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今月の主題

「理解のための25題」


問題01

2005G『AHA心肺蘇生と救急心血管治療のためのガイドライン2005』に沿ったACLSの行為で,以下のうち正しいのはどれか,1つ選べ。

A:成人の心肺停止患者に15対2で胸骨圧迫と人工呼吸を行った。
B:心室細動の患者に,200-300-360Jで3連続除細動を行った。
C:除細動に反応しない心室細動にはまずリドカイン投与が適応となる。
D:心静止の患者に360Jで1回除細動を行った。
E:徐拍性PEA(無脈性電気活動)に対してアトロピン1mg静注した。


問題02

内因性ショックに関して誤っているものはどれか。1つ選べ。

A:心筋梗塞後には心原性ショックを併発しやすい。
B:肺塞栓症でもショックを起こすことがある。
C:血液分布異常性ショックで徐脈となる例はない。
D:アナフィラキシーショックの回復例でも数時間の経過観察が必要である。
E:総頸動脈でも脈拍が触れない場合には収縮期圧が60mmHg以下と推定する。


問題03

以下の症例で心不全を最も疑うものを1つ選べ。

A:高血圧の既往がある47歳女性,5時間前から口の痒みを覚え,3時間前から口や舌のむくみ,呼吸が苦しくなり救急受診。診察では中等度の呼吸困難があり,口や舌の著明な浮腫があり,頸部でstridorを聞く。2週間前からACE阻害薬が開始されている。
B:80歳,男性が,整形単科病院から紹介搬送。「1週間前に転倒して左大腿骨頸部骨折し術後4日。本日2時リハビリを開始した直後,突然呼吸困難とチアノーゼを発症し,血圧90,脈拍120,心電図前胸部誘導でST変化を認めた。」と紹介状にある。
 到着時,著明な呼吸困難がある。胸部聴診は清。術後創部は感染徴候なし。
C:高血圧と糖尿病の既往のある55歳,男性が,3週間前から徐々に歩行時に息が苦しくなるのを主訴に来院。夜間にも息苦しくて目覚める。足のむくみにも2週間前に気づいた。
D:46歳,女性が,5日前より咳,寒気を伴う発熱(39℃),膿性痰,息切れ,右の胸部の深呼吸時の痛みを訴え来院。とくに既往はない。診察では熱のほか,右肺底部でCrackleと気管支音。打診では同部位で濁音。
E:I型糖尿病の22歳,男性。3日前から発熱と下痢があり,嘔気も激しくなり食事が食べられなくなり,インスリンを自己中止。本日より頻回の嘔吐を認め,午後になると意識が朦朧として呼吸が荒いため,友人が救急車を要請。診察では著明な脱水と意識障害,呼吸数が35で大きい呼吸をしている。


問題04

救急外来における胸痛患者への対応として,正しいものはどれか。2つ選べ。

A:右室梗塞患者の血圧低下では,十分な補液が重要である。
B:緊張性気胸を疑う患者では胸部X線撮影を施行し,どちらが患側かを正しく評価した後に脱気を行う。
C:Stanford A型の大動脈解離では手術適応があるため,心臓血管外科医が到着するまで疼痛・血圧コントロールは行わないほうがよい。
D:食道破裂は自然治癒することが多く,経過観察のみで予後は良好である。
E:胸部X線写真に異常のない突然の低酸素血症患者では,まず肺塞栓を考慮する。


問題05

失神に関する記述で正しいものはどれか。2つ選べ。

A:脳血管障害による失神が最も多い。
B:予後が最も悪いのは心原性失神である。
C:血管迷走神経性失神は通常,入院が必要である。
D:病歴・身体所見・心電図で,失神の約半数は診断可能である。
E:失神の診断に,脳CT検査は必須である。


問題06

下血をきたした患者の診察にあたり,特に上部消化管出血を疑う所見はどれか。正しいものを2つ選べ。

(1)腹痛に引き続き,下痢と淡紅色の下血をきたした。
(2)直腸診にて黒色の便を認めた。
(3)器質的腎疾患の既往がないのにBUN/Cr比が著しく上昇していた。
(4)扁桃炎の治療のためペニシリン系抗菌薬を内服していた。
(5)直腸診にて硬い結節を触知した。

A:(1),(2)
B:(1),(5)
C:(2),(3)
D:(3),(4)
E:(4),(5)


問題07

プライマリケアの頭痛診断に関する記述で正しいのはどれか。1つ選べ。

A:くも膜下出血の誤診率は5%程度である。
B:片頭痛や髄膜炎,急性胃腸炎と診断されるくも膜下出血患者がいる。
C:Kernig徴候がなければ,髄膜炎は否定できる。
D:細菌性髄膜炎の治療では,必ず髄液検査が終わってから抗菌薬投与を開始する。
E:本邦の片頭痛患者は,前兆を伴う片頭痛が多い。


問題08

意識障害への初期対応について,誤っているものはどれか。1つ選べ。

A:意識障害の原因疾患としては,神経系疾患が多いので,まずは頭部CT検査を施行する。
B:まずは,バイタルサインをチェックする。
C:低血糖でも死に陥ることがあるので,血糖の補正は重要である。
D:患者本人からの病歴聴取は困難なことが多いが,家族,友人,救急隊からの病歴聴取は診断に役立つことが多い。
E:ショックは意識障害の原因となり得る。


問題09

良性発作性頭位めまい症に関する記述で正しいものはどれか。2つ選べ。

A:半規管クプラに耳石が付着したクプラ結石症がこの病態である。
B:最も高頻度に認められるのは後半規管型である。
C:理学療法として最もよく行われるのはLempert法である。
D:理学療法中は眼振を観察しながら行うことが重要である。
E:頸椎症を有する高齢者では,頸部痛が出現 しなければDix-Hallpike試験を試みてよい。


問題10

痙攣重積の診断・治療について,誤っているものはどれか。2つ選べ。

A:挿管が必要な場合,筋弛緩薬を投与してはならない。
B:痙攣重積が継続するとアシドーシスをきたす。
C:抗痙攣薬の投与は確定診断の後に行う。
D:フェニトインの注意すべき副作用は血圧低下と不整脈である。
E:高血糖はてんかんの原因となる。


問題11

65歳,男性。高血圧の既往がある。月曜日の朝,会社に行く時間になっても起きてこないため,家族が起こすと,右手足が動きにくく,呂律が回らないのに気がついた。救急外来で診察すると,血圧180/100mmHgで,不整脈を認めた。神経学的検査でJCSⅠ-1,右不全片麻痺,失語症があった。直ちにCTを行ったところ,図1を得た。次のうちで正しいものはどれか。

A:血圧が高いので,外来で静脈路を確保し,降圧薬を使用する。
B:CTで明らかの高吸収域がないことより,脳梗塞である。
C:本症例の発作の病型は,CTで左基底核に1cm以下の低吸収域があることから,ラクナ梗塞である。
D:脳梗塞急性期なので,入院治療を行う。
E:治療は,安静,血圧管理などに加え,アルテプラーゼ(rt-PA)の投与を早期に開始する。


問題12

以下のうち,正しいものはどれか。2つ選べ。

A:脊髄,延髄,橋部病変は知覚解離が起こりやすい。
B:視床病変は振動位置覚などの深部感覚が障害されにくい。
C:視床より上位の病変は振動覚が障害される。
D:しびれ患者の2割が手根管症候群,2割が肘部管症候群である。
E:腰椎椎間板ヘルニアの好発部はL3/4とL4/5である。


問題13

急性虫垂炎で感度が一番低いのはどれか。

A:右下腹部圧痛
B:臍周囲痛から始まり右下腹部痛に移動
C:発熱
D:psoas sign
E:CT


問題14

腎機能異常(BUN-クレアチニン比:BUN/Cre)に対する記載のうち,誤っているものはどれか。2つ選べ。

A:消化管出血の際にはBUNが上昇するためBUN/Creは上昇する。
B:ステロイド投与患者では,タンパク異化作用によりBUN/Creは低下する。
C:妊婦では循環血液量が増加するがBUN/Creは一定に保たれる。
D:急性肝不全の患者では尿素サイクルが回らなくなるためBUN/Creが低下する。
E:心不全の患者では細胞外液が増加しているためBUN/Creが低下する。


問題15

以下の記述のうちで正しいものはどれか。

A:ASTは肝特異的に局在し,ALTは肝以外に他臓器にも局在する。
B:胆汁うっ滞とは,胆管の閉塞機転により,胆汁の十二指腸への排泄が障害された病態である。
C:アルコール性肝障害において,γ-GTPが上昇する機序は肝内胆汁うっ滞による。
D:アンモニアは肝の尿素サイクルでの処理の他,骨格筋において,グルタミンがグルタミン酸へと変換される過程で,分岐鎖アミノ酸とともに処理される。
E:非アルコール性脂肪肝炎(nonalcoholic steatohepatitis:NASH)の発症機序として,adipocytokineの異常(低adiponectin,高TNF-α,高leptin血症など)やインスリン抵抗性の関与が指摘されている。


問題16

高K血症について,正しい記載はどれか。1つ選べ。

A:高K 血症の心電図変化は,四肢誘導特にII誘導で鋭敏かつ顕著であり,モニター心電図の変化で高K血症の緊急度を早期に知ることができる。
B:高K血症を認めた場合,迅速に血清K値を低下させる必要があるため,最初に,ケイキサレートの投与を行うべきである。
C:高K血症の心電図変化は,平坦T波・QT延長から始まる。
D:高K血症の際に投与するグルコン酸Caには,血清K値を低下させる作用はない。
E:高K血症の際に行うグルコース・インスリン療法には,体内Kの排泄促進作用がある。


問題17

以下の動脈血ガス所見の評価で最も適切な酸塩基平衡障害はどれか。下記の選択肢から1つ選べ。
pH7.108,PaCO2 19.0mmHg,HCO3- 6.0mmol/l,Na+ 145 mEq/l,K+ 5.6 mEq/l,Cl- 89 mEq/l

A:単純なAG開大性代謝性アシドーシス
B:AG開大性代謝性アシドーシスと呼吸性アシドーシスの合併
C:AG開大性代謝性アシドーシスと呼吸性アルカローシスの合併
D:AG開大性代謝性アシドーシスと代謝性アルカローシスの合併
E:AG開大性代謝性アシドーシスとAG非開大性代謝性アシドーシスの合併


問題18

46歳,女性。18歳の就職時健診にてWPW症候群と診断され,その後も発作性上室性頻拍による救急受診を繰り返していた。ここ数年は発作なく経過していたが,来院前日夜より“いつもとは違う強い動悸感”を自覚,安静にするも改善せず,前胸部圧迫感が強くなったため救急受診。来院時心電図を図1に示す。意識清明,血圧112/52mmHg。診断・対処法につき以下のうち,正しいものを2つ選べ。

A:心室細動(VF)と診断し電気的除細動を行う。
B:変行伝導を伴う発作性上室性頻拍でありverapamilを静注する。
C:顕性WPW症候群に合併した発作性心房細動であり,同期下電気的カルディオバージョンを検討する。
D:カテーテル・アブレーションの絶対適応である。
E:バイタルサインは落ち着いているため,β遮断薬内服にて経過観察とする。


問題19

以下のうち,誤っているものを1つ選べ。

A:左脚ブロックのSgarbossa's criteriaは有用であり感度が高いが,特異度は低く除外診断に役立つ。
B:高カリウム血症のテントT波は,心筋梗塞の超急性期T波に比べてT波の先端が尖がっているのが特徴的である。
C:心外膜炎の心電図では,下壁誘導のPRの基線より下降しているのが特異的である。
D:良性早期再分極は前壁誘導で認められることが多く,四肢誘導単独で認められることはない。
E:tomb stone波とは心筋梗塞の急性期の心電図である。


問題20

敗血症を呈する患者の治療上の注意点として,誤っているものはどれか,1つ選べ。

A:細菌性髄膜炎にセフトリアキソンとバンコマイシン投与を行う。
B:急性呼吸不全を伴う重症市中肺炎にセフトリアキソンとアジスロマイシン投与を行う。
C:腹腔内膿瘍からの敗血症に外科的にドレナージを行う。
D:敗血症性ショックのため,まずドパミン投与を開始した。
E:敗血症性ショックに対し,輸液,昇圧薬,抗菌薬に加え,低用量ステロイド(ハイドロコルチゾン100mg×3)投与を併用した。


問題21

以下のうち,ステロイドの使用が「生命予後」を改善するというエビデンスのあるものはどれか。1つ選べ。

A:市中肺炎
B:不明熱
C:細菌性髄膜炎
D:結核性胸膜炎
E:細菌性心内膜炎


問題22

緊急時の輸血に関して,誤っているものはどれか。1つ選べ。

A:血液型を判定する時間的余裕がない場合には,O型の全血を使用できる。
B:大量輸血時には低体温に注意する。
C:緊急輸血であっても,血液製剤の放射線照射は省略できない。
D:急速な輸血は高カリウム血症の危険性がある。
E:異型適合輸血の副作用である遅延性溶血反応は自然軽快することが多い。


問題23

以下の文章で正しいものはどれか。1つ選べ。

A:人工呼吸器の働きは換気運動の補助であり,酸素化は改善しない。
B:筋弛緩薬投与後はまず圧支持換気(PSV) に設定する。
C:強制換気の一回換気量の設定は12~15ml/kgが妥当である。
D:Sellick の手技とは胃内容誤嚥防止の手法である。
E:呼吸不全を伴う急性喉頭蓋炎では非脱分極性の筋弛緩薬の適応である。


問題24

緊急時の一時ペーシングに関する記述で正しいのはどれか。2つ選べ。

A:体外式経皮ペーシングは患者の苦痛も少なくその適応は広い。
B:ACLS2005のガイドラインではasystole(心静止)は体外式経皮ペーシングのよい適応である。
C:完全房室ブロックは一時ペーシングの絶対適応である。
D:高度の出血傾向を認める場合,経静脈式一時ペーシングは原則禁忌である。
E:二次性QT延長症候群ではマグネシウムの投与や原因の是正がまず優先される。


問題25

急性血液浄化療法に関する記述で正しいものはどれか。1つ選べ。

A:Guillan-Barre´症候群のHughes分類grade IVの患者に対しては,免疫吸着療法を連日行う。
B:病原性大腸菌による下痢を伴う溶血性尿毒症症候群(HUS)には血漿交換が行われる。
C:バルビツレート大量服薬によるショック,低体温には持続血液透析濾過療法(CHDF)が適応となる。
D:敗血症性ショックの患者でノルアドレナリンを投与しても病状が進行しているときには,血漿交換が行われる。
E:血清尿素窒素(BUN)67mg/dl,血清クレアチニン値5.4 mg/dl,フロセミド40mg投与によっても尿量200ml/12hr以下の患者は,緊急でCHDFの適応となる。


(解答は本誌掲載)