薬について,正しいものはどれか.2つ選べ.

A:ヒスタミン刺激による酸分泌を非競合的に阻害する.
B:経口投与と経静脈投与のバイオアベイラビリティは同程度である.
C:催奇性があり妊婦には禁忌である.
D:腎機能低下例では減量すべきである.
E:急速な静脈内注射により,徐脈,血圧低下をきたすことがある.


問題02

胃酸分泌抑制が最も強い薬剤はどれか.

A:抗コリン薬
B:プロスタグランジン製剤
C:H受容体拮抗薬
D:ムスカリン受容体拮抗薬
E:プロトンポンプ阻害薬


問題03

誤っているものはどれか,1つ選べ.

A:Auerbach神経叢にはドパミンやセロトニンの受容体が存在しており,アセチルコリンによる平滑筋の収縮を調節している.
B:心理的ストレスで起こる消化管の機能異常には視床下部ペプチドが関与している.
C:ドパミンD受容体拮抗薬は,消化管運動を抑制して制吐作用を示す.
D:5-HT受容体拮抗薬が抗癌剤使用時の制吐に用いられている.
E:機能性胃腸症(FD)や過敏性腸症候群(IBS)の治療には,消化管運動改善薬が用いられることが多いが,器質的疾患との鑑別診断が重要である.


問題04

次の記載のうち,正しいものはどれか.2つ選べ.

A:血液透析患者の大腸内視鏡検査の前処置薬としてマグコロール®は禁忌である.
B:大腸閉塞をきたしている大腸癌患者にニフレック®は安全に投与できる.
C:プルゼニド®やセンナは,尿の変色をきたす.
D:モニラック®は小腸で吸収される合成二糖類なので,血糖値を上昇させる.
E:腎結石を合併する便秘型の過敏性腸症候群患者には,コロネル®の投与が有効である.


問題05

発熱を伴う急性下痢症の治療について,誤っているのはどれか.2つ選べ.

A:補液を行い,様子をみる.
B:乳酸菌製剤の投与を行う.
C:塩酸ロペラミドにて下痢を止める.
D:塩酸モルヒネにて下痢を止める.
E:広域抗生物質の投与を行う.


問題06

抗肝炎ウイルス薬に関する記述で正しいのはどれか.1つ選べ.

A:B型肝炎はHBs抗原陰性化が治療のゴールである.
B:B型肝炎に対するpeg-FNα2aは,週1回の皮下注射を少なくとも半年間継続することが推奨されている.
C:B型・C型肝炎ウイルス併存者では,肝炎の進展は緩徐である場合が多い.
D:C型肝炎に対する抗ウイルス療法は,70歳以上では禁忌となる.
E:抗C型肝炎ウイルス療法を始めるにあたって,肝生検は必須ではない.


問題07

肝疾患治療薬に関して正しいものはどれか.1つ選べ.

A:ウルソデオキシコール酸は肝炎ウイルスの量を減少させる.
B:強力ネオミノファーゲンシーは高K血症に注意する.
C:小柴胡湯はインターフェロン治療時に併用してはならない.
D:プレドニゾロンはウイルス肝炎の増悪期の標準的治療薬である.
E:塩酸ピオグリタゾンはアルコール性肝疾患の治療薬として期待されている.


問題08

消化酵素薬で治療中の慢性膵炎の患者に体重減少をみた場合,誤っているのはどれか.1つ選べ.

A:膵臓癌の合併
B:膵性糖尿病の悪化
C:摂取脂肪量の増加
D:消化酵素薬の中断
E:慢性膵炎の進行


問題09

大腸内視鏡前処置について,正しいのはどれか.1つ選べ.

A:PEG-EL液は,一気に服用できるようなら短時間で服用させたほうが洗浄効果が上がる.
B:クエン酸マグネシウムは,等張に調整されたものでは腎不全があっても安全に投与できる.
C:クエン酸マグネシウムを高張液で服用させるときには,効果を上げるため,また脱水を防ぐためにもできるだけ多量の水を飲む必要がある.
D:PEG-EL液や等張クエン酸マグネシウム液の洗浄効果を上げるために併用するピコスルファートナトリウムには腹痛を起こすことがあるが,特に心配はない.
E:高度の便秘を有する被検者でPEG-EL液を1l服用後,便意がなく0.5l追加投与したが,それでも便意がないとの看護師からの報告を受けたので,さらに0.5l追加投与の指示を出した.


問題10

胃食道逆流症(GERD)の薬物治療に関して,正しいのはどれか.1つ選べ.

A:本邦における逆流性食道炎は軽症例が多く,多くはヒスタミンH受容体拮抗薬(HRA)で十分対処できる.
B:GERDの初期治療のgold standardはプロトンポンプ阻害薬(PPI)療法である.
C:GERDの維持療法に関しても明らかにPPIのほうがHRAよりも優れた治療効果を示しているが,費用対効果の面から問題がある.
D:PPIはHRAに比べて高額であるので,内視鏡所見,臨床症状に応じて薬剤を選択していく必要がある.
E:GERDの初期治療には,従来のステップアップ療法が優れている.


問題11

消化性潰瘍の治療に関する記述で正しいのはどれか.1つ選べ.

A:Helicobacter pyloriはグラム陽性の球菌である.
B:H. pyloriの除菌成功後には,ほとんどの症例で維持療法が不要である.
C:H. pylori除菌に失敗するとアモキシシリン耐性菌が誘導される.
D:二次除菌にはプロトンポンプ阻害薬(PPI),クラリスロマイシン,メトロニダゾールの組み合わせが有効である.
E:H. pyloriの除菌療法の適応がない場合には,消化性潰瘍の初期治療後に続いてH受容体拮抗薬(HRA)と防御因子増強薬の併用が勧められている.


問題12

非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)による消化管粘膜傷害について,誤っているものはどれか.2つ選べ.

A:発生機序として,内因性プロスタグランジンの産生抑制による粘膜抵抗性減弱が挙げられる.
B:NSAID潰瘍の発症の有無は,上腹部症状を指標にして注意する.
C:NSAID潰瘍発症のリスクとして,高齢,過去の潰瘍の既往,高用量の使用,糖質ステロイドの併用などが挙げられる.
D:NSAID潰瘍の治療において,NSAIDの投与中止が不可能なときは,通常の潰瘍治療と同様なヒスタミンH受容体拮抗薬投与が第一選択である.
E:NSAID潰瘍の予防にはプロスタグランジン製剤,プロトンポンプ阻害薬,高用量のヒスタミンH受容体拮抗薬の使用が有効であるが,わが国では保険適応となっていない.


問題13

H. pylori陽性胃潰瘍出血の治療に有効なものはどれか.2つ選べ.

A:プロトンポンプ阻害薬(PPI)
B:H受容体拮抗薬
C:硝酸薬
D:β遮断薬
E:H. pyloriの除菌治療


問題14

過敏性腸症候群(IBS)患者の治療の考え方として,正しいものを1つ選べ.

A:ストレスで増悪することが多いので,症状は気のせいであると説明し患者をリラックスさせる.
B:症状が典型的でalarm signsがなくても,徹底的に検査をして悪性疾患ではないことを示し患者をまず安心させる.
C:プラセボ効果のために,本来の薬物治療効果がわからなくなってしまうので,あまり患者に病態のことを詳しく説明しない.
D:軽症-中等症患者で薬物療法を必要とする場合,まず身体症状をコントロールすることを目標に薬物を選択する.
E:副作用の点から,向精神薬は精神疾患(うつ病など)に伴うIBS様症状のコントロールに限定して用いる.


問題15

潰瘍性大腸炎の緩解維持のために用いられる薬剤はどれか.2つ選べ.

A:プレドニゾロン
B:メサラジン
C:ベタメタゾン
D:アザチオプリン
E:シプロフロキサシン


問題16

抗菌薬が有効な感染性腸炎の原因を1つ選べ.

A:ロタウイルス
B:アメーバ赤痢
C:腸管出血性大腸菌
D:腸炎ビブリオ
E:黄色ブドウ球菌


問題17

B型肝炎に関する記述のうち,正しいものはどれか.1つ選べ

A:B型急性肝炎の感染経路の多くは母児感染である.
B:B型慢性肝炎の治療目標はHBs抗原陽性からHBs抗体陽性へのセロコンバージョンである.
C:B型慢性肝炎患者に対する核酸アナログ製剤は35歳未満には投与しない.
D:B型慢性肝炎患者に対するペグインターフェロン治療は有力な治療法の一つである.
E:未治療B型肝硬変患者に対する抗ウイルス療法は,ラミブジンが第一選択である.


問題18

C型慢性肝炎に対する抗ウイルス療法に関する記述で,誤っているのはどれか.1つ選べ.

A:HCV遺伝子型が治療法を決定する主な因子である.
B:PEG-IFN・リバビリン(RBV)併用療法がC型慢性肝炎に対する現在最も強力な抗ウイルス療法である.
C:HCV RNAが12週以内に陰性化する症例では高い著効率が得られる.
D:RBVの重大な副作用に溶血性貧血がある.
E:RBVの副作用は高齢者に強く出現する傾向がある.


問題19

自己免疫性肝炎の治療について,誤りはどれか.1つ選べ.

A:ステロイド治療が第一選択である.
B:ステロイドにアザチオプリンを併用する場合がある.
C:ステロイドの減量はトランスアミナーゼ値の改善を指標とする.
D:急性発症の肝不全を伴う重症例では,ステロイドパルス療法を行う場合がある.
E:HCV感染を伴う例では,インターフェロン治療を第一選択とする.


問題20

門脈圧亢進症について,誤っているものはどれか.1つ選べ.

A:食道静脈瘤出血の治療は,βブロッカー治療より内視鏡治療が優先される.
B:食道静脈瘤内視鏡的結紮術は静脈瘤が再発しやすいため,6カ月以内の定期的内視鏡検査が必要である.
C:急に出現する腹水は,肝癌の門脈浸潤が原因であることが多い.
D:肝性脳症を有する腹水の治療は,ループ利尿薬を多めに使用する必要がある.
E:分岐鎖アミノ酸製剤は,肝性脳症の治療に有用であるだけでなく,アルブミン合成能の低下予防になる.


問題21

非代償性肝硬変症における肝性脳症の治療として適切なのはどれか.2つ選べ.

A:エンシュアリキッド®の経管投与
B:ジアゼパムの経口投与
C:プロテアミン®の点滴静注
D:ラクツロース製剤の経管投与
E:硫酸カナマイシンの経口投与


問題22

急性胆嚢炎・胆管炎について,正しいものはどれか.2つ選べ.

A:急性期の胆嚢摘出術は合併症を起こす可能性が高いため,推奨されない.
B:重症の胆管炎で,DICを合併している症例では,内視鏡によるドレナージ術は禁忌であり,抗菌薬を含む薬物療法を選択すべきである.
C:胆石発作において,NSAIDsの投与は胆嚢炎への進展の阻止を期待できる.
D:胆道系の術後の患者では,嫌気性菌の関与はきわめて稀であるので,抗菌薬でカバーする必要はない.
E:胆管の閉塞の有無は,抗菌薬の胆汁への移行性には影響を与えない.


問題23

急性膵炎の治療について,正しいものはどれか.1つ選べ.

A:急性膵炎においては,いかなる場合でもERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影)は禁忌である.
B:軽症の急性膵炎では通常の維持輸液量にとどめるべきである.
C:急性膵炎患者の除痛に,Oddi括約筋収縮作用のある非麻薬性鎮痛薬は禁忌である.
D:イミペネム系抗菌薬は,重症膵炎の感染症合併の予防に有効である.
E:急性膵炎では膵の安静を保つため,全例を中心静脈栄養(TPN)にするべきである.


問題24

炎症性腸疾患の治療に関する記述で誤っているものはどれか.1つ選べ.

A:現在Crohn病治療薬として承認されている抗体製剤は,抗TNF-α薬のみである.
B:抗αインテグリン抗体はCrohn病治療薬として期待されていたが,重篤な副作用のため多発性硬化症に対する厳重管理下での単独療法しか行われていない.
C:抗αβインテグリン抗体は抗αインテグリン抗体とは異なり,リンパ球の腸管へのリクルートだけを抑えるため,安全性がより高いと考えられている.
D:インフリキシマブはCrohn病のみならず,潰瘍性大腸炎の治療薬として,欧米で認可され,日本で治験中である.
E:抗体医薬の開発は進んだものの,Crohn病の症状を改善するのみで,内視鏡的治癒までは望めない.


問題25

C型肝炎ウイルスに対する新たな治療薬開発に関する記載で,正しいものはどれか.1つ選べ.

A:コレステロール合成阻害薬はC型肝炎ウイルス(HCV)増殖と関連しない.
B:サイクロスポリンは免疫抑制作用のため,HCV増殖を高める.
C:貧血の副作用がないリバビリン類似薬はない.
D:アンチセンスはヒトのC型慢性肝炎において有害事象はない.
E:プロテアーゼ阻害薬は,2週間の短期内服でHCVが5log以上低下する.


問題26

機能性ディスペプシアに関する記述で誤っているのはどれか.2つ選べ.

A:適応性弛緩障害は早期飽満感を発生させる.
B:胃排出は常に遅延している.
C:知覚異常は存在しない.
D:脳・腸相関が重要な病態である.
E:感染後に発症することもある.


問題27

腸内細菌叢を標的とした治療法について,正しいのはどれか.1つ選べ.

A:腸内細菌のほぼすべてが培養可能である.
B:プレバイオティクスは生体にとって有用な生菌剤である.
C:プロバイオティクスは有益な腸内細菌の成長や活動度を刺激する因子である.
D:健常人と過敏性腸症候群(IBS)患者の腸内細菌叢には差がない.
E:潰瘍性大腸炎(UC)大腸全摘後の回腸嚢炎にメトロニダゾールが有効である.


問題28

H. pylori除菌療法で誤っているのはどれか.1つ選べ.

A:除菌療法の失敗原因は,抗菌薬への耐性の存在のみである.
B:プロトンポンプ阻害薬(PPI)の代謝酵素であるCYP2C19の遺伝子多型も除菌の成否に影響を与える.
C:二次除菌における保険適応のレジメン(PPI,クラリスロマイシン,アモキシシリン)では,その再除菌率は20~30%程度と少ない.
D:保険適応外治療であるが,メトロニダゾールやニューキノロン系抗菌薬を含めた二次除菌治療が有効である.
E:除菌レジメンの設定にPPIや抗菌薬などの薬物投与方法に注意を払う必要がある.


(解答は本誌掲載)