HOME雑 誌medicina誌面サンプル 44巻13号(2007年12月号) > 連載●成功率が上がる禁煙指導
●成功率が上がる禁煙指導

最終回テーマ

保険診療での禁煙治療のテクニック4
実践編

安田雄司(医療法人啓生会やすだ医院/NPO法人京都禁煙推進研究会)


 私が行っている保険診療での禁煙治療について5回にわたって報告してきたが,今回が最終である.今までの内容を読まれていろいろな問題点や疑問点が浮かんでこられたと思う.このように禁煙治療に労力を費やすにはあまりにもハードルが多いように感じられた方も多いと思う.その通りである.当の私ですら感じているのである.この保険診療システム自体まだまだ問題点が多いが,いままでのように一部の医師だけが禁煙指導を進めていては本来の目的とは大きくかけ離れた制度で終わってしまうだろう.いやもしかすれば廃止にもなりかねない.本稿では保険診療に関して現在考えられる問題点を掲げるので,どう対応し,さらにそこに各自の個性を生かした禁煙指導をいかに組み入れていくか各自で考えていただきたい.そして禁煙治療をする喜びというものを感じとっていただければ幸いである.禁煙指導に対する当初の意気込みが少し失速気味になりつつある先生方に,成功率アップに向けて再度ギアをチェンジアップしていただきたい.

■保険診療での問題点

 もう一度ニコチン依存症に対する保険診療の内容を振り返ってみて,私が日常で問題と感じる点を掲げてみる.

 (1) 施設基準が厳しい.
 (2) 対象患者の基準が厳しい.
 (3) 12週間の期間が定められ,継続が認められない.
 (4) 医科診療報酬点数は妥当か?

 この点に対して私の考えならびに他の禁煙指導者からの考えをまとめてみる.各自でも考えていただきたい.

■1. 「施設基準が厳しい」について

 施設基準はニコチン依存症を算定するためには当然必要であるが,多くの医療機関が参加できるものでなくてはならない.「敷地内禁煙」や「院内掲示」,「禁煙治療を有する医師」に関しては問題がない.

 「専任の看護師または准看護師を1名以上配置していること」が最初に問題となる.小規模な診療所では医師一人で診療を行っているところも決して少なくない.看護師の役割は,既往歴,喫煙歴や体調などの患者からの情報聴取,TDSテストや呼気CO濃度測定の実施,「禁煙治療のための手順書」などの説明,などである.しかし,これらは医師一人でもできることである.看護師の担う大きい役割としては,医師からの多くの助言に加え,看護師からも言葉をかけてもらうことが,患者の不安を解消するということである.

(つづきは本誌をご覧ください)


安田雄司
1981年滋賀医科大学医学部卒業.滋賀医科大学医学部附属病院研修医,同第2外科助手,ドイツエッセン・ルアーランドクリニック助手,京都桂病院呼吸器センター部長を経て,1998年1月京都市南区やすだ医院院長.現,医療法人啓生会理事長.NPO法人京都禁煙推進研究会理事.専門領域は外科,特に呼吸器外科・気管支鏡検査や細胞診を中心とした呼吸器診断.